2024年1月の歌舞伎感想
気が付けば2月。先月に見た歌舞伎2公演の感想を簡単に書く。
新春浅草歌舞伎 第1部(浅草公会堂)
国立劇場令和6年初春歌舞伎(新国立劇場)
を見た。
素人感想なので用語の誤り、表現の拙さはご容赦いただきたい。
新春浅草歌舞伎 第1部
これは演目が良かったのと米吉の八重垣姫とお富を見たいと思って観劇。
昨年の新作歌舞伎「刀剣乱舞」の影響か今まで以上に若い観客がいた印象。(休日だったのもあるかもしれない)
十種香は幕開きに漂う十種香の香りが印象的。舞台上の世界に没入感がある。
米吉の八重垣姫はやはり可愛らしく演じていた。
目当ては米吉だったが良いと思ったのは新悟の腰元濡衣。落ち着き払った姿の内側に武家の妻の強さを感じる。
歌昇の長尾謙信も声が良く抜群の安定感があった。
源氏店は昨年4月歌舞伎座の仁左衛門・玉三郎でやったものを見たので若手の挑戦を見守る気分。
玉三郎のお富に比べ米吉のお富は明るさがある。玉三郎に習ったのがよくわかる台詞回し。
隼人の与三郎はまだまだよくできるところがありそう。やくざ者の語調のせいか時たま現代劇のように見えてしまう。
蝙蝠安は松也。発声が良すぎてやる気に満ち満ちた人のように見え別の方向に面白い。体格が良いので蝙蝠安の小物感には不釣り合い。
こちらも舞台上で役者が吸う煙草のにおいが客席に漂う。歌舞伎座は広すぎて舞台上の香りは届きにくい。浅草公会堂のキャパシティは舞台と客席の距離感としてはよいサイズと思う。
国立劇場初春歌舞伎
新国立劇場での初めての初春歌舞伎。通常の歌舞伎公演とは舞台機構が異なりやや不思議な気分。
しかし公演は素晴らしいものだった。
「梶原平蔵誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場」
菊之助の梶原平蔵が、目利きのため刀を抜いた瞬間の刀身の煌めきが目に残る。
二つ胴を切る瞬間の、刀を構えた梶原の型の決まった姿、一瞬の静寂と舞い散る紅葉。その構図の美しさに感動した。
六郎大夫と娘梢は橘三郎と梅枝。親子の情が涙を誘う。たっぷりと愛嬌を交えて表現していた。
「葛の葉」はまさに梅枝の独壇場と言ってよい出来ではなかっただろうか。
障子に技巧的に和歌を残す曲書きの場面では、夫を思い、子を思う葛の葉の姿が心を打つ。その直後、妖狐の片鱗を現して舞台上から去っていく姿。その鮮烈さが印象的だった。
歌舞伎を見るたび、その物語の緩急、演出の緩急にいつも感心してしまう。狐の姿になってからの信田の森の場面。
追手と争う狐葛の葉の、乱れ波打つような長髪と、翻る宝珠の衣。その美しさにまた心奪われた。
梅枝は6月には時蔵を襲名するらしいが、これからのその舞台に期待が溢れる。
2024年1月の歌舞伎公演の感想はこのあたり。
読んでくださった方に感謝いたします。