おめでとさん
「目が良かったんだ」
父は繰り返しくりかえし、
母に会った日の話をする
わが家に来たことがある人なら
みんな知っているであろうエピソード
将来ボケることがあったなら
おそらくエンドレスリピートだ
二人はお見合いで出会い、
父が一方的に惚れた
まだ、YESも言っていないのに
新婚旅行のプランを持ってくる傍若無人ぶり
母にその気はなかったが、
人の良さで祖父母にすっかり気に入られ
ついには母も、その熱意にほだされ結婚した
彼らはもうすぐ結婚37周年になる
なんだかんだで
お互いを大切にして
誰よりも母を大切にする父
喧嘩はしても、今だに父を立てる母
つくづく
結婚はゴールなんかじゃなく
途中経過なんだなと思う
日々を重ねていくもの
思いやっていかねば育たぬもの
その関係の構築に
終わりはないのかもしれない
少なくともサクラダファミリアの
建設よりは短い時間の付き合いだけれど
ふと目に入った本に触れながら、
短い命の中の二人の歩みを思った
おめでとさん。