
舞台感想 宝塚歌劇 雪組公演 FORMOSA!!(フォルモサ)
縣千さん主演の雪組公演フォルモサを観てまいりました。
完全ネタバレありの舞台感想です。ご注意下さい。
公式発表のストーリーはこちら
西洋奇譚
『FORMOSA!!(フォルモサ)』
-空想世界の歩き方-
作・演出/熊倉 飛鳥
遥か彼方、東洋に浮かぶ島・フォルモサ⸺、それは西洋人にとって未知なる土地。しかしフォルモサ人を名乗る謎の男“ジョルジュ・サルマナザール”の出現によって、その印象が一変する…。
18世紀初頭、偽修道士としてヨーロッパを放浪していたジャンは、旅で出会った“最悪の聖職者”イネスと共に一攫千金を企む。それは、フォルモサ人修道士としてイギリスへ渡り、ロンドン主教を騙して多額の施しを受けるというものであった。二人は語学と知識を駆使して完璧な架空の国・フォルモサを創り上げ、“ジョルジュ・サルマナザール”を騙ったジャンはロンドンの知識階級のサロンに姿を現す。瞬く間に議論が巻き起こるが、二人の類まれなるペテンの才能は、イギリス大衆の心を掴んでいく。やがて、地理学者を父に持つ娘・シェリルを仲間に加えたジャンは、完全なる“フォルモサ誌”の作成に取りかかるが…。
18世紀に実在した、究極の偽書「台湾誌」。その作者ジョルジュ・サルマナザールを主人公に、その名声の高まりと顛末をコミカルに描くミュージカル作品。
あがた君が演じるジョルジュ・サルマナザールという人物は実在の人物で、「台湾誌」という書物も実在するんですね。
日本訳されたその本、図書館で借りてきたのですが、なかなかのボリュームの本でして、結局斜め読み、飛ばし読み。
頭少しと解説を読んだ以外は、ほとんど読んでいない……
でも少し読んだだけでも、権力者への歯の浮くようなお世辞とか、自分に向けられた疑いに言い訳する手法には狡猾さを感じますね。

ちなみに、表紙の絵は、悪魔信仰の章に出て来るフォルモサの悪魔の像。
フォルモサでは、天災が起こると悪魔の像の前で、1日目には果物や酒を燃やし、それでだめなら2日目に獣を生贄にし、それでもだめなら3日目に卑しい身分の子供を2,3人生贄にする。と書かれています。
でもそれに続けて、地震も嵐も3日くらいでおさまるので、子供が生贄になることはめったにないとも書かれています。
なんとなくね、人間の子供を生贄にするなんて!本当か?って疑われた時の為の言い訳も書いてあるのかな~って感じもしますよね。
舞台の方では、2万人の生贄云々ってあったから、どこかにそういう凄い話も書かれているのでしょうが、斜め読みの飛ばし読みで、読破していないのでわかりません。
フォルモサ人の服装とか、建築物とか、文字とか、ちゃんと絵入りです。
嘘もここまでくれば、賞賛に値するんじゃないでしょうか。
舞台はサルマナザールを主人公にして、実在の人物や史実をまぜながら、熊倉先生が作り上げた空想の物語です。
だから、本の内容や、史実なんかとは違っている部分も大いにあるのだと思います。
でも、物語はスッキリとまとまっていて、善悪も分かりやすいです。
空想癖のあるサルマナザールがイネスにそそのかされ、利用されて詐欺師となります。それを見破ったのは、地理学者のオズワルド。その娘シェリルはサルマナザールに興味を持って近づきます。
思いのほか詐欺が上手くいき、サルマナザールは罪悪感を感じますが、イネスはサルマナザールが詐欺から手を引けないように、追い詰めていきます。そして、女王からナイトの称号まで頂けることに。
でも、ナイトの称号を授けられる最中、天文学者ハレーがサルマナザールの嘘を女王の前で暴くのでした……
サルマナザールの空想の物語も並行して進んでいくのもファンタジックで、まさに「西洋奇譚」です。
物語はスピーディに進んで、楽しいです。
トルコかエジプトかギリシャか?みたいなオリエンタルな衣装の人物が登場すれば、怪しげなコーヒーハウスのメイドたちは地下アイドルのよう。ロンドンの女王や貴族、司教の姿、このカオスな感じがなんとも、楽しい。
詐欺に罪悪感を感じているように思えるサルマナザールが、この大嘘の本を書き上げようとしているっていうのはちょっと「あれ?」って気分にはなったんだけど、これは誰かを騙すつもりではなく、空想物語を書き残したいっていう感じなのかな?って思いました。
嘘がバレたサルマナザールは自殺してしまったのか?
と思わせておいて、ガリバー旅行記のゴーストライターになっていたというラスト。
これはやりすぎなんじゃない?と思わなくもないですが……
自殺っていう悲惨な最期じゃないところが、宝塚ファンをホッとさせるから、まあ、もう、これはこれで良しって感じです。
あがたは安定感のある演技で、安心して観ていられます。
サルマナザールの相手役は、はばまいちゃん演じるシェリルというよりも、かせきょー演じるイネスって感じです。
この二人の芝居がなかなか濃くって面白いです!
かせきょー、悪い空気感の出し方が上手いし、ビジュアルも素晴らしい。
何といっても、凄い存在感! あがたの影が薄く感じられるほど……
サルマナザールの根底にある白い善良な部分が、かせきょーの極悪の黒いパワーに押されるっていうか……
いやはや、かせきょー恐るべし。
さんちゃん演じる空想世界の革命家も良いんですよ。現実の人でない感も良く出ていました。
雪組の若手男役はビジュアルも演技も素晴らしいなあって思います。
あとは久城あすさんのオズワルド、妃華ゆきのさんの女王が作品を引き締めていました。
若手の演出家が作る、宝塚的ではない作品(トップと娘役のロマンスが薄い)は、それはそれで良いと思うんですよね。
でもちょっとはばまいちゃんは、かわいそうだったかな~って感じます。
雪組娘役ちゃんは、ダンスがとっても良いですね。
みんな、がんがん踊っていて気持ちが良い。
ただ、歌が……弱いような気もします。皆、少しづつ歌うんだけどね、それがそれぞれに……皆、頑張れ~
フィナーレもあって、楽しめました。
フィナーレだと久城さんや眞ノ宮さんのダンスに目がいっちゃう。これがお芝居とは別な魅力で、たまりませんね。
ちゃんとフィナーレつけてくれてありがとう!
退屈しない作品でした。
物語はシンプルだけど、心に響くセリフもあって良かったですね。
オレオレ詐欺、投資詐欺、サポート詐欺。
毎日テレビから流れる詐欺のニュースを聞いていると、時代は流れても人を騙してお金を巻き上げようとする輩がいなくなりはしないですね。
時代が変わっても、手を変え品を変え、詐欺は続いていく。
詐欺師の作り上げる世界を信じたいと思ってしまう人の心の弱さやずるさが巧みに利用されて詐欺師たちを太らせているのかもしれない……
自分にとって都合の良いことに飛びつかずに、注意深くならなくっちゃと思ってしまいます。
さて、今週末は不時着!
どんな感じでしょうか? それも楽しみです。
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