魔法少女の系譜、その179~『花の子ルンルン』のマスコットとは?~
今回も、前回に続き、『花の子ルンルン』を取り上げます。
『花の子ルンルン』に登場するマスコット、キャトーとヌーボに焦点を当ててみます。
キャトーとヌーボは、二〇二二年現在から見て、「魔法少女のマスコットらしいマスコット」です。フラワーヌ星という異世界から来て、ヒロインのルンルンを、魔法少女に任命します。
そう、「ヒロインを魔法少女に任命するマスコット」が登場したのは、おそらく、『花の子ルンルン』が、初めてです。
『花の子ルンルン』以前にも、魔法少女ものには、マスコットが登場していました。九重佑三子さん版『コメットさん』のベータンを先駆けとして、『さるとびエッちゃん』の「忍犬」ブク、『魔法使いチャッピー』のレッサーパンダのドンちゃん、『ミラクル少女リミットちゃん』のサイボーグ犬グー、『超少女明日香』のネコのミックなど、多くの例があります。
とはいえ、それらのマスコットは、「ヒロインを魔法少女に任命する」役目はありませんでした。大概は、ヒロインのお手伝い役です。ヒロインが主で、マスコットが従です。
『さるとびエッちゃん』のブクなどは、お手伝いというよりは、ヒロインと対等な友達ですね。
二〇二二年現在、放映されている魔法少女もの『プリキュア』シリーズなどでは、「異世界から、魔法の力を持つマスコットがやってきて、ヒロイン(たち)を、魔法少女に任命する」のが、お約束の型になっていますね。このお約束を、初めて形にしたのが、おそらく、『花の子ルンルン』です。
気づかれにくいですが、これは、日本の魔法少女を語るうえで、大事なポイントですね。「マスコットが魔法少女を任命する」という型がなければ、あの名作『魔法少女まどか☆マギカ』―通称まどマギ―も、生まれなかったでしょう。それまで、魔法少女のヒロインは、ヒロインのほうが主、もしくは、マスコットと対等な関係でした。その力関係をひっくり返した『まどマギ』は、素晴らしい着眼点の作品です。
『プリキュア』シリーズや、『まどマギ』に見られるように、二〇二二年現在では、魔法少女のマスコットは、「地球上にはいない謎生物」が主流です。
けれども、『花の子ルンルン』の時代、一九七〇年代では、イヌやネコなど、普通に実在する生物がマスコットになるのが、主流でした。九重佑三子さん版『コメットさん』のベータンは、一九六〇年代(!)としては、希少な例外でした。
『花の子ルンルン』でも、キャトーがネコ、ヌーボがイヌの姿をしています。
キャトーもヌーボも、本当の姿は、花の精です。ヒト型をしています。このように、変身するマスコットは、『花の子ルンルン』の時代には、珍しいものでした。
キャトーとヌーボは、花の精であることを知られないために、ネコやイヌに変身しています。冷静に考えれば、「人間の言葉をしゃべるネコやイヌなんて、そっちのほうが怪しまれるだろう。なぜ、普通に人間に化けなかった?」と思いますけれどね(笑)
キャトーとヌーボを、ネコとイヌの姿にすることで、愛らしさを出したかったのだろうと思います。
短いですが、今回は、ここまでとします。
次回も、『花の子ルンルン』を取り上げます。