リトル・ドラマー・ボーイの清貧。
この時期になるとあるクリスマス・ソングが耳の奥で繰り返される。
『リトル・ドラマー・ボーイ』
貧乏がゆえに王様にプレゼントを贈れない少年は、代わりに得意のドラムを披露してみせる。
ラパパン パン。
軽快な疑似音に、色彩こぼれるリズムに、虹のようにめくるめく鮮やかなクリスマスを描いてみせる。
曲が終わると。ラジオでもレコードでも、静寂が波紋を広げながら音を飲み込んでいく。ひとときの夢見心地は波に連れ去れ、現実に引き戻される。
少年は貧乏で清らかだった。
そうした思いだけが残る。
清貧。
酸いも、甘いも、苦いも、辛いも皺に縫い込みながら毎日を送っていると、清貧が眩しく見える。
それでも今年は今までと事情が違って清貧なクリスマス。ある意味、自分もその渦中にある。相違点は輝けていないことだ。
ところで、なぜ『リトル・ドラマー・ボーイ』がクリスマス・ソングなのだろう。
それは、貧しい少年がドラムの音を捧げる王がキリストだったから。曲は『マタイによる福音書』のキリストの来訪を題材にしている。