映画「流浪の月」 そこにある生きづらさは可哀想じゃない。
公開前からずっとずっと気になっていた映画「流浪の月」を映画館に観に行ってきました。
極力ネタバレにならないよう、感想だけを綴りたいと思います。
まず、はじめに思ったのは、出演俳優陣の演技と思わせない演技力の高さ。
文は文、更紗は更紗、亮は亮で、ただそこに実在している。
というような印象。
話自体は決して明るいものではないし、所謂ラブストーリーということでもない。
昔、更紗(広瀬すず)を誘拐した犯人が文(松坂桃李)で、15年後に再会。その時、更紗は亮(横浜流星)と付き合っていて・・・というストーリー。
歪んだ恋愛話なのかなと思いきや、そんな一言では片付けられないそれぞれの生きづらさや葛藤や、そうなってしまった背景があり、大事なことや本音を伝えられなかったがあまり、自分や相手を苦しめてしまう。
泣く映画という事前情報は持ち合わせていなかったので、ハンカチを持たずに入ってしまったことを後悔する羽目になりました。
(ちなみに一緒に行った友達は、何で泣いてたの?のリアクションだったので、そもそも私が感情爆発、涙腺ゆるゆるなだけだったかもしれませんが)
誰しも人に打ち明けづらいことや、生きづらさを感じることがある。
それは私もそうだった。
映画では、文と更紗が世間から残酷な目を向けられる立場にいたけど、でも私は二人に「可哀想」という感情は湧かなかった。
「恋愛感情」ではないかもしれないし、世間一般的に言われる「愛」ではないかもしれないが、お互いが、相手の過去や生きづらさを知って、それを受け入れていたからなのかなぁと思った。
静かに、でも、しっかりと生きていく様は、弱さではなく強さに見えた。
個人的には「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない。」のセリフが良かった。
「更紗は自分だけのものだ」としないところに、文が小児性愛者ではないということを表していたと思うし、他にもそう示唆するシーンがいくつかあった。
それから、更紗のバイト先の店長のセリフも良かったなぁ。
150分という長尺の割には、その長さを感じなかった映画で、原作も読んでみたいなぁと思うくらいには、満足した映画でした。