魔法少女の系譜、その92~『ゴワッパー5 ゴーダム』~
今回も、前回に続き、『ゴワッパー5 ゴーダム』を取り上げます。
今回は、八つの視点で、『ゴワッパー5 ゴーダム』を分析してみます。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
の、八つの視点ですね。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
ゴワッパー5―紅一点のヒロイン、岬洋子を含みます―は、全員、肉体的にも精神的にも、「普通」の範囲の人間です。魔力は持ちません。
彼らが超常的な力を発揮するのは、ロボットのゴーダムに乗るからです。ゴーダムが、広い意味での魔法道具になっています。
ゴワッパー5は、魔法道具型の魔法少年少女です。魔法道具であるロボットは、人間が作りました。
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
魔法道具型の魔法少女/少年は、魔法道具を手離してしまえば、普通の人間です。
最終回で、敵である地底魔人を殲滅したので、おそらく、ゴワッパー5は、その後、ゴーダムには乗らなかったでしょう。普通の人間に戻って、普通に成人したと考えられます。
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
岬洋子をはじめ、ゴワッパー5は、変身はしません。代わりに、ロボットに乗ります。
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
ゴワッパー5は、ゴーダム以外にも、いくつもの「魔法道具」を持ちます。むろん、名目は、「魔法」ではなくて、「科学」の道具です。とはいえ、一九七〇年代どころか、二〇一〇年代の現在でも実現していない、超科学のメカばかりです。
ゴワッパー5は、五人(プラス、メカ頭脳の大洗博士)で操縦するゴーダム以外に、個々で操縦する乗り物を持ちます。これらは、ゴワッパー・メカと呼ばれます。五人のメンバーそれぞれに、専用のメカがあります。
岬洋子はエイプレーン、津波豪【つなみ ごう】はゲソマシーン、亀山大吉はタートルタンク、小石川五右ヱ門【こいしかわ ごえもん】はヘリマリン、河口のり助はヤドカリジープです。
すべてのゴワッパー・メカが、水中で行動できます。ゲソマシーンとタートルタンクは、ドリルを装備していて、地中でも行動できます。ヘリマリンは、水中専用機です。空を飛べるのは、エイプレーンだけです。
ゴワッパー・メカを見ても、岬洋子が、男子たちに、まったく劣っていないことが、わかりますね(^^) 一九七〇年代には、画期的なことでした。
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
アザラシのオッチャンとピョン太が、マスコット的存在として登場します。人間の言葉を理解していますが、しゃべることはできません。
人間の言葉を理解できるアザラシなんて、超常的な「マスコット」であることは、確定ですね。けれども、そのわりに、オッチャンとピョン太は、活躍しません。ほぼ、コメディ要員に終始します。
このあたりは、一九七〇年代の限界を感じますね。二〇一〇年代ならば、こんな面白い「マスコット」は、間違いなく、話に深く絡ませるでしょう。
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
ゴワッパー5は、呪文は唱えません。「魔法」ではなくて、「科学」の力で戦いますから。
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
これについては、『ゴワッパー5 ゴーダム』では、独創的な取り組みをしています。
ゴワッパー5は、地底魔人が、地上の人間界を侵略していることを、周囲の大人に 訴えます。しかし、誰も信じてくれません。そこで、ゴワッパー5とゴーダム(=大洗博士)だけで、地底魔人に立ち向かいます。
主役たちが、自ら秘密を暴いているのに、周囲が信じないというパターンは、「魔法少女もの」としては、斬新ですね。
これだけでも独創的ですが、加えて、途中で、周囲の大人たちが、地底魔人の侵略に気づくという展開があります。こうなってから後は、ゴワッパー5は、各国の軍隊と協力して、戦いに挑むことになります。
当然ながら、最初の頃、周囲に信じられていないうちは、ゴワッパー5とゴーダム(=大洗博士)だけの視点で、話が進みます。唯一、彼らを信じてくれた志摩仙太郎の視点で、話が進むこともあります。
後半になると、ゴワッパー5とゴーダムの秘密は、もう、秘密ではありません。大っぴらに、周囲の大人たちを巻き込んで、話が進みます。
この視点の切りかえは、独創的ですよね。『ゴワッパー5 ゴーダム』は、この点でも、新しい取り組みをしていた作品です(^^)
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
魔法「少女」としては、登場するのは、岬洋子一人です。他に、四人の魔法「少年」たちが、登場します。合わせて五人で、ゴワッパー5です。
洋子と、他のメンバーとの間に、優劣はありません。むしろ、洋子がリーダーなので、立場的には、一番上に立つ人間です。
魔法「少女」としては一人でも、対等の立場の魔法「少年」たちが複数いて、チームで戦う、なんて、一九七〇年代では、考えられないほど、斬新なことでした。
全体的に見ると、『ゴワッパー5 ゴーダム』は、ロボットものアニメと魔法ものアニメとをつなぐ、失われた環【ミッシング・リング】的作品だと思います。ロボットものアニメとして見ても、魔法ものアニメとして見ても、それぞれ、新しく、独創的な要素を入れています。
残念ながら、本作品を継ぐ作品は、ずっと後になるまで、現われませんでした。放映当時は、視聴率が伸びなかったためでしょう。
二〇一〇年代の今、戦闘少女が花盛りなのを知って見ると、隔世の感があります。時代に先駆け過ぎた作品だったのでしょうね。
この時代の先端を行く精神は、忘れられてはなりません。
余談ですが、本作品のロボット、ゴーダムは、大河原邦男【おおがわら くにお】さんのデザインです。二〇一九年現在では、アニメのメカデザイナーとして、赫々たる実績を誇る、あの大河原さんです。
大河原さんがデザインした、初の主役ロボットが、ゴーダムなのです。この点でも、『ゴワッパー5 ゴーダム』は、決して忘れられてはならない作品です。
今回は、ここまでとします。
次回は、別の作品を取り上げる予定です。