見出し画像

私の大事な10冊

本を10冊、ジャンルばらばらで紹介します。



『ウロコ』
澤田徳子・作、太田大八・絵
児童書

竜にまつわる不思議な物語の短編集です。
竜の魅力に取り憑かれた人、竜の不思議な力で欲望を満たそうとする人、さまざまなな人物が登場します。
人生の中で、もがき苦しみ、あるいは幸せを軽んじる人々は、己の才能や努力以外から利益を得ようとします。そんな人々にとっての竜とは、便利道具であり、信仰の対象であり、実に都合のよい気休めです。不可思議で巨大な人外に、恐怖ではなく恋い焦がれるかのような感情を抱いているのがその証拠です。
しかし、竜は人々に対して無感情で、人々のことなど眼中にありません。たまに現れてはさらりと流れ消えたり、自身の一部のウロコだけを落としていったり。だからこそ人々は竜という手の届かない存在に惹かれます。
小学生だった私も、この物語の竜に惹かれ、取り憑かれたように物語の人物と竜を想像しながら、飽きずに絵を描き続けました。その絵は、一枚一枚が竜という存在を感じることができるウロコとなりました。



『亡国のイージス』
福井晴敏・著
小説

中学生のとき、父の本棚で見つけた分厚い小説です。
そのころ長編小説はハリー・ポッターしか読んだことのなかった私にとって、厚さ3cm以上の中身が二段組の本は衝撃でした。読むのにいったい何日かかるのかと思いました。結局、途中途中に他の本を読んだり、学業が忙しかったりして、遅読の私は一年かかりました。
しかし、一年かかっても主人公の存在は色あせず、数ページずつ進む亡国の盾として生き抜く人物たちの世界は確実に存在しつづけました。
登場人物の青年の絶望と、中年の希望と、老人の野望は、人の命を奪いあう酷い争いを引き起こしますが、信念を持って突き進む姿は安易に争いを避け、逃げ続ける人間よりは、法に背いたとしても正義を感じます。物語に美学があればこそ抱く感情です。



『夜市』
恒川光太郎・著
小説

幻想と現実の入り交じりる物語です。
言葉や描写に過激なグロテスクさは無いものの、夜一人になったときにゆっくり想像したらとても恐ろしくなります。
田舎のショッピングセンターで迷子になって、まわりはにぎやかなのに、自分は一人ぼっちで安心できる場所へ帰れなくなる不安。動悸がとまらず、むちゃくちゃに歩きまわってしまって最後は怒りすら沸いてくる恐怖。
そんな懐かしさと恐怖です。



『草祭』
恒川光太郎・著
小説

美しくも恐ろしい閉鎖土地の物語です。
祖母のいた田舎を思い出しました。田舎では不思議なことが起こります。正確には、不思議なことではなく、ちょっと街中で暮らしていると出会うことのないものを見てしまい、不思議がるといったところです。
自分が知ることができないだけで、本当は存在しているもの。そんな確認不可能な現実を感じることができます。



『草迷宮』
泉鏡花・作
小説

泉鏡花の作品は、母や姉、女性といった存在に天女のような神々しさを感じます。天女は、恐ろしくも優しく、醜くも美しく、といった矛盾の印象を同時に感じる異形の存在です。
泉鏡花が書く物語だからそう感じます。
顔が熔けただれツノが生えた鬼でも、淡い桃色の羽衣を纏って天から降り立てば、何故か美しく感じる。
迷宮に誘い込む手鞠唄は、幽玄の天女に抱擁されるようです。



『Bの劇場』
中村明日美子・作
漫画

ゴシックアンドロリータバイブルという雑誌に掲載されていた漫画の単行本です。いくつかは書き下ろしもあるようです。
この中でも「うさぎさん」の登場する話がとても好きで、単行本化されたこの本を見つけたときは飛び上がるほど嬉しかったです。
うっとりするほど美しい青年と、宝石の輝きと子うさぎのような愛くるしさを持った少女が、本の中で生きている。
なめらかな線で描かれる耽美な世界は、当時、三畳半程度の狭く殺風景な学生寮の部屋で暮らす私にとって憧れでした。



『苦海浄土』
石牟礼道子・著

生きていることが辛くなる言葉が綴られています。
でも、ここに綴られた言葉は、悲しみと怒りを供養する念仏のようにも感じます。
「水俣病」は簡単に判断できない深い問題です。環境を汚染してしまう加害者に自分がなってしまうかもしれない恐怖が、生きている間中ずっと続きます。汚染されたものを食べ、被害者になってしまうかもしれない不安が死ぬまで続きます。苦しんでいる世界を傍観して、何で私が生きているのだろうと思います。でも、死んでも解決はしません。苦海が浄土になるのを考え続ける人生が広がっています。



『くまさん』
まどみちお・作
詩集

小学校の国語の教科書に載っていた「くまさん」が大好きで詩集を買いました。
ほんわかした楽しい気分になります。
春から初夏にかけての天気の良い日に外で読みたい詩集です。
動植物園の広場のベンチか、小川の流れる公園にシートを敷いてのんびり読みたいです。



『語り伝える吉野の民話』
丸山顕徳・編

奈良の吉野へ行ったときに、お土産屋さんで購入しました。面白い話がたくさんあります。吉野の桜道の地図や観光スポットも載っています。
民話のなかでも「砂まきたぬき」のでてくる話が好きです。民話にたぬきは必須ですね。



『熊本の伝説』
荒木精之・編著

熊本の古書店で買った本です。熊本の伝説がこんなにあったとは知りませんでした。伝説のあった場所の写真付きで、読んでいてとても楽しかったです。
熊本は、新幹線開通からどんどん発展して、熊本市内は駅ビル、大型ショッピングビル、タワーマンションなどが続々とできています。熊本市内だけ見るとずいぶん都会になりました。おしゃれな熊本市内巡りも好きですが、ゆっくり何日もかけて熊本の伝説地巡りもしてみたいものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?