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読書感想文 残照の頂

ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。

タイトル 残照の頂 続 山女日記
作者   湊かなえ
出版社  幻冬舎

あらすじ

後立山連峰
綾子の夫は、念願だった喫茶店GORYUを開店する半年前に亡くなった。喫茶店には五竜岳の写真が飾られている。夫の代わりに開店して十年店を守った綾子は、店で知り合った麻実子と五竜岳に登りに来た。山岳ガイドの山根は、店に飾られた写真を撮った人物だ。
目の前の山の景色はショー、白い幕から現れた五竜岳を見ながら涙が止まらない綾子。早期退職して喫茶店をしようとしていた夫に反対した自分の考えを後悔していたのだ。山小屋から見た空には天の川が見えた。店の写真と同じ天の川だった。綾子は天の川に向かって話しかけた。夫に綾子の想いは届いただろうか……
麻実子は綾子を山根にまかせて、一人鹿島槍ヶ岳に登る。綾子にはだまっていたが、山根と麻実子は、大学の山岳部の同級生で、お互い好意を持っていたのだ。二十年ぶりの出会いだったが、二人は知らないふりをしていた。体力を過信した麻実子は山で前に進めなくなる。そこに現れたのは山根だった。話す内にお互いの誤解や想いに気づく二人。二人はもう一度GORYUで出会うことだろう。

北アルプス表銀座
音大の女子学生ユイとサキは伴奏を男子学生ユウに頼んだことから友人となる。三人は、ユウの誘いで山に登った。山に登ることで、変化があった。
蓋が開いたように歌えるユイ、生き物の魂に気づけるようになって表現の幅がひろがったサキ。
ユウとユイはどちらもサキに恋していた。
だが、ユイは同性である故に想いを告げられない。ユウは思いを告げるがサキは受け入れなかった。ユウは北アルプス表銀座の登山計画と曲を残して姿を消した。ユイとサキは槍ヶ岳へ向かう。槍ヶ岳でユイとサキは、ユウの作った曲を演奏する。その名は残照の頂。
二人の傍に、男の子が見えたと言う登山客だが……

立山剱岳
幼い頃父を亡くした夏樹は看護師の母に育てられた。だが、夏樹が大学の山岳部に入部することを母は反対した。だが、夏樹は山岳ガイドになると言う。山岳ガイドになることで人の命に寄り添える人間になりたいという夏樹に母は理解を示した。母が山岳部を反対した理由とは? 母と父の出会いは? 母はどこでプロポーズはされたのか? 母の言うヒルトンホテルとは? 母も、夏樹も、それぞれに相手を思いやっていた。

武奈ヶ岳 安達太良山
イーちゃんとエーコは、大学の山岳部で一緒だった友人。だが、卒業して三十年。年賀状のやり取りしかない間柄だ。
エーコからイーちゃん、イーちゃんからエーコへの書簡で二人の人生が語られる。
エーコは京都の老舗菓子店の娘で、兄の事故死で店を継ぐ決心をするが、女を見下す世界で苦労する。だが、和菓子の新たな魅力を発信し店は軌道に乗った。だが、今コロナで休業中だ。そんなエーコは滋賀の武奈ヶ岳に登り、山頂で自分の店の羊羹を食べる夫婦に出会い、店を開ける決心をした。
山岳部の先輩と結婚して、海辺のペンションを経営していたイーちゃん。震災で夫の実家で米作りを始める。被災地からの転校でいじめを受けていた息子たちは、山登りを始めた。義父母の介護や農家の仕事でいっぱいいっぱいのイーちゃん。エーコからの手紙を読んで、安達太良山に登る。イーちゃんはまたいつかエーコと山に登りたいと思うのだった。

感想

イヤミスの女王、湊かなえさん。
以前、テレビで山に夢中だと話しておられたんで、続山女日記を読んでみました。
湊さん、山に恋しているんだなあって感じます。ホント、山に対する表現が愛に満ちている。
様々な生きづらさをかかえた人たちが、山に登ることで浄化され、再生されていく様子が描かれています。
イヤミスとはまるで違う人が書いたかのような作品は、山が湊さん自身を変えたのかもしれないと感じます。

読者としては面白いイヤミス。でも実際書いていたらきついものがあるだろうなあと想像せずにはいられません。でも、読者としては、あのいやらしい、人間のどす黒さを読むのが妙に楽しかったりするんですよね。

こういう心温まる作品を読んでほっこりする私。
人間の残酷さ、どす黒さ、卑劣さを読んでムフフと含み笑いする私。
読者も色々な顔を持っていますからね。

でも、湊さんの恐ろしく後味の悪い、恐ろしい、イヤミスの新作を読みたいなあなって感じたりもするのです。

まえに感想をのせた「ドキュメント」も比較的爽やかだったしなあ……
感想はこちら

読書感想文 ドキュメント|おとぼけ男爵|note

でも、山登りかあ……
私には無理だな……
京都市内を歩き回って、わあ!一万五千歩だあ!と思ったらもうクタクタですから。
本当に体力がない……情けない……



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