私の考える企業戦略#15:株式会社はせがわ

1. 企業
 株式会社はせがわ(https://corp.hasegawa.jp/about/outline/)

2. 結論
 ⑴ 全般
  ① 他業者との連携、”ついで買い”を促し取込む。
  ② 中国・四国地方への注力。取込みきれていない顧客の獲得へ。
  ③ 極力在庫を持たず、受注製造業態へシフト。
 ⑵ 各事業
  ① 仏壇仏具事業:現状維持。
  ② 墓石事業:国内産加工品中心の現行路線から海外産加工品の比率を増やしていく方向へ。
  ③ 屋内墓苑事業:現状維持。

3. 現状サマリー(*1)
 ⑴ 市場
  ① 宗教用具小売業 市場規模(単位:億円)
   ・ 3617(’97)→2705(’02)→2557(’07)→1648(’14)
   ・ この17年で市場規模は50%以上縮小している。
   ・ 要因としては①人口減少(少子高齢化)②長寿命化③単身世帯の増加④商品単価の下落
    - ②について:男78.6歳 女84.7歳(’97)→男80.8歳 女87.1歳(’10)
    - ④について:購入商品の小型化・簡素化により単価が下落している
  ② 石材(墓石)業 市場規模(単位:億円)
   ・ 4500(’00)→2500(’15)
   ・ この15年で市場規模は45%程度縮小している。
   ・ 要因としては上記①に類似すると思われる。
   ・ 市場の嗜好として、継承しなくていい墓(永代供養)を求める声が増えている。
     その他にも、一代限りの夫婦墓、パートナー墓というのもある。→ ニーズが多様化している。
   ・ その他、墓じまい(遺骨を移して現行の墓を片付ける)へのニーズも一定数認められる。
   ・ 石については、国産か海外産(中国など)で価格帯が異なってくる。
     業界としては海外産の占める割合が大きい。
 ⑵ 自社
  ① 1929年に仏壇仏具販売業にて創業、66年設立。東京に本社を構えつつ、全国125店舗を展開。
  ② 事業内容は「仏壇仏具事業」「墓石事業」「屋内墓苑事業」が中心。
   ・ 仏壇仏具事業:仏壇仏具の販売(海外協力工場あり。創業〜)
   ・ 墓石事業:  500ヵ所以上の霊園や寺院墓地に顧客を案内し墓石を販売(97年〜)
            業界においては海外産が主であるところ、国内産加工品を注力し他社と差別化
   ・ 屋内墓苑事業:寺院が所有する屋内墓苑の受託販売(09年〜)
      *屋内墓苑:遺骨を納めた厨子を自動で呼び出せる搬送式の納骨堂
  ③ 販売店舗としては銀座・福岡にそれぞれ本店を設置している。(福岡は創業の地)
  ④ 業績は以下のとおり。(単位:百万円)
   ・ 仏壇仏具事業:12,954(’15)→12,798(’16)→12,965(’17)
   ・ 墓石事業:  5,241(’15)→5,226(’16)→4,856(’17)
   ・ 屋内墓苑事業:839(’15)→1,005(’16)→1,179(’17)
   ・ 売上高(全体):19,401(’15)→19,378(’16)→19,412(’17)
   ・ 営業利益:  768(’15)→888(’16)→928(’17)
     * 営業利益率:3.9%(’15)→4.5%(’16)→4.7%(’17)
      - 営業利益が低いのは販管費(特に人件費、貸借料、その他)が大きいため
  ⑤ イオンと提携し、イオンのEC販路も活用している。
 ⑶ 競合
  ① 仏壇仏具事業者(金宝堂、伊藤仏壇など)、墓石事業者(湘南造園、山崎石材など)で複数あり。
  ② 各地域に根付いた事業者も多い。
  ③ 一部事業者はAmazonなどEC販路を活用している。
  ④ イオンについても自社はせがわをはじめ、複数の事業者と提携し、仏壇仏具を販売中。
 ⑷ 強み
  ① 90年にわたる仏壇仏具事業での実績と経験値に裏付けされたブランド力
  ② イオンを活用したEC販路
  ③ 全国125店舗に展開している対面販売ネットワーク
 ⑸ 弱み
  ① 関東92店舗に対して西日本地区が26店舗と少ない
  ② 収益性が低い(営業利益率が5%を切っている)
 ⑹ 機会
  ① EC販路
  ② 西日本地区
  ③ ショッピングセンターなどのテナント出店
  ④ 墓石へのニーズの多様化
  ⑤ ICTを活用した新たなサービス
  ⑥ 屋内墓苑事業
  ⑦ 既存事業に代わる、供養に関する新規事業
 ⑺ 脅威
  ① 少子高齢化や単身世帯の増加に伴う仏壇仏具・墓石への需要縮小
  ② 消費者嗜好の変化(供養への意識低下)
  ③ 墓石に対する国内産加工品の需要縮小

4. 問題点
 ⑴ 市場が衰退しているなかでは既存のやり方だけで成長を促進していくことが難しくなってきている。
 ⑵ 既存事業でまだ攻略できていないエリアがある。
 ⑶ 収益性(効率性)に改善の余地あり。

5. 課題設定
 ⑴ 新しい販売手法の検討
 ⑵ エリア戦略
 ⑶ 現行事業、特に墓石事業の方向性の見直し

6. 方向性
 ⑴ 全般
  ① 他業者との連携、”ついで買い”を促し取込む。
   ・ 保険事業者、家具製造・販売事業者、不動産・老人ホームなどと連携し、
     保険+はせがわ、家具+はせがわ、のように”ついで買い”を促し取込む。
  ② 中国・四国地方への注力。取込みきれていない顧客の獲得へ。
  ③ 極力在庫を持たず、受注製造業態へシフト。
   ・ 在庫はショールーム向けを主とし、販売用在庫はなるべく縮小する
     (長期在庫によるコスト増を回避するため)
   ・ 上記⑴に関連し、時間に余裕をもって顧客に発注いただくことができれば、
     多少の製造期間を考慮しても、納品は問題無しと考える。
 ⑵ 各事業
  ① 仏壇仏具事業:現状維持。
  ② 墓石事業:国内産加工品中心の現行路線から海外産加工品の比率を増やしていく方向へ。
  ③ 屋内墓苑事業:現状維持。

ーーー参考資料ーーー
*1:
・経済産業省『商業統計』
 http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2.html
・厚生労働省『平均余命の年次推移』
 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/sankou02.html
・JB PRESS『縮小市場で売上拡大! 老舗石材店が実践したこと』18/6/7
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53211
・はせがわ『会社概要』
 https://corp.hasegawa.jp/about/outline/
・同上『事業紹介』
 https://corp.hasegawa.jp/about/business-guide/
・同上『IR資料』
 https://corp.hasegawa.jp/ir/library/
・Amazon『仏壇』
 https://www.amazon.co.jp/%E4%BB%8F%E5%A3%87/b?ie=UTF8&node=2220977051
・イオン『お仏壇・仏具』
 https://www.aeonlife.jp/altar/

以上