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田舎モンの東京旅行記

高速バスに乗って4時間が経つ頃、ぼくは東京都に上陸していた。バスに乗り込んだ地元の街並みとは打って変わって、高いビルで敷き詰められた街。マンションの明かりのついた部屋をなんとなく眺めていると、こんな小さな部屋一つ一つにも家族がいて生活が存在するんだと、世界の広さ、己の小ささを実感した。東京に全く行ったことがなかったわけではなかったが、最後に行ったのは高校の修学旅行でマレーシアへ向かうため空港に行ったぐらいだ。観光したのは中学の修学旅行の班行動の時ぐらいで今の価値観を得てからは来たことがなかったため、全てが新鮮に感じられた。新宿駅のバスターミナルに着き、駅前に出るとたくさんの人がいた。誰もが他人に対して我関せずという顔をしているフリをしてるように見えた。東京の人間は冷たいなんてよく聞いていたが、誰もがそんな東京人になろうと努めているようだった。ぼくは様々な場所に行った。時系列は覚えていないため、思いついた順に書いていく。

先ず、ディズニーランドだ。これがメインだった。朝の8時頃に起きて準備をし、最初は舞浜駅へと向かった。山手線だとかなんちゃら線とか多すぎて意味が分からない。なんとか路線図を見ることでその駅までの切符代は分かっても、何番線発のどの電車に乗ればいいのかが分からない。非常に難しかった。結局、タクシーに乗り舞浜駅まで向かったが、その道中にヤシの木が並んでいるのを見て懐かしくなった。小学生の頃は毎年のようにお父さんの運転でディズニーまで来ていた。一回だけ夜行列車に乗って来たこともあった。中学に入ってからはめっきり家族で出かけることが減ったし、大学生になってからはこの間ラーメンを食べに行ったぐらいでほぼなくなってしまった。かと言ってそれが寂しいわけでもないのだが。それだけぼくが他に費やしたいものがあるからなわけで、決して不仲故のものではないのだから。下北沢にも行った。古着屋を見て回るために行ったものの、どこの古着屋も同じような服ばかりでつまらなかった。これこそまさにぼくが嫌う古着感が得られるだけの場所だなという印象だった。でも古着屋はイマイチだったが、下北沢という場所自体は大変愉快な場所だった。喫煙所に行くと、露骨にギターを背負ったバンドマンらしき人が増える。みんなロン毛やビートルズみたいなマッシュで、夜で暗いのにサングラスをかけていたり、下北沢感の強い人たちの中で煙草を吸ってきた。みなとみらいと横浜の中華街にも行った。ここで、案外山手線は万能なものじゃないんだと気づいた。とりあえず山手線に乗っておけば行きたいところに着けるんだとばかり思っていたけど、下北沢もみなとみらいも全く山手線に関係の無い電車に乗って行った。とりあえず、全部新宿をスタートに考えるべきなんだと学んだ。中華街は中学の修学旅行で行ったことがあって、まんま記憶通りだった。みなとみらいに何があったかは覚えてないけど、とりあえずでっかい観覧車に乗った。80分とか待った。でも前々日にディズニーを経験していたぼくからすれば苦じゃなかったね。いや、ちゃんと苦だった。でもめちゃ綺麗だった。

東京で4日ほど過ごして感じたのが、自分がなにを好きでも許される場所なんだなと言うこと。やっぱり地元では派手な服装をしていると悪目立ちしてしまうし、家族友人共に受け入れてくれる人が少ない。それが東京だと、良くも悪くも各々が自分らしさを大事に生きていると感じた。"悪くも"と捉えてしまうのがぼくが田舎者故なのだろうが、自分らしさというか、個性を出してればいいってもんでもないだろと思うこともあった。無理矢理に自分を作り出しているというか、自分は他人と違くなければいけないと思っているように見えた。「東京に旅行したぐらいで笑」なんて都会の人は思うんだろうけど、ぼくからすればとても大きな旅行だった。憧れの街が思った通りの街だったのは確かだったが、でもある意味これが日本の限界なのかと虚しくもなった。日本で一番栄えている場所に相応しい派手さではあったけど、それでも地元の延長にあるというか。絶対に違う場所だし同じような括りで捉えられる規模ではないのは分かっているけれど、それでもなにか手の届きうる近さのようなものを感じた。当然の事実ではあったが、ぼくが今まで生きていた世界には限りがあり、その端を見てしまったような気がした。

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