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生の実感、北海道の冬
先日地元の北海道に帰省した。一年半ぶりだった。
結婚して北海道を出て四年、年に数回は帰っていたが、例の疫病によりしばらく控えていた。
今回は四日間帰省することにした。本当は一週間くらいいたかったけど、職場が人手不足なので気を使ってちょっと短くした。
今年は冬に帰ろう、とちょっと前から決めていた。関東には冬には物足りなさを感じていた。
雪が好きというのもあるけど、それより冬の厳しさがずっと恋しかった。
雪道を歩いていると、目的地まで歩くこと以外できないし、考えられなくなる。それがいい。
歩道の深い雪が無数の足跡に踏み固められてできた細い通り道や凍った凸凹の道を、一歩一歩転ばないように集中して歩く。歩きスマホとかしてられない。
強制的に歩くことに没頭せざるを得ない状況に加え、目に雪が入ってきたり、寒さが体に染みる。呼吸の水蒸気が結露してマスクもビチャビチャになってくる。
思考の殆どが「寒い」「目的地まで歩く」に占拠されるので余計なことを考えられない。
ああ、私は雪が見たかったのではなくて、これが欲しかったんだなと思った。雪の中のお散歩、とても良かった。
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なんのために生きてるんだろうとか、自分の空っぽさを嫌悪したり、そういったことがなにも考えられなくなる。没頭できる時間。
虚無は隙間があると生まれる。余裕があるのはいいことだけど、副次的に発生する虚無を埋める術がないと、私は、かまちょの権化となり老害になってしまう。
今回の帰省で一番楽しかったのは、帰りの空港に向かう途中で妹の車が雪の段差乗り上げてしまって、みんなで車の底の雪を掘って脱出したやつだった。
JAFは大雪に付き多忙で断られ、野良のロードサービスはバカ高くて頼めないので自分たちでなんとかするしかない。しかも車にはろくな武器も積んでない。
車の窓が凍ったときにガリガリする棒みたいなやつで、フガフガいいながらひたすら車の下を掘った。途中から心優しい近所の人が現れ、鉄のスコップで手伝ってくれた。
結局脱出に一時間半かかった。出かける前にアイロンをかけてサラサラにした髪はヤマンバみたいになってた。
空港で食べるはずだったランチはマックのドライブスルーになってしまったが、多分ランチに行くよりずっと楽しかった。
こういうことを楽しんでしまうのはちょっと不謹慎かもしれないけど、自覚的であることは誤った方向に進まないために大事だと思う。
北海道は試される大地なので、こういうクエストが自然発生するのがめっちゃいい。やっぱり冬に帰って良かった。また試されに帰ろう。
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