ペナンの食堂テクセンにて。甘いローストポークと激辛唐辛子の奇跡コラボ
マレーシア旅での食事選びは、そこそこの真剣勝負である。
いつものあれを食べたいし、話題の料理を試してみたいし、新しい味にも出会いたいし、ふらっと立ち寄った屋台でのひとめぼれだってある。でも胃袋にはどうしても限界がある。
なので、食後にやっぱりあっちのほうがよかったかなと検証・反省・妄想がたびたびなのだけど、今回の旅で、その想いが0.1ミリも湧かず、これは選んで大正解、とじぶんに拍手をおくった料理がこちら。
ペナンの行列ができる食堂「テクセン」の「ダブルローストポークwith 唐辛子」と「ゴーヤの塩卵と海老炒め」である。
飴色の豚肉は、しっかりと弾力のある歯ごたえ。かめば、醤油味のようなコクに、深い甘みが口中にひろがる。たとえるなら牛肉のしぐれ煮のような味で、白いご飯に合うのはもちろんのこと、ビールのつまみにもよさそうだ。
そして注目して欲しいのが、ぽつぽつ混ざっている緑色の物体。これ、約5ミリ幅にカットされた青唐辛子である。なので、豚肉の甘みを味わっていると、あれ? 辛い? うわっ! 辛い!! となり、あっという間に口中がヒーハー。また豚肉に戻ると、甘さがしみ出てコク深い、というパターン。この甘・辛のくり返しがやみつき抜群で、そして爽快なのだ。
手前の皿、苦瓜の炒めものも、みごとに好みの味だった。マレーシアの苦瓜は、つるんとした皮をもち、日本のより苦みが少すくない。そのため味つけの塩卵の塩気が絶妙にマッチしている。薄くスライスされ、ほどよいシャキッ感。そこに具の海老、豚肉の旨味が加わり、さらに卵の黄身のまろやかさが全体を一体化(皿をよくみると、オレンジの汁がある)。野菜料理というより、メインをはれるぐらいのリッチな味で驚いた。
苦瓜の緑と海老のピンクのコントラストが美しく、見ためもいい。隣の席のマレーシア人が「それおいしそうね、なんていうメニュー?」と話しかけてくれたのも、ひそかにガッツポーズものだった。
「テクセン」は、いつも行列ができている。やっぱり人気のある食堂はすごいのね。
甘い豚肉に辛い唐辛子を合わせる。苦瓜に塩卵で味つけ。なるほど、なるほど。おいしいのに加えて、脳の新しい回路がポン!とうまれたような驚きのある味で、それがとても心に残っている。
◆店舗情報
Tek Sen Restaurant
Ground Floor of No.18 & 20, Carnarvon Street, Georgetown, 10100 Penang