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舞台感想 宝塚歌劇 宙組バウホール公演 MY BLUE HEAVEN-わたしのあおぞら-

バウホール公演に行く為に乗った阪急電車が、トムとジェリーのコラボ電車だった!
かわいい!

大劇場!
箕面の滝かな?

宝塚バウホールで行われた宙組公演 
MY BLUE HEAVEN-わたしのあおぞら- を観てまいりました。
風色日向さんの初主演作品です。
曇りだったけれど、バウホールに入ろうとしたら、少し青空が……

とても丁寧に作られた上質の作品だと思いました。
演者も役を大切に演じていたと思います。
出演者が一丸となって作り上げた手抜きのない作品に感動しました。

若手の為のワークショップ的な意味合いもある公演ですから、出演者がこの経験を通して成長できると一番良いですよね。
この作品は、出演者全員のレベルを引き上げたのではないでしょうか。
作品の出来が良いので、演者も感情移入しやすく迷いなく演じられたのではないかと感じました。

第二次世界大戦後の日本が舞台というのは、本当に珍しい設定で、なんだか暗い話だと嫌だなあ~と思っていたのですが、とっても優しいお話。
シリアスだけどハートウォーミングでコミカル。
奇をてらわずに、伏線は違和感なく回収され、希望を感じさせる終わり方。
フィナーレがなくても満足感のある出来だけれど、ちゃんとフィナーレあって大満足でした。

ネタバレあり。


物語

主人公は天地楽。楽という名前から友人のライアンがジョーイと名付けた。
ジョーイ、ヤヨイ、ライアンは幼いころからの友人で、こども歌舞伎を一緒に演じたり、サイコロで遊んだりして仲良く過ごしていた。
だが、成長したライアンはアメリカに戻ることになり、ヤヨイに愛を告白し、ペンダントを渡して去っていく。
その後、第二次世界大戦がはじまり、日本とアメリカは敵国となった。
ヤヨイから貰った千人針を御守りに、ジョーイは出征した。
横浜はB29による大空襲で焼け野原となり、ヤヨイは両親を亡くし、空を見上げることができなくなってしまった。
日本は敗戦し、横浜は孤児であふれていた。ヤヨイは教会で孤児の面倒をみている。だが、その資金は男を騙して巻き上げるお金だった。
歌手になる夢を封じて、生きるために悪事に手を染めなくてはいけないヤヨイの元に、ジョーイが現れた。再会を喜ぶジョーイとヤヨイだったが、綺麗ごとでは生きていけない現実が二人の前に立ちはだかる。
ジョーイの上官上杉は横浜で悪事に手を染めていた。上杉は、ジョーイを仲間にしようと考えていた。彼のサイコロの腕でイカサマをし、彼にそっくりな甥を持つ金持ちの戦争未亡人を騙して資産を手に入れようと企んでいた。
戦場での罪をネタにジョーイを脅し、仲間になれと言う上杉。
ジョーイは、ヤヨイの夢を叶える為に、悪事に手を貸そうとするのだが……
一方、ヤヨイは歌手の夢を叶えるために米軍基地で歌うことになったが、そこで再会したのはライアンだった……

冒頭、アイドル歌手が登場して、彼女がストーリーテラーの役割を果たすのですが、この歌手はいったい誰?
上杉が殺したアメリカ兵は何者?
ジョーイの戦場での罪とは?
ジョーイは金持ち未亡人の資産をだまし取ってしまうのか?
日本に戻ってきたライアンは二人とどんな風に関わるのか?
ヤヨイへのライアンの想いは届くのか?

一幕の伏線は二幕で回収されます。
驚くような内容ではないのですが、物語って観客を驚かせる奇抜さが必要なわけではないですね。
やはりそうだったのね。でも、そこに至るにはこんなことがあったのね。そして、それに関わった人間にはこんな苦悩があったのねって、納得できる回収で、設計がしっかりしている作品だなって思いました。

演者の感想

ジョーイ役の風色日向さん

齋藤先生があてがきとおっしゃっているだけあって、本当にぴったりです。とにかく、優しくて、頼もしい。
ジョーイという役の上でも頼もしいし、
初主演という立場の上でも頼もしい。
皆をぐいぐいひっぱっていく落ち着きと安心感。
これは彼女が元から持っている性質が、様々な経験によってより豊かになったのではないでしょうか。もちろんその経験って、良い経験ばかりじゃなくて、辛い経験や挫折を含めての経験ですがね。
宙組の置かれた状況は本当にきついものがあったと思いますが、それを乗り越えた強さが、この落ち着きと安定感につながっているように感じました。
その上、見栄えのするビジュアル。
もう、ただただかっこいい! これは本当に強みですよね。
その上、芝居が上手い。
牢屋でのヤヨイとの会話や戦争未亡人の田島とのやりとりに涙が止まりません。
ジョーイの自己犠牲の愛や正直さが切なくって、自然と涙がこぼれるって感じなんです。
いやあ、なんか、もう、凄いよ、なにーろ君。
優しくて、頼りになる男を演じさせたら天下一って感じ。

だから、なんかねえ、極悪非道ななにーろ君を観たくなってきた。
本公演とかで、すっごく悪い役やってくれないかなあ?

ヤヨイ役の山吹ひばりさん

上手いし、綺麗だし、申し分ないのだけれど、声の出し方を変えたのかな?
めちゃくちゃ特徴的だったお声が、いつもより普通に聞こえたのは気のせい?
ペテン師をしているときなはすっぱな雰囲気と、子供たちを見守る優しいお姉さんとの演じ分けも見事で、本当にお芝居上手。
お歌も素晴らしいのだけれど、少し不安定な時があって、ちょっと心配。
元々細い方だけれど、本当に細くてそれもちょっと心配。
私の減らない食欲をちょっと分けてあげたい。ちゃんと、食べられているのかなあ……

ライアン役の亜音有星さん

ヤヨイへの真っ直ぐな想いが清々しい。少年時代も、大人になってからも。
ジョーイやヤヨイに対する気持ちをストレートに出すというよりも余韻のあるお芝居で、二人への想いを感じさせるように思いました。
アメリカ人らしい明るさの中にも、日本育ちであるがゆえの謙虚さがにじんていて、素敵でした。
ただ、一層、線が細く感じるんですよね。もう少し、骨太な印象が残るといいんだけど……彼女にも私の食欲を分けてあげたい。
なんといっても、ビジュアルが抜群にかっこいいから、もったいない!
まあ、今回はお衣装がね、米兵のお衣装で可哀そうだったな。もっと、かっこいいお衣装なら映えるのにねえ。

宮司役の秋奈るいさん

いつの間に、こんなベテラン感が!副組長という立場が、こうさせるのか。
お歌も伸びやかで、貫禄がある。
でも、かっこいい男役さんのイメージがずっとあるので、一瞬誰?とか思ってしまった。
こういう方の支えがあるから、なにーろ君も安心して演じられるのだろうな。

上杉役の真名瀬みらさん

私、この自然な悪さが凄くいいなあと思いました。
上杉は「卑怯」な人なんですよ。何をするにしても、出来る限り自分の手を汚さずに人を使う。その卑怯さが、なんともナチュラル。自分の論理で、息をするように、卑怯なことをする。
戦争未亡人の田島を騙す計画で、田島の夫のような地位のある軍人の命令で自分たちは兵士として大変な思いをしたから、その報いを受けるべきだっていうようなセリフがあったんですね。
つまりは、悪事を正当化する論理も持っていて、それが正しいと思っている内に、色々感覚がずれてきたナチュラルなワルって感じ。
それが、すごく自然に演じられていて、上手いなあって感じました。

印象的な方々

戦争未亡人田島役の小春乃さよさん。
もう、これはジョージとの養子契約の時の芝居が最高でしたね。
真実なんてどうでもよくて、騙されたかった。ある意味、ジョージのうわべではなく、中身を理解していたわけですよ。刺さるなあ~

ダニエルの大路りせさんと風羽咲季さんのダニエルとナンシーの探偵が、この作品のお笑い担当で、なかなか良い味だしていました。

この作品でご卒業の愛未サラさん。
伸びやかな歌声に拍手がわいていました。華のある娘役さんだったから、もう観られないと思うと淋しいですね。

ハジメ役の奈央麗斗さんが、かっこいい! 
アン役の美星帆那さんもかわいい!
美形に目が奪われちゃいますよね。

あれ?たま様?って思ってしまう、たま様似の響望歌さん。
今回、お祭りの場面で歌っておられたのだけど、本当に歌がお上手。
ダンスは苦手なのかもしれないけれど、彼女の歌の上手さは素晴らしいです。芸名観ていても、歌が好き!って現れていますよね。
もっと、彼女の歌聞きたいなあ~

最後に

映像使いのお上手な齋藤先生。
冒頭から横浜のハイカラで明るい様子や戦争の不穏な様子を見せる技が。
映像を観ているとワクワク感が盛り上がりますものね。

一度見ただけで、ストーリーも思い出せて、演者の感想も書けるっていうのは、作品がしっかりしているからだろうなって思います。
「訳わからんかった」という作品では、感想が書けないですからねえ。
やはり、一度見て面白かったと思える作品は、良作だと思います。
さすが、齋藤先生。
これからも良い作品をお願いしまーす。

ちなみに今回のランチはこちら
フルールで「たこ焼きソース」と「ギュウヒとコーヒーのティラミス」

過去の舞台感想はこちら
宝塚歌劇 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

宝塚OGさん出演の舞台感想はこちら
宝塚OGさん出演 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

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宝塚歌劇以外の舞台、映画感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)



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