真夏のプール
深いほうのプールはいつも空いている
泳ぎが苦手なわたしは
背面で浮かんで少しずつ足を
バタバタさせながら進む
泳ぐというより、
水に浮かんで空を眺めているだけ
ゴオーという水の中の音と
人の声やバタ足の音の波を
かすかに感じる気がする
太陽の熱に肌をさらし
少しとろんとした水の感覚に
身をゆだねる
母親の中にいた頃は、
ちょうどこんな感じだったのだろうか
真っ暗闇の、へそ呼吸
ぬるめのプールだったのだろうけど
10ヶ月近くもずっと
真夜中のようなプールに浮かんで
いたのだろうか
私はきっとその頃から
ラッコのように
背面で泳いでいたのだろう
懐かしくて心地いい
今年の夏もまた
あの光がきらめくプールで、
その揺らめきに身をまかせよう