私の考える企業戦略#17:日本アジアグループ
1. 企業(事業)
日本アジアグループ(森林活性化事業) https://www.japanasiagroup.jp/service/05.html
2. 結論
⑴ 国内外需要の取込み、輸出スキームまでカバーした販売体制の構築
3. 現状サマリー(*1)
⑴ 市場
① 森林経営管理制度(森林経営管理法)
・ 適切な経営管理が行われていない森林を、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化し、
それができない森林の経営管理を市町村が行うことで、森林の経営管理を確保し、
林業の成長産業化と森林の適切な管理の両立を図ることを目的としている。
② 日本の林業について
・ 1955年以降、木材の輸入自由化が進み、日本の林業は衰退。
木材供給の自給率は94.5%(1955年)だったのが31.5%(2017年)まで低下。
・ 外国材のメリットである安価、大量のロット購入可能、に国内材がビハインドに。
・ 国内材が価格低下したこと、間伐などの経営管理に係るコストを回収することが難しくなり、
林業経営者の意欲も低下してしまった。
そのため、林業離れが加速し、森林放置が環境問題に発展してしまった。
③ 森林放置と環境問題
・ 荒廃してしまった森林は、公益的な機能を発揮できず、台風や大雨などで土砂災害を起こし易い
・ 二酸化炭素吸収の働きが低下し、温暖化防止機能も低下
④ 収穫期を迎えた日本の森林
・ 拡大造林政策(1957年〜)に伴う多くの人工林(1000万ha)が収穫期を迎えている
・ 収穫期を迎えると、伐採→植林→育林→伐採というサイクルをまわすことが必要
・ このサイクルをまわすためにも、国産材を積極的に利用し、需要を高めて、
カネを山に還元する必要有り
⑤ 日本の森林面積
・ 日本国土の7割(66%)を占める森林面積は約2500万haでこの40年間横ばい推移。
・ そのうち、1000万haが人工林(拡大造林政策に伴う)
・ 森林蓄積(森林を構成する樹木の幹の体積のことで、森林資源量の目安)が増加中。
そのため、使うべき森林資源が充実してきていることがいえる。
⑥ 日本の木材輸出
・ 2000年で81億円だったのが、2017年で326億円に拡大。
・ 中国・フィリピン需要が大きく増加しており、
2000年で8億円+4億円だったのが、2017年には145億円+74億円にまで増加している。
・ 韓国需要についても増加しており、
2000年で16億円だったのが、2017年には37億円にまで増加している。
・ 主要因としては日本木材の価格競争力。
⑵ 自社
① 国際航業株式会社を中心とする「空間情報事業」、JAG国際エナジー株式会社を中心とする
「グリーンエネルギー事業」、近代化林業を目指す「森林活性化事業」の3つの事業を展開。
② 森林活性化事業について
・ 2016年に森林プロジェクトチームが立ち上がり、今では
「森林の発掘」「森林の価値向上」「林業バリューチェーンの構築」を主に事業展開している。
・ 森林の発掘について
- 徳島県三好市を中心に四国で約2,000haの森林を保有し、
地理空間情報技術を活用しつつ、課題(所有者の高齢化、継承者不在、植林・育林の手間、
木材価格の低迷、地籍・境界不明確、非効率な生産体制)の解決に取り組んでいる。
・ 森林の価値向上について
- 森林を取得・集約化し、森林情報をデータ化、整備・解析することで価値を高め、
生産林への転換を目指す。
- 価値向上への取組としては、材積計測(レーザ測量)、境界確定作業、3次元地形データ作成、
集約化、情報化施業、スマート林業、i-Forestry、が挙げられる。
・ 林業バリューチェーンの構築について
- 継続的な森林整備の実施から、原木生産活動(間伐・主伐)、木材/製材加工・販売、
森林ファンド組成/CO2排出権創出、森林所有権譲渡取引まで、活動展開している。
・ 関連事業者は以下
- JAGフォレスト株式会社:森林の経営および売買、木材等の生産、加工、販売等
- 株式会社坂詰製材所 :新潟県有数の製材/プレカット事業者
・ 日本アジアグループとしては次のとおりにリソースを割り当てて事業展開している
- 森林取得:
日本アジアグループ(資金調達、森林保有)
- 林業(素材生産):
日本アジアグループ(森林経営計画、策定・実行)
- 森林資源の測量解析・保全:
国際航業(地理空間情報技術の活用)
- 製材・木材加工:
坂詰製材所など
- 国産材の利活用:
坂詰製材所/KHC(住宅市場)、国際航業(土木建築)、JAG国際エナジー(バイオマス発電所)
⑶ 競合
① 外国材(安価で大量購入可能なところが有利に働き、国内材よりも供給量が多い現状)
⑷ 強み
① 関連事業者も巻き込んだ、林業のバリューチェーン囲い込み事業を展開できる点
⑸ 弱み
① 国産材の販売、利活用におけるリソース
⑹ 機会
① 中国、フィリピン、韓国などのアジアを中心とした国内材の需要
② 日本における、使うべき森林資源の充実化
⑺ 脅威
① 国内材の価格競争力の低下
② 所有者の高齢化、継承者不在の進行
③ 森林事業における、間伐などの経営管理コストに対する採算の確保
4. 問題点
⑴ 森林業を活性化するうえでは国産材の販売体制(販路含め)を強化しておく必要がある。
5. 課題設定
⑴ 国産材の利活用フェーズにおける販売体制の強化
6. 方向性
⑴ 国内外需要の取込み、輸出スキームまでカバーした販売体制の構築
① 特に中国、フィリピン、韓国などのアジアを中心とした国内材の需要を取込む
② 商社、建築・ゼネコン事業者と連携しつつ、充実化した国内材の海外向け販路を確立する
③ 国内においては、ニトリやダイソーなど、安さを戦略に事業展開している家具メーカー等への
木材供給体制を構築し、スケールメリットをもって安価販売でも収益確保ができるようにする
ーーー参考資料ーーー
*1:
・林野庁『森林経営管理制度(森林経営管理法)について』
http://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/sinrinkeieikanriseido.html
・森林・林業学習館『日本の林業の現状』
https://www.shinrin-ringyou.com/ringyou/
・同上『日本の森林面積と森林蓄積の推移』
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_tikuseki.php
・同上『木材輸出額の推移』
https://www.shinrin-ringyou.com/export/total_sum.php
・農林中金総合研究所『木材輸出額が増加 38年ぶりの水準に』2018/03
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/nri1803re1.pdf
・日本アジアグループ『グループ事業紹介』
https://www.japanasiagroup.jp/service/index.html
・同上『森林活性化事業』
https://www.japanasiagroup.jp/service/05.html
以上