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【ようこそ税務調査さま】お寺に税務調査がやってきた【第4話】
税務調査に対策はない!?
税理士さんYouTuberに共通するアドバイスとしてもうひとつあった。
「余計なことを話さない」
経営者はしゃべりたがり。調査員は何気ない会話から根掘り葉掘り計上漏れがないか探るそうなのだ。
そう、坊さんもしゃべりたがりが多い。
私もしかり。
だからこれも注意せなば案件である。
前夜祭
そんなことをネットで調べながら前日を迎える。
そして会計事務所の社長と税理士さんがおこしくださった。
私は打ち合わせのつもりであったが、
それがうちの税理士さんなんにも教えてくれない!
用意した資料ものを報告すると、
「これで大丈夫です」くらいで、
はじめての税務調査の予行練習とか何を聞かれるとか全然教えてくれない。
そうなんだ。
うちの税理士さん税務調査専門じゃないくて会計事務所なのだ!
もうやっぱり不安しかない!
というのもさらに、見るからに社長も税理士さんもクタクタだった。
なぜならうちの税務調査前日まで母が園長を勤める保育園に税務調査が入っていたからである。
お疲れモードなのはわかるか、こっちだって一世一代のことである。保育園の税務調査からわかることなど教えて欲しい。様子を聞くと、
「細かかった。とにかく細かかった」
の一点張り。
例えば、とにかく議事録を提出させらたり、あるいは保育園の行事で神社から獅子を呼ぶらしくそのお礼は神社へ払うのか、個人に払うのか、そもそも獅子は神社のものか個人のものか、神社ならその書類を用意せよ。など聞いた事もない資料要求されたりあったそうだ。
私からすれば仏教理念の保育所になぜ獅子舞を呼ぶのか疑問符しかないのだが、それはまた別の話。
要は税理士さんも、
「よくわからんけど今回の調査員はとにかく細かいから覚悟するように」
といった感じであった。
いやいや心構えだけでなく、対策を教えてくれよ〜と、
どういう経費が疑われるのか、
保育所とお寺で睨まれたところはどこなのか。
何もない。
私は最大の味方に対して不信感と苦笑いで税理士さんを見送った。
でも大丈夫、実際に会計を担当してくださるのは税理士のAさんだ。
Aさんに頼るしかない。
税務署さん曰く、
調査中の最初(10時)と最後(16時前)以外は立ち会いは必要ない。
なのでお仕事くださいと言われていた。
が結局、私は2日間ともほぼ付きっきりであった。
ようこそ税務調査さま
税務調査当日、午前10時前。
先に顧問会計事務所の税理士さんと会計担当のAさんがいらっしゃった。
私はAだけで良いと思ったのだが、
税務調査の立ち会いは税理士でなければできないのだそうだ。
税務調査するための部屋は庫裡の仏間を用意した。
仏壇前に五年分の布施袋をはじめ必要であろう資料を並べた。
こんなものが必要なのかといったくらいに。
阿弥陀さまのご加護をいただくため。
それは半分冗談であるが、
ご本尊さまにお供えしてきたお布施方々である。
ぜひともこの度の出来事を見届けていただけねばならない。
午前10時、定刻になりピンポンが響き渡った。
ドアのすりガラス越しに三人の姿が現れた。
この3人が税務調査員。うちふたりは国税特別調査官、いわゆるトッカンのふたりである。
そう思った途端、ドクンと心臓が鳴ったのがわかった。
私は震える手で玄関のドアの開けた。
第4話終わり
第5話 税務調査がはじまった へ つづく