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今日は未来に一番近い日〜島に生きるおじい・おばあとの物語

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種子島の祖父母との暮らしは、「同じ日は一日もない」ことをわたしに教えてくれました。そんな祖父母の物語を綴ります。
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捨て猫がくれた生きがい

捨て猫がくれた生きがい

去年の夏頃に、祖父母の家の畑にひょっこり姿を現した子猫ちゃん。

まだ生まれて数ヶ月も立っていないはずなのに、一匹だけで大きな芭蕉の木の下からよろよろと出てきました。多分、どこかのお家で生まれた後に、捨てられちゃったのかな。

祖父母は、最初は放っておいたものの、目やにでいっぱいで顔も汚れ、それでも小さな体からかすれ声を絞り出している姿にいたたまれなくなり、祖父が汚れていた顔を拭き、目には薬を塗っ

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85歳、現役農家

85歳、現役農家

久々の投稿。昨年末に地元種子島に戻ってきた。
18歳で家を出てから、約10年ぶりに実家で暮らしている。

祖父母も健在で、祖父は今年85歳、祖母は80歳。
今も毎日畑に出ている。

先週末、母と一緒に祖父の自慢であるソラマメ畑を見に行ってきた。

今年は実が大きいらしく、祖父は惚れ惚れしています👴

ここの畑は、わたしが幼少期に夏休みになると
よく遊びにきていた畑。

トラクターの上に乗せてもら

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#ゆたかさって何だろう

#ゆたかさって何だろう

「豊か」と聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは、実家で暮らす祖父母との日々だ。

学生時代1年間留学を経験していた私は、帰国後約3ヶ月の休学期間中、祖父母と生活を共にしたことがあった。
朝ごはんを食べ、畑へ行って農業のお手伝い。一度帰宅してお昼を取り、10時と3時のおやつを挟んで仕事を終える。それから晩御飯の支度をし、母も加わり夕飯を囲む。お風呂に入って就寝。
私が小学生の時から、このルーティーンは

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10時と15時

10時と15時

朝食を終えた後、晴れていれば外での仕事に取り掛かる。
祖父は祖母よりも先に家を出る。
祖母は、朝ごはんの片付けと洗濯物、その他の家事を済ませ、祖父の後を追う。
”畑しごとのお供”を持って。

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「そろそろ茶の時間にすいか〜」
10時と15時が近づくと言う祖父のセリフで、その時間は始まる。

午前と午後に1度ずつの休憩の時間。
体力と気力を使う農作業、エネルギー補給は必須だ。
畑の

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一日の輪郭 〜 朝 〜

一日の輪郭 〜 朝 〜

祖父母と生活していると、 なんとなく過ごしていた日々が 一日一日くっきりと見えるようになってきた。

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2人の一日は静かにゆったりとはじまる。コーヒーよりもお茶が似合う朝だ。

祖母は祖父よりもちょっとだけ早く布団から出て台所へ向かう。畑で採れた無農薬野菜は、塩胡椒

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じい、ばっぱ

私の人生は祖父母なしでは語れない。

母方の祖父母は、私たちの家から70メートルくらい登ったところに住んでいる。今年で祖父は79歳、祖母は73歳を迎える。病気ひとつなしの健康体とは言えないが、今でも農業を営むくらいの体力はある。

私と妹は、2人のことをそれぞれ「じい」、「ばっぱ」と呼ぶ。幼い頃、おじいちゃん、おばあちゃんをまだうまく言えなかった頃に発していたであろう呼び名を、20歳を超えた私たち

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