【院号も】お寺に税務調査がやってきた【第6話】
結果何も無かったが、途中チラチラと他人の免許証のコピーや
明らかに怪しい感じの書類が見えたのでただただあのファイルは怖かった。
すると30代調査員が女性調査員に、
「それじゃあ後でその永代経軸チェックしてもらっていいですか」
と、指示を出す。
やっぱりか!
ここでもう余計な事いうのやめようと決めた。
そうして、ヒヤリングで1時間半を要した。
他には「大きな寺の修復はあるか」
「なぜあなたが会計担当しているか」
「院号はどうなっている」
などなど…根掘り葉掘り聞かれた。
院号を事細かにチェックするとはね。
院号はうちでは本山に全額納めすることになっているのだが、内緒でポケットに入れてお寺さんがいらっしゃると言うことだろうか…
余計な事は言うまい!と決めたけど、
「嘘はつかない」を鉄則にしていたので、まあバカ正直にいろいろ話してしまった。
後に調査員的には私の姿が好意的に調査に協力してくれる姿勢だったということでお褒めの言葉をいただきましたが、そんなんいらん。
けど、相手も人なので反抗的な態度は取らない方が吉だろうと思う。
ヒヤリングの後は、現金残金の確認だ。
30代調査員が「会計をしてる部屋に入っていいですか」
というので了承し、ふたりをいれる。
仏間に残るベテラン調査員は税理士さんとやりとりをしていましたがわからない。
私は現金残金チェックに手一杯。
札と小銭一枚一枚ひとつひとつ丁寧に数えた。
そういえば30代調査員は色黒で「お金がない」の時の織田裕二に似てる。
白髪のベテラン調査員は孤独のグルメの松重豊に似ている。
以降、そう呼ぶことにする。
女性調査員と私は残金をチェック。
織田調査員が寺務所をキョロキョロと見渡す、
「そこの引き出しにみえてる小銭はなんですか」と。
お賽銭が見つかる。
「計上されてないなら残金で数えてください…あっその袋は?」
また計上してないお布施が見つかる。
「同じく数えてください」
織田調査員やばい!!!!
織田調査員「この棚に積んであるお布施袋の束はなんですか」と、
あせりながら、何かの時に使える慶弔用に置いてある新品の布施袋ですと説明すると納得してくれた。
目は厳しいが筋の通る説明をすると納得してくれるようだ。
そんなこんなで初日の午前は残金チェックでタイムアウト。
私は少し安心していた。
2日中の1日目の午前中が、ヒヤリングと現金残金チェックで終わった。
それで半日を使ってしまうのかと。
あと4分の3がこんな感じでスローペースでいってほしい。
「13時にまたきます」と、一旦解散。
1日目後半戦
立ち会いの税理士さんふたり、
「やっぱりかなり細かいですね」と一言。
いやーそんなことよりとにかくストレスが半端ない!
ヒヤリングだけでこのストレスフル。
これからリアルな会計税務調査が2日続くとか、
まさにまだ序ノ口なんだろう。
税理士さんふたりもお昼ご飯へいかれたが、
私は食も喉を通らない。
初日13時。
会計事務所の税理士さんと担当Aさんが到着。
すぐに調査員三人の再来。
「早速、調査再開いたします」
「七月の出納帳ありますか」
税務調査が動き出した。
私らお寺のものが作る出納帳を担当のAさんにお渡しするとすべて入力しなおして、
「総勘定元帳」と言うものを作ってくださっていたらしい。
それを5年分。これが今回大活躍だった!
しかし7月はまだ未提出だったため私が作った出納帳を手渡した。
ベテラン調査員は7月のお布施袋を手元にチェックし始めた。
こんな直近から調べる事に驚き桃の木20世紀。
そして織田調査員がこちらを向いて鋭い目つきで聞いてきたのだ、
「過去帳はありますか」
ついにきたか…
第6話 終わり
第7話 過去帳見せるか見せないか へつづく