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夏を追う。

 いよいよ順番がまわってきた。部署の中で誰よりも遅くとった夏休み。あえて安くなる時期までずらしにずらした就業規則ギリギリ範囲内の遅咲きの夏休み。

「夏、終わってね?」
「ピント、ずれすぎ。じき決算だってのに、何考えてんのよ」
「ご先祖様、とっくにあの世に帰っちまっただよ」
「私もハワイに連れてって」←あの、ハワイじゃなく東南アジアの南の島なんですけど。

 渦を巻く放言と暴言と諦観と羨望の眼差しを全身に受け、それでも当然の権利だからと旅支度に余念なく。

「お先に」とは言えない。だから「遅きに〜」。

 世の中広い。世界のどこかで私を待っている夏がある。←東南アジアの南の島なんだけどね。

『いつつの?』
「そうね、だいたいね」
 みな騒ぎの食いつき⁉︎
 ん? 胸騒ぎの腰つき??

 1週間後にはビーチでトロピカってるかな。

「では夏に行ってきまぁす!」

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