オートミールよ、友達になろう
定番の朝食ってなんだろう。
私の実家は朝食が用意されている家ではなかった。
とはいっても、まったく食べ物がないわけではなくて、朝食用のパンやシリアルはちゃんと買ってもらえていた。
母親は朝早くから、家事に父親のお弁当作りに世話、自分の身支度を2時間ほどで終えなくてはならず、「いわゆる朝食のかたち」として何かを用意する余裕はなかったに違いない。
だから、「いわゆる朝食のかたち」として用意されていなくても、不満を抱いたりしたことはなかった。
昔から、自分の食べたいものは自分で決めたい傾向があったので、気分でないものを食べるよりよっぽどよかった。
思春期は過度なダイエットに明け暮れていたので、なおさら。
食べ物はちゃんとあったし、食べちゃだめなものも指定されなかった。
金銭的な都合であまり食べられないものはあったけれど(おもに外食やお取り寄せ)、これは経済的に自立した今もなんら変わらないので、少ない給料で生きようと思えば当然のことだったのだと、あとになって知った。
そして、自立したからこそわかる「いわゆる朝食のかたち」の呪い。
多くの場合、母親に求められるその理想のかたち。
共働きが主流の時代に、まったく即していないそのかたち。
私は現在、妹と同居している。
家事は分担していて、食事は私が用意している。
自分が食べたいものを食べたい、作りたいのは大人になっても変わらず、とくべつ妹が何を食べたいかということはあまり考えずに毎日の食事を作る。
私は基本的に、文句があるなら食べなくていいと言ってしまうタイプ。
これは相手に圧力をかける行為で、誉められた行為ではない。文句を言わず食べてくれる相手だからこそ振舞える横暴といえる。
その代わりに、妹が担当している家事には一切の口を出さない。
その家の、それぞれの担当者の意思を優先していいという考え方。
一人で暮らすより、他人と暮らす方が何倍も大変。
家族だから許される、という考え方には違和感があって、同居するのが家族だろうが友人や恋人だろうがそれ以外の関係だろうが、気遣いや相手の意思を尊重することは不可欠だ。
なのに、しみついた漠然とした役割に苦しめられることは、往々にしてある。
母親も苦しかっただろうし、自分の食べたいものを自分で用意したい私ですら、自分で決めた役割(=食事担当)が苦しくなる。
自分以外の面倒をみることにイライラして、疲れて。
だから、せめて朝食くらい、「忙しいから」というもっともらしい理由をつけて、「いわゆる朝食のかたち」を用意をしないと決めた母親の選択は正しかったのだと思う。
でなければ、つぶれてしまう。私の場合は「体調がすぐれないから」を最大の理由にして、食事を用意しない日をもうけている。
『自分一人の食べるものなら、適当に冷蔵庫にある納豆や卵で済ませても問題ないのに』
こういう考えが頭に浮かんだら、最近の私は食事作りを休むようにしている。
妹には食べたいものを買ってきてもらい、私も自由に食べたいものを食べる。
……ああ、そうか。
こうやって綴ってきてわかったことがある。
私って、本当に何でもかんでもを、自分を自由から遠ざける「縛り」だと考えてしまうのか。
食事の用意も、そこに自分以外の誰かのためでもあるという事実が含まれた途端、自分の食べたいものを自由に食べることからは、本当の意味で外れてしまうのだ。
妹の食べたいものを考えずに作っていると思っていたけれど、十分考えていたのかもしれない。
もう少し品数を用意しなければお腹が空いてしまうかもな、あまり辛すぎるものは控えないと、この食材や味付けにしたらちょっと文句を言われてしまうな、とか。
だからなのかもしれない。
疲れていても、体調が悪くても、朝食の用意が一番嫌でなく、ラクだと感じるのは。
一日の食事の中で、本当の意味で、妹の存在を意識しなくてもいいのが、朝食なのだ。なぜなら妹は朝食を食べないから。そして、私が朝食をとっている時間はすでに出勤していて家にいない(今更だけど、私は夜勤帯で働いているので、妹ととる食事は夜のみだ)。
自分のためだけに、食事を用意できる。食事の用意を急がなくていい。極限まで疲れていたら、食べずに早々に布団に入ってもいい。
自由だ。
そんな自由の中で、私は最近オートミールに挑戦している。
これは間違いなく、夕食では使えない食材の一つ(私だけしか食べないから)。だから、ここぞとばかりに朝食で、美味しいオートミールの食べ方を研究している。
もともとは体型維持のために取り入れようと始めたのだけど、初っ端に挑戦した牛乳やヨーグルトを使った「オーバーナイトオーツ」が苦手すぎて出鼻をくじかれた。
ちなみに、オーバーナイトオーツとは、オートミールを牛乳や豆乳などに浸す、あるいはヨーグルトに混ぜるなどして、一晩(8時間くらいが目安?)寝かせ、食べる際にお好みで果物や蜂蜜などをトッピングして食べる方法らしい。
そんなオーバーナイトオーツとは仲良くなれなかったけれど、せっかく買ったし、お通じがよくない、甘い物やパンが好きで普段から糖質過多な人間としては、なんとしても朝食にオートミールを取り入れたい。
絶対あきらめないぞ……と、なかば意地になって毎日オートミールと向き合っている。
今のところ、お茶漬けの素を使ってさらさらと食べるのが一番美味しい。飽きてきたら、次は鶏がらスープの素としょうがチューブを加えてこれまたさらさらと食べる予定だ。
毎朝飲んでいるトマトジュースにコンソメも美味しいはず。
個人的に、オートミール+乳製品+蜂蜜、というデザート感覚の食べた方は合わなかったけれど、継続の活路は見出した。
「しょっぱい系オートミール」だ、と!
でもたまには自分の心からの欲求に従って、グラノーラ(糖質カット)を食べようと思う。それでこそわがままな私である(開き直った顔)。
おしまい!
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