おしゃべり
人間ってあまりにも長生きになり過ぎたと思うんだよ。長く生きられるようになってしまったが故に、先にある不安がいつまで経っても無くならないし、変に賢くなってしまったが故に、先人たちを見てこうならないようにしようとか、こうなりたいみたいなことを考えるようになってしまったとも思う。ぼくが猫だったらとっくのとうに死んでるわけで、無駄なことを考えずに生きられたわけで。無意味なような、でも娯楽にはなっている程度のことで頭の中をいっぱいにしておきたい。
幼稚園生の頃、園庭の渇ききった砂をかき集めて、片手で握って思いっきりバっと投げて砂埃を舞わせることにハマってた。その砂埃一粒一粒が、夜空を見上げた時の星や銀河みたいなもんなんじゃないかって思ってた。砂埃の全てにぼくみたいな奴らが生きてるんじゃないかって。それらが舞っているのはぼくからすれば一瞬でしかなかったけど、ぼくが見てるこの星たちもこの地球もそんな一瞬の内の出来事でしかないんじゃないかと思うと、すごく小さな世界で生きてるんだなと思えた。コケも、蟻みたいな虫や小さい生き物から見れば山や森みたいなでかいものなんだろうなと思えてた。
ぼくはこういった、もっと規模の大きな会話をしたい。人は死んだらどこに行くのかとか、宇宙って何?みたいな答えを知りようのない会話。ぼくは出来るだけ人の意見に否定的な意見を述べたくないし、否定もされたくない。こういう内容なら誰も答えを知る由がないじゃん。でも友だちはみんな現実的過ぎる。これは年齢によるものなのか分からないけど、いらない成長だと思う。だからぼくの話を聞いて相槌を打ってくれるだけの助手席ガールが欲しい。聞き上手とか話し上手とか言うけど、人の話を聞くというスキルは備わっている気がする。でもぼくは話しをする方が好き。スポーツも自分に向いてるポジションってあるけど、本当はこのポジションで輝きたいってのがあるじゃん。きっとぼくは大して賢くもないから口下手かもしれないけど喋りたい。
調べてみたけど、猫って12年から18年とか生きるらしいね。20歳になりたてのぼくからすれば18年なんてだいぶ生きているように思えるわ。犬は寿命が10年から13年らしいからこいつらを例に挙げておけば気持ちよく終われた気がする。でもぼくは、犬が人にしっぽを振ってベタベタしている感じより、野良猫みたいな自由奔放さに憧れを抱いているからいいや。