読書感想文 生のみ生のままで(下)
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
タイトル 生のみ生のままで(下)
作者 綿矢りさ
出版社 集英社
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読書感想文 生のみ生のままで(上)|おとぼけ男爵|note
あらすじ
逢衣と彩夏が事務所に引き離されて七年たった。
逢衣は出版社の正社員となって懸命に働いている。
彩夏を愛する想いは変わらない。
彩夏は女優として活躍していた。だが、突然病気で引退した。
心配な逢衣は、元マネージャーの米原に手紙を託すが、彩夏の見舞いに行くことを拒否された。
そんな逢衣の元に、彩夏の母親が彩夏の面倒をみろと言ってくる。病気の娘を介護するのに疲れたと言うのだ。
逢衣は彩夏と同居しようとするが、彩夏はかたくなにそれを拒む。
二人は、どうするのか……
感想
なぜ上下巻に分けたのでしょうか?
もう、断然下巻が素晴らしいではありませんか。
正直上巻を読み終わった時、なんだか今一つだなあ……あんまり好きじゃないかも……って思っていたのに、下巻を読んで、ああ、爽やかな読後感。
やっぱり、綿矢さんの作品好きだわ~と感じました。
爽やかで官能的な、逢衣と彩夏が愛し合う表現もストレスなく読み進められます。
周りに理解されない二人の関係を誰に対してどう告白していくのかということに関して、二人には考え方にずれがある。そのずれを二人がどう埋めるのか。周りも、それをどう感じるのか。
人の心の機微が丁寧に描かれていて、色々な考え方、感じ方それぞれに理由があって、それぞれに共感できたり、できなかったりします。でも、共感できなくとも、納得はできたりするのは、とても描き方が上手いからだと感じました。
しっかし、元彼の颯と琢磨。
この二人が結婚して幸せそうでよかったよ。加えて、口が堅くて。
登場人物に、これといった悪人が存在しないことが、爽やかな読後感につながったのだと思います。
こんな風に愛することのできる相手に出会えて、生涯共に生きるなんて素敵だなあって、ファンタジーのような優しい終わり方でした。