”斜め上過ぎる”返答シリーズ①

いくつもの刺激的な論点を孕む廣瀬純の『シネマの大義』の巻末に、ゴダールの3D映画『さらば、愛の言葉よ』をめぐる座談会が収録されている。その中での結城秀勇氏の発言を一部引こう。

「ル・モンド」のインタヴューの中で、ゴダールがロベール・ブレッソンについて言及している箇所があります。ブレッソンが自分のことを画家だと話していたということが確認されたあと、インタヴュアーが「あなたは形態を最重要とするブレッソンに賛成ですか」と聞くと、ゴダールは変な答えをするんです。「私なら行きと帰りがあると言うだろう。私は潜水して、水面に浮上するというイメージが好きなんだ。水面から出発して、底まで行く、それから浮上する。そうした事柄だ」と。

これはまさしく「斜め上からの回答」だろう。一読しても二読してもハテナである。でもゴダールを狂人でないと仮定すれば、彼の中には何らかの理路があって、彼はそれに則って喋っているが、凡庸な我々にはその道が見えていないだけなのだ。
「ル・モンド」紙を読める語学力がなければ、あるいは1冊5000円以上もする『ゴダール全評論・全発言』を紐解く膂力がなければ、こうした斜め上からの発言には接することはできないのか。いやそんなことはない。むしろ道端の雑草の中の四つ葉のクローバーのごとく、探せばそれはどこにでもある。

このシリーズでは、こうした「斜め上過ぎる返答」を紹介していきたいと思う。

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