私の考える企業戦略#14:セリア

1. 企業
 セリア(https://www.seria-group.com/corporate/information/overview.html)

2. 結論
 ⑴ 大阪をはじめ、西日本での駅前出店を加速。人口集中エリアでの顧客取込み強化を図る。
 ⑵ SNSを中心に、購買意欲を促進する企画・イベントをPR。
 ⑶ ステーショナリーに代わる、新商品の開発、展開。

3. 現状サマリー(*1)
 ⑴ 市場
  ① 雑貨業界
   ・ 05年〜15年、堅調な増加傾向にあり、15-16年の雑貨業界の業界規模
     (主要対象企業12社の売上高の合計)は6,585億円となっている。
   ・ ショッピングセンターや商業ビル、百貨店、大型スーパーなどテナント誘致も多い。
   ・ 中小企業や個人店も多く、参入障壁が低い業界でもある。
    - その結果、多くのプレーヤーがひしめき、競争が激化する傾向にある。
   ・ トレンドの移り変わりも早いので、消費者のニーズを的確にとらえることがポイントになる。
  ② 消費者嗜好
   ・ 買ったことがある100圴商品ランキング
    - 1位「文房具(メモ帳・ペン・クリアファイルなど)」84%
    - 2位「キッチン用品」59%
    - 3位「収納グッズ」53%、
    - 4位「掃除用品(ゴミ袋など)」「食器・コップ(茶碗・お皿など)」それぞれ47%
   ・ 女性のほうが男性よりも複数の商品を購入している
  ③ 100円ショップの特徴
   ・ 小売業のなかでも特に”規模の経済”が働く業態とみなされる。
    - 店舗数を増やせば増やすほど安値で仕入れることができること、
      及び、売値が100円と固定されており値引き要請が皆無であること、
      以上より、事業規模が大きくなるほど単位当たりのコストが小さくなり収益性が高まり易い。
   ・ 店舗スタッフに専門性がそれほど求められないため、人件費を抑え易い。
    - 消費者からの質問に専門性が付加されないため。
   ・ 商品戦略において、既に他小売業で人気の高い商品を100円販売することで消費者を取込める
    - 他の小売店で販売している人気商品を、100円で売れるようにつくり変えて販売する事例。
    - たとえ原価がかかる商品であっても、容量を少なくするなどで原価を抑えれば利益が出る。
   ・ Amazonなど、既存の強力なEC事業者に代替されにくい
    - 100円販売ができない、またはできたとしても”100円販売のみ”はできないため
  ④ その他
   ・ インターネット通販の送料引き上げで、100円ショップにより割安感が出ている 
 ⑵ 自社
  ① 1987年設立、岐阜に本拠地を構える、国内2位の100円ショップ事業者。
  ② 業績について、ここ10年は増収増益で推移中。以下、直近の実績。
   ・ 売上高  :159,114百万円
   ・ 営業利益 :16,479百万円
   ・ 営業利益率:10.4%
   ・ 経常利益 :16,500百万円
  ③ 財務面について、売上原価率・売上高販管費比率ともにここ10年総じて低減を実現できている。
   ・ 売上原価率:56.8%
   ・ 販管費比率:32.8%
   ・ パート従業員の時給上昇等により、人件費は増加した。
   ・ 在庫回転率:6.38
  ④ 事業部門ごとにみると、直営店の売上高割合は継続して増加中で、かつ全体のほとんどを占める。
  ⑤ 商品別にみると、雑貨の売上高割合は継続して増加中で、かつ全体のほとんどを占める。
  ⑥ 直近の出店状況においては、半分以上がインショップ形態。
  ⑦ 店舗数は1,506、そのうち28%が関東甲信越、24%が東海北陸、16%が関西、
    13%が北海道東北、12%が九州沖縄、7%が中国四国地方になる。
 ⑶ 競合
  ① 国内大手ダイソーブランドを展開する大創産業が100円ショップ事業者では1位、
    2位がセリア、3位キャンドゥ、4位ワッツと続く。
  ② 比較結果は以下の通り。(順:売上高、全店舗数、営業利益率、特徴)
   ・ ダイソー  4,548億円、5,270、NA、商品品揃え◎・カード決済対応
   ・ セリア   1,591億円、1,506、10.4%、手作り=体験型を訴求・カード決済対応(一部)
   ・ キャンドゥ  688億円、994、3%、数十個単位でのネット購入可能・カード決済対応(一部)
   ・ ワッツ    494億円、1,263、2%、立地はスーパーが主・カード決済対応(一部)
 ⑷ 強み
  ① 高い収益性
  ② 独自路線での商品展開と実績(手作り=体験型を訴求)
 ⑸ 弱み
  ① 西日本における店舗数
  ② 海外での実績
 ⑹ 機会
  ① 他の小売店で人気の高い商品の摸倣(100円販売ができるもの)
  ② ネット購入の増加
  ③ インバウンド客の取込み
 ⑺ 脅威
  ① ダイソー他競合(100円ショップ事業者)の動き
  ② 無印良品他(生活雑貨事業者)の動き
  ③ 100円ショップでの人気商品であるステーショナリーが、
    ペーパーレスとスマホ・タブレットの普及により、需要が今後落ちてくる可能性あり。

4. 問題点
 ⑴ 西日本における出店・実績が弱い。
 ⑵ 主要商品(ステーショナリー)が今後需要頭打ち、減少の可能性がある。

5. 課題設定
 ⑴ 西日本での成長
 ⑵ 新たな主要商品の開発、展開。

6. 方向性
 ⑴ 大阪をはじめ、西日本での駅前出店を加速。人口集中エリアでの顧客取込み強化を図る。
  ① 訴求ポイントである「手作り=体験型」は変更せず、
    大手ダイソーには無い特徴をセリアの最大の強みとして、出店を加速していく。
  ② 出店場所としては駅前を主に設定。人目のつくエリアに出店し、知名度を高めていく。
 ⑵ SNSを中心に、購買意欲を促進する企画・イベントをPR。
  ① インフルエンサーを活用し、セリアの商品で「インスタ映え」など、
    情報感度の高い10〜20代の女性に対してウケの良い企画、イベントを発信し、
    セリア商品の購買意欲を高めていく。
 ⑶ ステーショナリーに代わる、新商品の開発、展開。
  ① スマホ、タブレットアクセサリーを強化。
    ペーパーレスとスマホ・タブレットの普及により、ステーショナリーへの需要が頭打ちになると
    予想されるので、これに代わる新たな需要(スマホ、タブレットアクセサリー)を強化する。
    デコレーションキットなど、100円で提供できるという点は変えず、商品企画・展開を強化する。

ーーー参考資料ーーー
*1:
・業界動向 SEARCH.COM『雑貨業界』
 https://gyokai-search.com/3-zakka.html
・@niftyニュース『買ったことがある100均のものランキング 1位は文房具、2位はキッチン用品』16/7/8
 https://news.nifty.com/article/item/neta/12225-160706007322/
・日本経済新聞『100円ショップ 出店攻勢 大手4社 18年度500店』18/5/19
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30694510Y8A510C1MM8000/
・Business Journal『なぜ百円ショップは百円なのに超高収益率?毎月8百点の新商品、その無敵のビジネスモデル』18/7/31
 https://biz-journal.jp/2018/07/post_24229.html
・セリア『会社概要』
 https://www.seria-group.com/corporate/information/overview.html
・同上『30年3月期 決算説明会』18/5/17
 https://www.seria-group.com/corporate/pressrelease/docs/20180517_3003_4Q.pdf
・大創産業『会社概要』
 https://www.daiso-sangyo.co.jp/company/prof_hist
・キャンドゥ『財務ハイライト』
 https://www.cando-web.co.jp/corporate/ir/BusinessHighlights/index.html
・ワッツ『2018年8月期決算と2019年8月期業績予想について』18/10/15
 https://www.watts-jp.com/ir/342/1/
・マネーの達人『100円ショップってどこも同じでしょ? いいえ、特徴を知ってうまく使いこなそう』18/3/15
 https://manetatsu.com/2018/03/119670/

以上