ド田舎主人公
都会への憧れはどうしても捨てきれない。田舎者のぼくの勝手な都会のイメージは遊ぶところがいっぱいで、みんなオシャレで、休日は友だちとお買い物に行ったり、それでいて人との繋がりも多くて、人生を楽しんでる人たちばっかりなんだろうなと思う。
とはいえ、みんながみんなそうでもないのだろう。都会に住む誰もが充実した生活を送れているわけではなく、友達が少ない人もいれば、貧しい暮らしをしている人もいるだろう。事実としてテレビでは東京で貧乏暮らしをしている学生や下積み時代の芸能人の話なんかを聞いたりもする。都心部に住んでいる人がみんな裕福かといえばそうでもないのだ。やはりぼくは都会のキラキラした部分のみを見て憧れを抱いていたに過ぎないらしい。
都会への憧れを抱いた最たる理由としてファッションがある。都会にはイケてるセレクトショップや古着屋さん、オシャレな人がめちゃめちゃ多いイメージがある。現代ではTwitterやらインスタやらでイケてるお店やオシャレな人をいっぱい見つけることができるが、それらはやはり都会に多いように思える。しかし、都会の方がオシャレなお店や人が多いのかということはどうでもよくて、肝心なのは周りの目だ。都会にはオシャレな人が多いのは事実だろう。そして、恐らく見慣れているのだ。インスタやらでスナップを見ていると、ぼくには理解が追いつかないほどのぶっ飛んだ格好をしている人をよく見かける。そもそもぶっ飛んだと言えるほどの人は田舎では見たことがなく、となると見慣れている人は当然いないだろう。そんな目の慣れが田舎にはないことがぼくにとっては救いに感じる。田舎にしてはぼくは派手な服装をしていると思う。それをみんなオシャレだとかセンスが良いと褒めてチヤホヤしてくれる。ぼくの服装程度でそう言って貰えるのは田舎だからでしかない。
最近、この"田舎者は目が肥えていない"ということが田舎の魅力なんじゃないかと思い始めた。正直言ってこんなのは強がりのようなダサい考え方だと自覚はしている。東京で暮らして都会の荒波というやつに揉まれてみるのも悪くはないし、経験したいとも思っていた。実際、高校時代は都心部の、ぼくでも入れる程度の大学に進学するのだろうと思っていた。母親にも「あんたは東京に行きたがると思ってた。」と言われた。結局は親に甘える生活を選んでしまったわけだ。何故だか、ぼくはこれからも都会で暮らすことはない気がする。これからも暮らし続けていくしかない田舎の魅力を見出すことに必死になるしかない。
これからもぼくは、大海を見て見ぬふりしながら生きていく。