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「複業採用」で事業拡大を担う即戦力を確保。多種多様な人材が活躍するATOMicaの人事戦略

スタートアップの事業成長の加速化でカギを握るのは、即戦力人材。そんな優秀な人材を迅速に巻き込める手段として「複業人材の採用」があります。今回は株式会社ATOMicaで人事責任者を務める小坂 亜沙実さんに、ATOMicaが複業人材の採用を始めた背景や、彼らにどのようなスキルや人柄を求めているのか、またどのような方が現場で活躍しているのかを伺いました。


「来月にはほしい」。迅速な人材確保を可能にする複業採用とは

― ATOMicaの事業概要について教えてください。

ATOMicaは2019年に創業し、コワーキングを起点とした共創を持続的に生み出す仕組み「ソーシャルコワーキング®」や、施設・コミュニティ・イベント運営のノウハウを集約したコワーキング運営システム「knotPLACE(ノット プレイス)」など、多岐にわたって日本の各地域で共創と繋がりをつくるサービスを展開しています。

― 小坂さんの現在(2023年12月)のお仕事やキャリアについてもお聞かせください。

私はATOMicaへ2022年7月に入社し、現在は人事責任者を務めています。最近では年間50〜60名の採用推進や、人事評価制度の改定や等級設計、メンバー同士のコミュニケーションや交流を促進するイベントの企画・推進も担当しています。

これまでの経歴として、新卒で入社した総合広告代理店では法人営業を担当していましたが、お客様からお誘いいただいて入社した国内最大手のPR会社Vector(ベクトル)で人事業務を担当したことを機に、人事としてのキャリアを開始しました。その後、テクノロジー人材育成スクール「テックキャンプ」を運営するdiv(ディブ)に転職し、社員数が1年で200人から600人規模に増えていった拡大期に、新卒採用の立ち上げから中途採用の母集団形成戦略立案、面接対応、クロージングまで一気通貫で行いました。また、2021年から複業に従事し、複数の企業にて採用支援を行ってきた経験もあります。

― 現在、ATOMicaでは複業人材の採用をどのように進めていらっしゃいますか?

ATOMicaの日本橋オフィスに所属するメンバーは8チームに分かれていて、本部のチームマネージャーから「こういう役割を担える方がほしい」と依頼が上がってきたら採用要件を壁打ちし、母集団形成や面接を進めています。チームによっては正社員や業務委託、複業人材といったどの雇用形態が適切なのかが固まっていないまま依頼を受けることもあるため、採用目的や時期、ペルソナなどを細かくヒアリングしています。

― ATOMicaが積極的に複業人材を採用する背景を教えてください。

「気づいていたら始まっていた」というのが正直なところですが、一般的な正社員採用では面接からご入社いただくまでに3〜4ヶ月と日数がかかるからです。現在、ATOMicaは事業成長が加速しているところで「来月にはこういう方がほしい」と社内からの依頼が増えています。迅速な人材確保を実現するために正社員にこだわらず、リードタイムの短い複業人材の採用も取り入れるようになりました。

― 比較的歴史の浅いスタートアップでは、会社のミッション・ビジョン・バリューに共感する初期メンバーを正社員として集め、彼らとともに事業を成長させたいと考える方もいらっしゃいます。一方、正社員でなくても即戦力になる方を巻き込み、体力のある状態で事業を推進することも重要ですよね。

そうですね。複業人材にお任せしたい業務の「社内外の誰と相対するのか?」によって、彼らにミッション・ビジョン・バリューへの理解をどこまで求めるのかは変わります。例えば、ATOMicaはコワーキングスペースを全国各地で展開している中、現在は集客実績の管理や施策立案を任せられる複業人材を募集しています。このポジションではATOMicaの正社員やご利用者の方々と直接関わる機会が多くないため、ミッション・ビジョン・バリューへの理解よりも、目標に向けて継続的に成果を上げられるスキル・能力のある方を希望します。正社員と深く関わっていくポジションでは正社員と同等の共感や体現を求めていますね。

※ 複業人材の採用についてご質問やご希望のある企業の方はこちらよりお問い合わせください。
「おためし複業」事務局: otameshi_fukugyou@atomica.jp

一緒に働きたいのは、仲間や地域のために自力で考えて走れる人

― ATOMicaでは、どのような複業人材の方と一緒に働きたいとお考えですか?

自分が提供できるスキル・能力を客観的に分析している方です。たいてい、複業人材は即戦力や短期的成果を求められるので「何となく複業をしたいかも」「雇ってくれるところはないかな」では上手くいかないかもしれません。また、事業の状況や自分が期待されている機能を照合してどんなアウトプットがいいのかを考え、必要に応じてコミュニケーションを取りながら仲間やお客様のために自走できる方ですね。

成功事例として、ATOMicaにはコーポレート人材が枯渇していた時期がありました。経理や法務ができるメンバーがおらず、一方で急きょシステムを導入しなければならないという時、弁護士資格を持つ上場企業でコーポレート副本部長をしている方と、複数社でのIPO準備業務を経て経理グループの責任者をしている方のお二人にWantedlyからご応募いただきました。

法務として参画していただいた方は、契約書レビューや新規サービスにリーガル視点からのアドバイスをしてくださいました。経理として参画していただいた方は、システムを導入する際にプロジェクトオーナーとして「ATOMicaの事業を考えると、こういう方針でこのシステムを入れましょう」と、正社員と全く変わらない力を発揮してくださったんですね。振り返ってみても、このお二人がいなかったら当社の管理部門は崩れていただろうと思います。

― 反対に、どのような複業人材の方だと協業が難しいと感じますか?

過去に、杓子定規に言われたことしかやらない方がいらっしゃったんです。こちらが1から10までを説明しなければ動かないようなスタンスが目立ち、即戦力を願って契約したものの、どの業務でもかなりの工数がかかってしまいました。また、履歴書や面接で伺った実績から想定していたスキル・能力と、実際に参画していただいた際のパフォーマンスに乖離があったこともあります。納期間近でも「全く終わっていません」と進捗を共有しなかったり、見当違いのアウトプットになったりすることも。チームで働いていることを意識しながら目標やKPI、納期を握り、自発的に報連相ができる方でないと、複業人材としてATOMicaにご参画いただくのは厳しいかもしれません。

― 苦いご経験から、複業採用で確認するようになったことはありますか?

チームによっては、正社員だけでなく、業務委託や複業人材の候補者の方にも、事前にこちらが用意したケースワークに1時間取り組んでいただくようにしています。そのアウトプットを見て「こういう仕事ができそうだ」と社内ですり合わせたり、面接でアウトプットに至るまでの過程や思考を聞いたりしています。おかげで、ご活躍が難しそうな方の採用は減りました。

― 現在、どのようなご経歴を持つ方がATOMicaで活躍していらっしゃいますか?

複業人材は約20名います。本業やご経歴はさまざまで、先述の弁護士資格を持つコーポレート副本部長や経理リーダーの他に、横浜で人気を誇るテーマミュージアムの運営に携わった後に個人でtoB・toCのイベントやコミュニティを運営する方、WEBマーケティングの会社に在籍しながら個人でも集客支援をしている方もいらっしゃいます。最近では個人事業主の方も増えてきていますね。

― ATOMicaで生き生きと働く方にはどのような共通点がありますか?

自分の機嫌を自分で取れる方です。金銭的報酬でも感情的報酬でも構いませんが、自分の業務に意志を持って走ってくださっていますね。例えば、全国各拠点でイベントを企画・運営している複業人材の方は、イベントを開催することでその地域がどのように変わっていくのか、ご利用者や拠点スタッフの方々がどれくらい喜んでくださるのかをやりがいにしています。採用チームにいる青森出身でフィリピンからリモートワークをしている方も、東北にATOMicaの拠点が立ち上がりつつあることを「地元に近づいてきた!」と歓喜してくださっています。

即戦力がほしい企業も、未経験の人も。すぐに挑戦できる「おためし複業」

― 今後もATOMicaでは複業人材を増やしたいとお考えですか?

事業成長に伴い、今後も複業人材の採用は外せないでしょうね。「各チームがいつまでにどんな機能を果たすべきか」と考えると、正社員にこだわらず、複業人材や業務委託の方とも進んで協業しようと計画しています。

例えば、ATOMicaでは1年で最も売り上げが伸びるのは4月、最も採用が忙しいのは1〜3月で、採用のリソースが不足しがちです。時期ごとに会社にどういった機能を優先すべきなのか、正社員採用が間に合うのか、スキル・能力の高い正社員に来ていただけるのかを各チームと議論し、その選択肢として複業人材の採用を提案しています。

― 複業人材の方から正社員になりたいと申し出があった場合、どのように対応していらっしゃいますか?

むしろ積極的に複業人材の正社員化を進めています。実際に事業へ参画してみないとお互いに分からないことは無限にありますが、会社の特徴や課題、雰囲気を把握した上で「正社員になりたい」と希望してくださる方は、入社後に活躍する可能性が高いと考えています。もともと正社員で募集しているポジションで「一旦、業務委託から働いてみませんか?」と提案する場合もあります。

― ATOMicaが2024年1月から開始した「おためし複業」は、即戦力を求める企業にとっても、未経験の方にとっても、気軽に複業を体験できるサービスですよね。

企業にとって、新たな人材が事業に入ってくるインパクトは1名だったとしても大きく、事業やチーム、メンバーとのハレーションが起きてしまうと痛手ですよね。複業を希望する方にとっても、自分の求める働き方や報酬、環境でないと続けるのがつらいし、せっかく挑戦したのに即戦力になれないのは苦い経験になってしまいます。

基本的に、複業人材を受け入れている会社は人材や時間が足りなくて困っていらっしゃるところが多いです。複業を希望する方は、手取り足取り教えてもらえる環境ではないと心得ておいた方が、お互いに期待値を調整できるし失敗も減らせると思います。「生活に潤いがほしいから」「本業だけでは不安だから」といった希望であれば、複業ではなく単発や短時間、短期間で働ける、継続的な雇用関係のないスポットワーカーを選ぶ方がいいかもしれません。「おためし複業」を活用して、ご自分のキャリアやスキル・能力、経験を振り返ることで市場価値やニーズを再認識し、それを喜んで受け入れる企業と出会い、新たな活躍の場を見つけられたら嬉しいですよね。

― 小坂さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材・文:佐野 桃木)

※ 複業人材の採用についてご質問やご希望のある企業の方はこちらよりお問い合わせください。
「おためし複業」事務局: otameshi_fukugyou@atomica.jp