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読書感想文 たまごの旅人

ネタバレ、あらすじアリの読書感想文です。

タイトル たまごの旅人
作者   近藤史恵
出版社  実業之日本社

あらすじ

遥は、新人旅行添乗員だ。今回のアイスランドツアーが初仕事の遥はドキドキしている。だが、飛行機の中で自分が旅行添乗員を目指すきっかけになった憧れの先輩添乗員宮城を見かけ声をかけるが……
体調不良のツアー客からおにぎりが食べたいと言われた遥だが、レイキャビクには日本料理などない。困った遥は宮城に助けを求める。

クロアチア、スロベニアの旅の添乗をする遥。ツアー客の定年後の父親と娘の結の会話を聞いていると、身内を貶すことでコミュニケーションをとろうとする父親の無神経さに腹が立つ。ドラゴンの赤ちゃんという生き物を見て、ドラゴンになれないと自分と似ているという結。人生思う様にはいかないけれど、生き延びようと言って、遥は結と心を通わせる。

パリのツアーに添乗する遥。美術やバレエなど文化的なことの好きな客ばかりであまりわがままは言わないが、母と息子のツアー客が、別の女性客とのレストランでの同席を要求する、息子と女性客は、部下と上司らしいが……人生をかけて息子を育ててきて何も見返りがないと嘆く母親の話を聞く遥。

西安、北京六日間の旅に添乗した遥。遥のせいではないと言っても、いきなりロストバゲッジが発生し、ツアー客は不機嫌だ。角田という一人旅の年配客はえらそうで文句が多く、他のツアー客も避けている。遥が相手をするのだが……上手く礼が言えずに嫌われる古臭い日本的な男の悲哀を感じる。

遥は沖縄に来ていた。仕事ではない、コロナで仕事がなくなったのだ。コールセンターの仕事で沖縄に来た。寮に住んで弁当の食事と仕事をするだけの毎日。ステキなコテージに住む女の子と仲良くなってバーベキューをするが……

感想

私は、個人で海外旅行をできるスキルがないから、今まで経験した海外旅行はすべて添乗員さんのお世話になりました。皆さん、頼りになる方ばかりだったなあ。

旅行添乗員さんって大変な仕事だろうなあって感じていたし、好きでなきゃできないだろうなあって思っていたので、なかなかリアルに感じられました。

本当に、こういうツアー客いるだろうし、その対応も大変だろうし、実際自分が参加したツアーでもこんな「おっさん」いたなあって感じます。

実際、私と同世代から少し上の世代の日本の男どもが、女を見下していたり、偉そうにしていたり、自分が優秀だと勘違いしていたりするなあって思うのは事実だし、それを不愉快に思う人たちの方が多い時代になってきたんだなあと感じます。
昔はそういうのが普通だったので、私自身は、そういう男どもの言動にやや鈍感かもしれません。

でも、新人添乗員が必死に仕事を頑張りながら、ツアー客の心に寄り添っていく優しさは読んでいて心地よかったですね。
こんな、ツアコンさんのツアーに行きたいなあ。

先輩添乗員は、「自分は殻に包まれた卵で、転がってヒビだらけになりながら旅を続けている。殻の外の世界には本当には関わることが出来ない」と言うのだけれど、遥は、「でも、ヒビが入らなきゃ外に出ることもできないし、関わることが出来なくてもヒビをいれたのは外の世界だ」と思う。それも、なんだか素敵だなって感じました。

旅行に行きたくなってしまう、スルスル読める作品でした。

しっかし、コロナ前のような海外旅行を楽しめる日は、いつ戻って来るのだろうか? 本当に、添乗員さんって今、どんなお仕事で食いつないでいるのだろうか? 
そしてコロナだけではない、「戦争」というおぞましい現実が日々テレビに映し出されると、なんだか絶望的に感じます。いつかは、エルミタージュ美術館とか行ってみたかったんだけどな……でももう、かの国へ行きたいとかいう気持ちなんか、消えてしまった……

どうぞ、早く平和になりますように。
そして、コロナが消え去りますように。


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