【美術館を味わう②】いま感じているのはアートなのか、自然なのか/COMICO ART MUSEUM YUFUIN(大分県)
2021年も明日で終わる。10月からはじめたnoteは、月1本を目標にしていて、これが約束通りの3本目。2021年最初で最後の大きな旅行だった大分県・湯布院。そこで訪れた「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」のレポートで今年のnoteを締め括りたいと思うが、なんとか今年中に書ききれるだろうか。
訪れたきっかけ
杉本博司の作品が好きな友人が、よかったと言っていたのが、興味をもったきっかけだった。調べてみると、展示空間に水盤があり、そこに反射した作品がとても神秘的にみえた。ちょうど、10月くらいからコロナも落ち着いてきて、家族と年末に温泉旅行を計画していたため、湯布院を訪れることに決めた。
美術館到着まで
この美術館は、「湯の坪街道」という湯布院のメインの観光通りのすぐ傍にあった。なんだか勝手に、人通りのない山の中にあるとイメージしていたので、駅から歩いてさほどかからないところから、遠目に奈良美智の犬が見えたときは少し驚いた。なので、観光をしながら何度も犬は見ることになり、最終日に訪問を予定していたので、図らずも期待感を日に日に高めることとなった。
訪問当日は、びっくりするほど寒くて、細かい雪が舞っていた。13時から予約していたので、それまでお土産屋さんをうろうろして、近くのおうどん屋さんで鍋焼きうどんを食べてから臨んだ。
美術館入館
建物は隈研吾、ロゴは原研哉という贅沢な美術館。エントランスからシンプルながらも品のある出で立ちだった。由布院の街並みに馴染みつつ、ただどこかほかの建物と一線を画すような、そんな気品高さがあった。
同じ時間に予約した方たちが集まったら、エントランスで館内の説明をうけて、いよいよギャラリーへ。
GALLERY Ⅰ・Ⅱ
館内は2つのギャラリーから成り、ひとつは村上隆、ひとつは杉本博司のギャラリーになっている。その2つのギャラリーは硝子張りになっていて、間に水盤がある。
カラフルな作品が並ぶ村上隆のギャラリー、モノクロな作品が並ぶ杉本博司のギャラリー、この対照的なふたつの部屋が、硝子張りで一見シームレスに、ただ水盤で確実に分離され、お互いを干渉しない。鑑賞者はまるで、自分が水の上に浮かんでいるような感覚になる、不思議な部屋だった。
訪れる以前にイメージしていたこの部屋は、とても厳かで、神秘的だと思っていた。ただ、実際に訪れると、神秘的というある種の違和感すらなく、むしろ元からこの場所にあったような馴染み方をしている。エントランスのイメージ同様、ギャラリー内部も不思議と、由布院の空気感とマッチしていたのだ。
OPEN GALLERY
建物の屋上には、遠目から見えていた奈良美智の犬の彫刻「Your Dog」が鎮座している。犬越しにみる由布院の山が、どこからみる山よりも綺麗で、だからこの場所に美術館をつくり、この場所に犬を置いたのかな?と思うくらいだった。鑑賞者が代わる代わる犬と写真を撮っていく。その様が多種多様で、それを室内のラウンジで観察できる。この一連の行為までもが、奈良美智が考えたアートかもしれない。
退館
ギャラリーショップなどはなく、ラウンジで村上隆や杉本博司などの図録が見られるのと、エントランスでポストカードが購入できる。杉本博司のポストカードが紙質とも馴染んでしっくりきたので、来年はこれで大切な人に手紙を書こうと思い、5枚セットを購入して、退館した。
まとめ
訪れる前に勝手に作り上げていた神秘的なイメージを、よくも裏切るように、由布院の街にしっかりと馴染んだ美術館だった。私が数年後、ふとこの美術館のことを思い出すとき、恐らく浮かぶ絵は、聳え立つ山々の中に穏やかそうに鎮座する犬か、水面に映る杉本博司の作品だと思う。私はアートを楽しみに行ったはずなのに、自然でお腹いっぱいになっていた。