読書感想文 回樹 斜線堂有紀
短編集って読みやすいけれど、なんだか消化不良に終わる作品も多いと思います。
え? 終わり? みたいな作品とよく出会います。
でも、このSF短編集はどれも、秀逸です。
斜線堂さんの、発想、設定にうなります。
ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。
誰も思いつけないアイデアと、誰でも思いあたる感情の全6篇。
といううたい文句で、SFの短編が6つ収められています。
回樹
突然現れた未知の巨大なモノ。回樹と呼ばれるそれは、死者をのみ込み、その死者への愛を自らに移す。
その結果、愛する人を亡くした人々は、かの人を愛するように回樹を愛するようになるのだが……
遺体を回樹に飲み込ませたい人々の想いは、愛なのか……?
骨刻
刺青のように骨に文字を彫る技術ができ、一部の人々に流行る。
「言刻会」という宗教は、骨に言葉を彫ることで病が癒えると主張する。
だが、会の中の権力闘争に傷ついた教祖は姿を消し……
BTTF葬送
映画には魂があり、その魂の量に限りがある。だから、未来の映画の為に過去の映画を葬り去り、魂を解き放たなければならない。
そんな決定で過去の名作映画が次々と葬送される世の中。そんな、世の中に抵抗しようとする人間が現れる。
不滅
突然人間の死体が、腐ることも傷つけることも焼くこともできなくなった。死体は葬送船に乗せて宇宙へ運ばれることになった。が、安価で送る葬送船偽装に気づいた男は、宇宙港を爆破しようと考える。彼の真の目的は……
奈辺
奴隷制度のあるニューヨーク。黒人を拒否する白人経営の酒場に、宇宙人が不時着した。
宇宙人が黒人と白人にしたこととは……そして、三人の関係は?
回祭
回樹に遺体を飲み込ませた家族が集まる年に一度の回祭。ボランティアとして回祭に参加している蓮華にはある目的があった……
とまあ、簡単にあらすじというか設定を書いただけでも、斜線堂さんの発想の凄さがわかるというものです。
「愛」と「死」がどの作品でも、一つのテーマになっています。
努力して愛することは、本当に人を愛していることになるのか?
努力してでも愛したいと思うのなら、それはすでに愛ではないのか?
愛しているとは何を愛しているのか?
相手の外見なのか? 相手の話す言葉なのか? 相手の魂を感じられればモノでも愛するのか?
死んだ人間を飲み込んでしまう回樹。
死んだ人間が、焼くこともできず、腐ることもなく存在し続けるという設定の「不滅」
魂を持つ映画を殺すという行為。
SFだからありえないことばかりだけれど、
「愛」や「死」が妙にリアルです。
人が人を愛するという感情は一体何なのか?
死者を悼むという感情は一体何なのか?
死者を悼むという行為はどういうことなのか?
遺体を冒涜している行為とは何なのか?
そんな風に、様々な疑問や気づきがあって、とても面白かったです。
斜線堂さんに、こんな風に何かに気づかせてくれてありがとうってお礼を言いたい気分です。
読みやすくて、ありえないことなのにその設定に納得させられてしまうリアルさ。
おすすめの一冊です。
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