小林秀雄 著「ゴッホの手紙」から見る個性と福祉
・「ゴッホの手紙」とは
著者(小林秀雄)は、ゴッホの「鳥のいる麦畑」との唐突な出会いをきっかけに、ゴッホの残した膨大な書簡を読み、感動の源泉を探っていく。
小林秀雄が読み解くゴッホ像は、概ねこんな姿だ。
「彼は個性的だったが、個性を持て余した人間だった。絶対的な何かが彼の中を強引に通る苦痛を、彼は驚くほど誠実に、経験し通した」
・紐解かれる人生
辛いのは、ゴッホには社会的な成功がひとつも手に入らなかった(信仰、女性、お金、友人…)ところだ。烈しい個性は自分とも、世間との折り合いも許さなかったのだ。
そして突き動かされるように禍々しく美しい絵画を描いて、あっという間に逝ってしまった。圧倒される生涯。
・私の感想と福祉的視点
思うに、個性とは自分で選べず、もともと持っていた性質に気づく類のものなのでしょう。どうしようもなく私を形作る何か。
福祉が尊重するのは、でこぼこなその人の姿そのものであり、輪郭をくっきり掴みたいのである。
その上で、「その人らしい生活」や「自己決定」を支える。
社会や、誰かから認められないからといって、自分を否定してつまらないレッテルを貼る必要はない。ただでさえ、個人の意図を超えるのだから。
・救い
弟テオは兄の才能を信じていた。ゴッホにとって、そんな弟への書簡はどれだけ救いになっただろう。
一人ではやりきれない時、福祉支援員はあなたに寄り添えたらと願う。
思い詰めていると疲れるもの。どうぞ自愛ください。