作業療法学生必見『段階づけ』とは
はじめに
こんにちは。作業療法士の加藤駿一です。
私は専門学校で教員として働いております。
様々な科目を担当させて頂いている中で、
今回は基礎作業学(木工や手芸など行う科目)に目を向けていきたいと思います。
※本記事は作業療法学生向けに記載しております。
作業療法に興味を持っている方もどうぞ。作業療法士の一つの視点が知れるかもしれません。
本題に入る前に作業療法では『様々な手段』を用いてクライエントに対し、治療・指導・援助を行います。
『様々な手段』とは何か?
リハビリと聞いてイメージに浮かびやすい、筋トレや手の訓練・歩く訓練…いわゆる身体運動を伴う活動があります。
他にも生活活動を行ったり、仕事に関する活動を行ったりします。今回の記事ではそれぞれの説明は割愛します。
作業療法の定義にあるように
つまり、作業という言葉は非常に広い範囲を指していることが分かります。
基礎作業学
さて本題の基礎作業学に入っていきます。
前述内容に加えて様々な手段の中には、手工芸等の活動(革細工、木工、陶芸、籐細工など)も含まれます。
作業療法白書2021では
「表 3—45 医療関連(身体障害領域)作業療法の種目と特に実施すべき種目」(P69)を見ると
2015年手工芸が3位でしたが、2021年には7位になっております。
この記事を読んでくださっている臨床の先生方の肌感覚的にも減っているのでしょうか?気になるところです。
まぁ、臨床現場でやっている(or やっていない)はさておき、
作業療法士としてあらゆる作業活動に含まれる各要素(特性、各工程、関節や筋の動き、必要な感覚、精神・心理面への影響、予測されるリスクと対策など)は理解できるようにならねばならないと私は考えます。
またその理解があることで、クライエントに対して本記事の主題である段階づけを行うことができると考えます。では、本題に入っていきたいと思います。
段階づけ
段階づけとはこのように説明されています。
作業療法士の役割…やはり大切ということが分かります。
難易度を上げる段階づけとしては
・工程数であれば 少ない→多い
・作業時間であれば 短い→長い
・意思決定であれば 少ない→多い
・姿勢であれば 安定→不安定
・運動に使用する関節であれば 少ない→多い
などが挙げられます。
ではそれを実際に作業に置き換えてみるとどうでしょうか…
例)木工
図の複雑さ
木工では、最初に図案を用いて作業を行うことが多いかと思います。
自由に作成するにしても自分なりに計画し作業に移りますよね。
もう既に段階づけの説明が上2行に入っています。「図の複雑さ」という観点から『シンプルな図案 → 複雑な図案』という段階づけを行うことができますね。
作業時間
また、何かしらの理由で元気がない時は活動に参加・実施できないこともありますよね。木工という作業はいつでも中断できる特徴があるかと思います。そういう意味では、対象者の心身状態によって作業時間を『短い → 長い』で段階づけることができるかと思います。
関節可動域
次は、体に目を向けてみましょう。例えばヤスリがけの工程で関節可動域などに視点を置くと机の角度によって段階づけができますね。
角度が0°と45°ではどうでしょうか?肩関節の可動域は変わりますよね。
つまり作業を行うために必要な関節可動域を『狭い → 広い』で段階づけられます。
筋力
最後に、筋力に目を向けてみましょう。工程は前述したヤスリがけを例にしてみます。上肢の筋力強化のために必要なのはヤスリの抵抗が挙げられます。
ヤスリに使用する道具によっても段階づけできるかと思いますが、今回は外的なものとして重錘を手につけることが一つの方法としても考えられます。
つまり、重錘の重さ『軽い → 重い』で段階づけることができます。
他には
ここからはあまり具体的なことは書かずにエッセンスとして捉えていただければと思います。鉛筆が持てない人には?小さい道具を使えない場合は?関節に痛みがある方は?認知機能が低下している場合には?作る作品の大きさは?感覚機能は?もっと他にも沢山の段階づけが出来るのだろうと思います。
最後に
段階づけは、それぞれの工程を理解しているからこそ出来るものかと思います。解剖学や運動学などの知識もフルに活用し、段階づけることで何が変わってくるか…といった視点まで大切にしたいですね。
また上記の木工は一例です。作業によって異なることもあります。あくまでも参考程度でお願い致します。(責任は負えませんので…)
作業療法は「作業(生活行為)」を用いますので、日々行なっている自分の作業に目を向け、どんな段階づけが出来るだろうか?と考えてみるのもトレーニングになるかと思います!頑張れ作業療法学生!!
それでは失礼します。
<参考書籍>
・基礎作業学実習ガイド作業活動のポイントを学ぶ
・作業-その治療的応用 改訂第2版