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舞台感想 NDT1 ネザーランド・ダンス・シアター プレミアム・ジャパン・ツアー2024

NDT1 ネザーランド・ダンス・シアター プレミアム・ジャパン・ツアー2024を見てまいりました。
NDT1は、オランダのコンテンポラリーダンスカンパニーです。世界的にも人気の高いダンスカンパニーで、気鋭の振付家が発表する作品が注目されています。

でも、私、コンテンポラリーダンスというのがよくわからない。
でも、記憶に残る作品もある。
コンテンポラリーダンスを見て、感動体験してみたい。
そう思っていたところで参加したのが1月に行われたこちら

愛知県芸術劇場 ラーニングプログラムNDT1 映像で見る世界のダンス|おとぼけ男爵 (note.com)

愛知芸術劇場の芸術監督である唐津絵理さんの解説で色々なお話を聞くことができたので、がぜん興味がわきました。
そこで、観に行ってみました。

私が観た回の演目は、
La Ruta  ガブリエラ・カリーソ
Solo Echo  クリスタル・パイト
One Flat Thing,reproduced  ウィリアム・フォーサイス

まず、La Ruta
舞台上に現れるのは、濃霧の中の夜のバス停。
ライトと音の使い方がとても印象的です。
ライトの動きと車の音だけで、舞台上に猛スピードで走り去る車が見えるよう。
ノイズのような人の話し声が聞こえます。何を話しているの? 理解できそうで理解できない言葉が聞こえるもどかしさを感じながら、バス停に現れる不気味な人々に目が奪われます。
魔法のように杖を扱う着物を着た人物、何かから逃げようとしている女、バス停の蛍光灯を直す作業員。事故にあった鹿、鹿からとりだした心臓を体に取り込む男、次々に人の頭を破壊する男。
演劇的な要素のあるダンスなので、ついストーリーを考えてしまいそうになるのですが、そこに物語はありません。
誰かの見ている悪夢の断片がつぎはぎされたような怖いシーンが繰り広げられ、光と音に襲われるような不快感を感じて、逃げ出したくなります。
不思議に蠢く肉体は、人の動きに見えない。何か別の生物の様で、そこだけ、時間や空間が歪んでいるかのような違和感を感じさせます。
でも、目の前で演じているのは紛れもなく人で、鍛え上げられた肉体だから見せることのできる普通ではない動きなのです。
作品の不気味さ、怖さから逃げたくなる不快感と
鍛え上げられた人間が表現する迫力に感服する気分が
自分の中でせめぎあっていて、
怖い、うるさい、嫌だ、帰りたい、でも観たい……っていう感じで時折睡魔に襲われたりもして、なんだか不思議な感じで観終わりました。

なんか、凄いもの観た感じはするのだけれど、人に勧めたいとか、もう一度観たいとかはなくって、ただただ、演者の熱量が凄いなあって感じました。

ま、観客がどう感じるかは観客の自由だから、私はこう感じたっていうことです。

さて、休憩をはさんで次の作品は、
Solo Echo
ライトの中には、雪のようなものが降り続いています。
その中で、体にぴったりした同じ衣装のダンサーが、繋がったり、離れたり、コマ送りの写真のように動いたりします。
とても、抽象的で彼らが何を意味しているのかはよくわかりません。
人であるのか、心であるのか……
ただ、何かが起こって、何かを行動しているように見えます。
でも、観終わって私は、「誰かの人生だったのかしら?」と感じました。
この世に生まれ、様々な経験をして、様々に戦って、人と繋がって、別れて、精神的にも物質的にも色々なものを手に入れて、それをまた一つづつ手放して、最後は一人で消えていく。
そんな、誰かの人生を見ていたようにも感じました。

そして、休憩をはさんで最後の作品。
One Flat Thing,reproduced
これは新作ではなく、人気のある作品だということでしたが、なるほど人気があるのがわかります。
私は、見ていてこれが一番面白かったです。
ダンサーたちがガーっと音をたててテーブルを一面に並べる。
そして、そのテーブルの上で、下で、様々なダンスが繰り広げられます。
最初は二人、徐々に人数が増えて動きも様々。
規則正しいカオスって感じが、とても面白いです。
振り付けはあるのだろうけれど、まるでアドリブのように見える部分もあって、その日、その日で変わるのではないかと感じられるほど。
ダンサーの熱量が凄まじく感じられて、あっという間に終わってしまいました。

これは、一度見てみればっておすすめしたい作品でした。

公演後、唐津絵理さんとNDTの芸術監督エミリーさんとダンサーのお一人のポストトークを聞くことができました。
Solo Echoのカーテンコールで1人、One Flat Thing,reproducedのカーテンコールで3人のダンサーに、エミリーさんが花を渡したんですね。
何なのかな?って思っていたのですが、ポストトークを聞いてわかりました。その4人のダンサーさんは、今日が最後の公演で、退団なさる方だったのです。
宝塚の千秋楽のお花渡しと一緒じゃないかあ~ 感動的な日に観劇したのだな~
唐津さんによると、退団するダンサーも他のメンバーもいつもより熱量が凄かったとのことでした。そうだよね。このメンバーで踊れるのが今日で最後って思うと、特別な気持ちになるだろうなと思います。
特別な一日の観客席にいられたのは、ちょっと嬉しいです。
ポストトークでも色々なお話が聞けて、楽しかったです。
エミリーさんが、コンテンポラリーダンスの楽しみ方として「目で聴いて、耳で見る」とおっしゃったのが面白かったです。
確かにストーリーを追うわけでもなく、揃った群舞を見る訳でもなく、ダンサー一人一人の肉体の奏でる音を聴くっていう感じがしたから、観客も五感で感じるのが、一つの楽しみ方なのだろうなって思います。

コンテンポラリーダンスがわかったとは思わないけれど、観て良かったとは思います。
なかなか、面白い体験をさせていただきました。









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