魔法少女の系譜、その90~『ゴワッパー5 ゴーダム』~
今回は、新たな作品を取り上げます。久しぶりに、テレビアニメ作品です。
ただし、ジャンルとしては、魔法少女ものではありません。ロボットものです。
その作品とは、『ゴワッパー5 ゴーダム』です。昭和五十一年(一九七六年)に放映されました。
五人の少年少女たちが、巨大ロボットに乗りこんで、悪と戦います。五人のチーム名が、「ゴワッパー5」で、ロボットの名前が「ゴーダム」です。
昭和五十一年(一九七六年)には、『ゴワッパー5 ゴーダム』を含めて、ゴールデンタイムに、いくつものロボットアニメが放映されていました。『コン・バトラーV』、『大空魔竜ガイキング』、『マグネロボ ガ・キーン』、『UFO戦士ダイアポロン』、『グロイザーX』などです。当時、いかにロボットアニメが栄えていたか、わかりますね。
そのようなロボットアニメ全盛期、数あるロボットアニメの一つとして、『ゴワッパー5 ゴーダム』も、放映されました。
同じ年、魔法少女のアニメは、一つも放映されていません。いわゆる「魔法少女冬の時代」でした。
けれども、『魔法少女の系譜』シリーズを読んで下さっている方々なら、御存知ですね。この時代にも、実写ドラマや漫画の世界で、おおぜいの魔法少女が活躍していました(^^) たまたま、テレビアニメの世界に、いなかっただけです。
同じ昭和五十一年には、NHK少年ドラマシリーズで、『明日への追跡』が放映されています。テレビの中にも、浦川礼子という魔法少女―ドラマでは、超能力少女と呼ばれていますが―が存在しました。
さて、『ゴワッパー5 ゴーダム』は、ロボットものなのに、魔法少女が登場するのでしょうか?
しません。
魔法少女が登場しない代わりに、戦闘少女が登場します。
ロボットに乗りこむチーム、ゴワッパー5には、ただ一人、女性が含まれます。そして、その女性が、チームのリーダーです。
彼女の名は、岬洋子【みさき ようこ】といいます。中学三年生です。他のメンバーは、全員、小学生男子(!)なので、チームで一番、年上です。必然的に、彼女がリーダーになります。
前記のとおり、放映当時は、ロボットアニメ全盛期でした。その中で、女性がリーダーになって戦うのは、本作だけです。ロボットアニメに登場する女性リーダーとしては、洋子が嚆矢です。
ロボットアニメが、男の子のものと思われていた時代にあって、洋子の存在は、画期的でした。
実際には、女の子も、おおぜい、ロボットアニメを見ていましたけれどね。『コン・バトラーV』の敵役、ガルーダなど、いまだにファンだと公言する女性がいるくらいです。
当時は、娯楽が少なかったので―インターネットも、ゲーム機もありませんからね―、子供の娯楽としては、屋外で遊ぶ以外には、テレビアニメを見るか、雑誌を読むくらいしかなかった、ということがあります。
作り手側は、「男の子向け」・「女の子向け」を意識して作っていたでしょうが、受け手側は、性別に関係なく、わりと何でも見ていたふしがあります。
もちろん、個人の好みはあります。作り手側の意図どおりに、男の子向けが好きな男の子もいましたし、女の子でも男の子向けのほうが好きな子もいました。どちらも行ける雑食の子もいました。
「男の子向け」のロボットアニメで、中心になって活躍する洋子は、今見ても、格好いいです(^^) 事件が起こって、洋子が、「行くよ。ゴワッパー出動だ」と言う時、わくわくします。頼れる姉御という感じです。
洋子の魅力は、昭和五十一年(一九七六年)当時よりも、二〇一八年現在のほうが、わかってもらえそうです。今なら、こういうリーダータイプの女性で、人気があるキャラクターが、アニメやゲームの中に、おおぜいいますよね。戦闘少女も、普通にいますし。
洋子は、時代に先駆け過ぎたのかも知れません。
もっとも、『ゴワッパー5 ゴーダム』を当時見ていた人々に聞くと、ほぼ全員が、「洋子は、格好良くて、好きだった」とおっしゃいます。男性でも、女性でも、そうです。四十年以上経っても通じる、普遍的な魅力のあるキャラクターと言えるでしょう(^^)
先に、本作には、魔法少女は登場しないと書きました。
しかし、超科学のロボットを「魔法道具」と見なせば、洋子は、巨大な魔法道具を使う魔法少女とも言えます。他の四人のメンバーは、「魔法少年」ですね。
ゴワッパー5は、戦闘少年少女にして、魔法少年少女のチームということになります。
女性リーダーの魔法チームと言えば、『5年3組魔法組』を思い出しますね。『5年3組魔法組』では、ショースケというあだ名の女の子が、リーダーでした。
興味深いことに、『5年3組魔法組』は、昭和五十一年(一九七六年)の十二月に、放送終了直前の『ゴワッパー5 ゴーダム』のあとを継ぐようにして、放送が始まっています。
ひょっとしたら、『5年3組魔法組』の女子リーダーという発想は、『ゴワッパー5 ゴーダム』から、直接、ヒントを得ているのかも知れません。
『5年3組魔法組』と並べてみると、『ゴワッパー5 ゴーダム』との類似性が目立ちます。
先述のとおり、「超科学のロボット」は、広義には「魔法道具」の一種と言えます。ならば、「女性リーダーの少年少女のチームが、事件解決のために、魔法道具を使う」という大筋が、一致します。
一九七〇年代は、二〇一〇年代の現在より、社会において女性が活躍することが、ずっと少ない時代でした。テレビの世界も、それを反映して、「戦う女性」や、「男性に交じって、互角に活躍する女性」が少なかったのです。ほとんどのロボットアニメで、女性が補助的な役割しか果たしていないのが、象徴的です。
そんな中で、男子に交じって、互角以上に活躍する洋子やショースケは、輝かしい存在でした。彼女たちは、のちの魔法少女や戦闘少女を導く道標となりました。
戦闘少女として、洋子は、『エヴァンゲリオン』の綾波レイや惣流アスカ・ラングレーの遠い祖先です。十代の女の子なのに、巨大ロボット(的兵器)に乗って、戦う点が、共通します。
チームで戦う魔法少女として見れば、洋子は、『セーラームーン』や『プリキュア』シリーズとつながります。
ジャンルで分ければ、『ゴワッパー5 ゴーダム』は、やはり、ロボットものです。魔法ものとは、言いがたいです。
強大な、決まった敵がいて、そいつらが、普通の平和な人間の世界を侵略してきます。ゴワッパー5のメンバーが、ゴーダムに乗って戦って、侵略を防ぎます。ゴーダムは、普段は、秘密基地に隠されていて、いざとなると、そこから発進します。ロボットもののお約束を、ちゃんと踏まえています(^^)
ですが、女子をリーダーにしたためなのか、魔法ものっぽい部分も見受けられます。
例えば、ゴワッパー5のことは、普通の人間には、秘密にされています。恐ろしい侵略者のことも、普通の人は、知りません。知っているのは、人間では、志摩仙太郎【しま せんたろう】という人物だけです。
この点は、魔法少女が、魔法少女であることを秘密にすることと、通じますね。
物語の後半になると、ゴワッパー5や侵略者の存在が、公になります。ゴーダムは、国連軍と一緒に戦います。
また、『ゴワッパー5 ゴーダム』には、マスコット的存在が登場します。二頭のアザラシです。「オッチャン」と、「ピョン太」という名が付いています。
ロボットのゴーダムが隠されている基地が、奇顔島という島にあります。その島に棲むアザラシの親子です。
オッチャンは、アザラシなのに、なぜかパイプをくわえています(?_?) そのうえ、人間の言葉を理解しています。でも、しゃべることはできません。
オッチャンは、明らかに、普通のアザラシではありませんね(^^; にもかかわらず、特に活躍はしません。あくまで、マスコット的存在です。
『ゴワッパー5 ゴーダム』は、二〇一八年現在では、どちらかと言えば、忘れられている作品です(^^;
とはいえ、じつは、現在のような、戦闘少女花盛り、男子以上に活躍する女子てんこ盛りの時代を予告する作品でした。細い線でも、現在とつながっています。
今回は、ここまでとします。
次回も、『ゴワッパー5 ゴーダム』を取り上げる予定です。