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舞台感想 宝塚歌劇雪組公演 海辺のストルーエンセ

観劇を待ちかねておりました。
「海辺のストルーエンセ」
珠子先生の作品ということで、ぜひ見たかったのですよね。
前作「冬霞の巴里」はチケットが手に入らず、配信で観たのですがその世界観にやられちゃいました。
なんとも、私好みの世界観なんですよね……

今回は、デンマークが舞台。
プログラムにも書かれていましたが、温かみのあるものが多い印象ながら、気温が低く、快晴の日が少なく、白夜と極夜があり、海に近い首都。
北欧神話の神々は争い、滅びと再生を繰り返す。
ロココファッションの貴族が歩く宮殿を潮風が通り過ぎたら……
だって
なんだか、珠子先生のイメージを読んでいるだけで、ワクワクしてしまう。
スタッフの方々と一緒に作品を作り上げることを楽しんでおられるようですが、きっとスタッフの方々も先生が語るイメージにどんどんアイデアがわいてくるのではないでしょうか。

今日はうっかりオペラを忘れてしまい、全景を鑑賞したのですが、この作品は全景で観るのがとても良かったと思います。
シアタードラマシティというこじんまりとした劇場ですが、シンプルな舞台装置とライトの効果だけで、とても奥行きが感じられて。忙しくオペラを動かしていたら、この感覚はなかったかもしれません。

今回の海を背にしたあーさの画像が出た時、今一つピンとこなかったのですが、プログラムの中のメガネあーさや裏表紙のセクシーあーさや、珠子先生のおみ足に抱きつくあーさの画像は、うほっ!と声が出る美しさ。
やはり、あーさはお美しい。

ネタバレありの舞台感想です。

ドイツの町医者ストルーエンセは、古臭い考えの病院をクビになるが、その美貌を武器に怪しげな錬金術を使う医師として貴族に人気がでた。だが、本当は科学や理論を信じる現実主義者だ。そして、特権階級の貴族のあり方を批判的に見ていた。
力を手にする為に、デンマーク王クリスチャンの治療にあたり、専属医として信頼を得る。だが、クリスチャンの妻で王妃であるカロリーネと惹かれあってしまう。
徐々にストルーエンセの提案する政策は過激になり、孤立していく……

物語としては、野心に溢れる青年ががむしゃらに目的に突っ走り自滅してしまう物語なので、ダークヒーローよりのキャラクターだと思います。でも、自分の信じる道こそ正義であると信じ、自分の考えと違うものを切り捨て、独裁的になる子供っぽさは純粋にも見えます。一途なガキ大将が政治をしているよう。その一途さは許されない恋でも同じです。あまりにも周りが見えない姿は、あえて自ら破滅に向かおうとしているかのように見えました。

珠子先生の構成は好きだなと思います。
宝塚ファンも、初めて観る人もどちらも楽しませることができる、スピーディーな展開だと思います。
海辺の風景だけで、ヨハンの現状や、厳しく育てられたクリスチャンの生い立ち、お転婆なカロリーネの生い立ち、腐敗した王室と権力争いを的確に見せたかと思うと、
次は、錬金術師のような怪しげな病院を、華やかに見せてしまう。
そして、酒場でクリスチャンの暴君ぶりを見せて「決闘」の伏線をはる。
すべての場面場面に無駄がなくて、飽きさせない。

舞台上の鬼ごっこって演出はよくあるのですが、私はどうもこれが苦手なのです。大抵、ドタバタするだけであきてしまう。
でも、今回のヨハンとカロリーネの追いかけっこは、活動的なカロリーネの本質を引き出すために必要なシーンだったし、夏至祭でのお遊びとしての鬼ごっこはそのバカさ加減とその後のヨハンの真面目な政治介入の落差を感じさせ、それがまた権威というものに砕かれる流れとして必要な場面だったので、上手く作られているなあと思いました。

仮面舞踏会ではロミジュリを、劇中芝居ではめぐりあいをオマージュしたような既視感があってファンは嬉しいし、宝塚初見の方は単純に楽しいと思うので、そこも考えられているなあと感じました。

よくできた作品は演者の方の役へののめりこみ方も良くなるように思えます。どなたも、すばらしい演技でした。もう、全員良い!
特に愛すみれさんのユリアーネが醸し出す「黒い権威」の迫力は素晴らしかったです。もう、絶対この人には勝てないと思わせる存在感でした。

実在のストルーエンセの人物像をウィキペディアで読むと、こんなに美しい話ではなさそうなので「決闘」という伏線を貼っておいて、最後に王によって成敗されるのは物語として後味良かったと思います。

そして、フィナーレ。
さっきまでの敵味方が、観客を煽る美男美女に変貌してしまうのが宝塚の素晴らしさ。目の保養。
あっという間の、フィナーレでした。

今日で千秋楽。
今日は花組の新人公演も行われたようで、徐々に世の中が元に戻りつつあるように思えるのがなによりも嬉しいです。





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