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見ず知らずの人と10分間歩いた話。
見ず知らずの人と
昼下がりの町を
10分間歩いた日のこと。
『あのー、すみません。。ちょっとお尋ねしたいんですが、ハローワークってどこにありますか?』
自転車に乗った70代くらいの女性から道を尋ねられた。
ちょっとそこのコンビニに行くのに、“どっちの道で行こうかな”とほんの数秒考えていたところだった。
私も道に詳しいわけではないが、この近くのハローワークなら分かる。
「えっと、その道を右へずーっと歩いて、そしたら目印になるお店○○があるので、そこの裏手になるんですけど〜」
目的地の方を指差し、案内しながら思った。
確かに最寄りのハローワークはなかなか分かりにくい所にある。
加えて、大きい看板など出ていない気がする。
そういえば、私も前に迷ったことあったなぁ。。
道を尋ねてきた女性は
『そこをずっと右ですね、うんうん、で、そこを入って・・・ほぅ。』
分かっているのか分かっていないのか心配になる表情。
携帯を忘れてきたのか?いや、携帯を持っていたとしても年齢的にスマホでマップ検索も難しいように思われる。
紙に書いて説明したいが、コンビニに行くだけだったからメモ用紙もペンも持ち合わせていない。
うーん。。
「もしよろしければ、一緒にハローワークまでご案内しましょうか?私もその辺りに行く用事があるので。」
咄嗟にそう言っていた。
女性は少し遠慮がちに
『いいんですか?そうしていただけるなら助かります。』
と言って、お辞儀をした。
多分10分もかからないだろうハローワークまでの道を、見ず知らずの女性と歩くことになった。
横には、まだ不安げな表情を浮かべる女性。
何か話し掛けよう。
「この辺りにお住まいなんですか?」
聞いたはいいが、この辺に住んでるならハローワークの場所を聞いてくるはずない。質問ミス!と自分に突っ込んでいたら
『いえ、実は、三日前に岡山から引っ越してきたばかりなんです』
『まだ、こっちの言葉も全然分からなくて・・・』
おお!岡山県!!
岡山なら、standFM(音声配信アプリ)で出会ったお友達【HELLO FROM HELL】の二人がいる県じゃないか!!!
と、ここで一気に、見ず知らずの女性に対し親近感を覚える私。
こっちの言葉が分からないって本当にちょっと離れるだけで、方言やイントネーションの違いで言葉って伝わりにくくなるんだなぁ。
確かに私もstandFMで他県のお友達の言葉分からないことあるもんなぁ。
しかもこのお方、(失礼だけど)結構ご高齢っぽいし、この年齢で知らない土地に引っ越すのって大変だろうなぁ・・・。
私だって最初全然分からなかったしすっごく不安だったなって頭の中でぐるぐる考えていた。
ハローワークへ向かう道中で雑談していると、引っ越したお家はここからもうちょっと離れた所で、女性はハローワークを大いに通り過ぎ、町をぐるっと一周していたということが分かった。
そりゃあ、自転車でその距離を走っていたら疲れるよなぁ。
しかも知らない土地で精神的にも疲れただろうに・・・。
「ここのお店は24時間営業で〜。」
「この辺りはお店が集中しているので割と便利ですよ。」
『あー、こないだ車で来たかもしれない。車で通っても道って覚えないもんですね。』
なんて、しばらく雑談しながら歩いていると、目印のお店に到着。
「この裏手にまわるとハローワークが見えてきますよ」
『いやぁ、本当にありがとうございました。ここで大丈夫です。』
「ちょっと分かりにくいけど、多分近くに誘導員さんも立っていると思いますよ。」
『ありがとうございました。本当に助かりました。』
さっきまでの不安げな表情は消え、ホッと安心した表情になっていた。
女性は何度も何度も頭を下げて、また自転車に乗りハローワークの方へ向かって行った。
“お気を付けて〜”
と見送りながら、帰り道大丈夫かな?と心配になったけど、ハローワークの人か、また他の人に聞くだろうと思って、私は来た道を戻ることにした。
私もよく旅先や知らない土地で、目的地までマップじゃ辿り着けない時、すぐに地元の人に道を尋ねる。
同行者も驚くくらい、すぐ、迷いもなく。
私は、見ず知らずの人に声を掛けることに抵抗がない。
なぜならその方が早いし、確実だから。
そしてそんな時は大抵、100発100中で皆さん親切に教えてくれる。
私も、目的地の途中まで一緒に連れてってもらったこともある。
してもらった親切を、私も繋ぐことができてよかったなぁと思った。
それから、あの女性がこの町に早く慣れて、この町の人を、そしてこの町を、好きになって欲しいなぁと願った。
ちょっとだけ遠回りしたついでにスーパーに寄り、好きなフルーツを買って、行く予定だったコンビニのことはしっかり忘れて帰宅。
私らしい。
見ず知らずの人と
昼下がりの町を
10分間歩いたら
自分がしてもらった親切を思い出して
改めてその親切に「ありがとう」と思えた日だった。