ウナギのつかみ取り
青いビニールシートのプールに
放流されたウナギ達が
足元をヌルヌルと通り過ぎていく
口だろうか?
ふくらはぎにぶつかると
硬くて少し痛かった
怖い
まわりの男の子達は
一匹、また一匹とウナギを捕まえていく
一匹も獲れないのは嫌だ
捕まえる姿をみながら
胴でなく、頭をとりにいかないと
いけないのだと分かった
プールの角をくるりと曲がる瞬間
ウナギの頭を左手で囲い、
右手で首のあたりを掴む
獲れた
ヌルヌルと手を放しそうになるのを
必死に袋の中へ投げ込んだ
捕まえたウナギを祖父に渡すと
木のまな板の上に
釘か何かで頭側を打ちつけた
金槌の音がカンカンと響く
ウナギを捌かれるのを見るのが怖くて
目をひらけない
祖父の背中だけが
鮮明に焼きついている
最後に残された心臓は
長い間、動き続けていた
食べたときの味は思い出せない
食べてくれた人の笑顔だけが
ウナギの記憶とともにある