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洋書多読は目で楽しむリスニング

英語を学ぶ方法として、洋書多読が近年注目を集めています。

この学習法は、一見「読む」行為ですが、実は「聞く」能力を磨く大きな助けになります。

リーディングというのは、「いつでも好きな時にポーズして、反復して英語を咀嚼できる」インプット方法です。何らかの特別なアプリを使っているならいざ知らず、リスニングみたいに相手の(音源の)ペースに合わせる必要もなく、自分のペースで英語を味わうことを可能にしてくれます。

この「リーディング=多読」で培うことのできるスキルは、必ずリスニング力に効いてきます。でも、どんなふうに?

そんなわけで、今日は「目でするリスニング」としての多読の意義について、以下で詳しく見ていきましょう。

1. 英語を英語の語順のまま理解する力を養う

英語を日本語に訳す際、私たちは通常、語順を組み替える必要があります。

しかし、英語をそのままの語順で理解できるようになると、思考がよりスムーズになり、英語を「読む」時間も短縮されます。洋書多読は、この能力を養うのに最適な方法です。

長い英文でも翻訳せず、その場で内容を感じ取る練習ができるからです。

例えば、「She walked into the room and saw a beautiful painting on the wall」という文章に出会ったとき、多読に慣れていない学習者は「彼女は部屋に入って...」と一旦訳そうとします。しかし、多読を続けていれば、文全体をひと目で捉え、「何が起きているのか」を感覚的に理解できるようになります。

この過程はリスニングにも応用でき、音声情報をリアルタイムで処理する力が自然と鍛えられます。

2. わからない単語を推測しながら読む

多読では、知らない単語に出会ったときでも辞書に頼りすぎないことが重要です。

その代わり、文脈から意味を推測するスキルを磨きます。たとえば、以下のような文章があったとします。

The little girl was thrilled to see the colorful kite soaring high in the sky.

この中で「thrilled」や「soaring」の意味がわからなくても、その前後に物語があって、そこまでの情報をある程度咀嚼できていれば、文脈から「女の子が空を飛ぶ凧を見て興奮している様子」と理解できる可能性は飛躍的に高まります。

これは上記の文章を単体で、英語の試験問題を解くように触れているだけでは味わうことのできない感触です。

このように「コンテクストに依存した英文理解」の経験を繰り返すことで、未知の単語にも怯えず、英語の文章をスムーズに読み進められるようになります。

このスキルはリスニング力にダイレクトにつながります。ネイティブの会話は速く、全ての単語を正確に聞き取るのは難しいですが、全体の文脈やトーンから意味を推測する力がつくと、聞き取れなかった部分を補完できるようになります。

こうなればこっちのもので「わからない」状況にいちいち怯えたり、取り乱したりすることがなくなります。結果コミュニケーションがスムーズに行くようになります。

3. 英文法、特に5つの文型に慣れ親しむ

多読を通じて英語の文章構造に触れることで、英文法の理解が深まります。これは考えてみると当たり前のことなんです。英語に限らず言語というのはある規則に従って運用される、音の集積だからです。

書かれたもの、というのはその音を「視覚をきっかけにして再現」できるように言語集団内で定められた共通認識、ルールなんです。文字を持たない言語はあっても、音声を持たない言語は地球上に存在しない、という事実がそのことを雄弁に物語っています。

多読では、特に5つの基本文型(S+V、S+V+O、S+V+C、S+V+O+O、S+V+O+C)に親しむ姿勢が重要です。これらの文型は、英語の「骨組み」とも言える部分で、多読で繰り返し目にすることで自然と体得できます。

例えば、次のような文があるとします。

  • She gave him a book. (S+V+O+O)

  • The book is interesting. (S+V+C)

このような文に繰り返し触れることで、文型が感覚的に身についていきます。文法書を開いて学ぶのとは異なり、物語の流れの中で文型を理解することで、より実用的な英語力が身につくのです。

4. 英語の意味を「解析する」のではなく「感じる」

多読のもう一つの利点は、英語を「解析する」のではなく「感じる」力が鍛えられる点です。

日本語の学習者がつい陥りがちなミスは、文法的な正確さにこだわりすぎて、言葉のニュアンスや感情を見落としてしまうことです。

例えば、以下の文章を考えてみましょう。

The old man sat by the window, staring at the rain with a wistful expression.

この文章を読むとき、「wistful」の意味を辞書で調べるのもよいですが、多読では「窓のそばで雨を眺める老人の表情が何か物悲しげである」という感覚をそのまま味わうことが求められます。

言葉の背景にある感情や情景を直感的に理解することで、英語をより深く楽しめるようになる。これが多読の強みです。しかも、挿絵が豊富な児童書や絵本なら、この物悲しげな老人の様子を視覚的に感じることがでるかもしれません。

この「感じる」力はリスニングにも大きく役立ちます。たとえば、ネイティブスピーカーの話す内容が完全には理解できなくても、トーンや話し方から相手の意図を察知する力が身につきます。児童書における挿絵は、このトーンやイントネーションに相当するものです。

文脈という強力なツールに加え、そういう「非言語的な情報」を意味理解に大いに役立てる習慣を身につけることができるのもまた、多読の効用です。

結論: 洋書多読は目で楽しむリスニング

洋書多読は、英語を読む力だけでなく、聞く力をも伸ばす効果的な学習法です。

英語を英語の語順で理解し、未知の単語を推測し、文法を自然に体得し、言葉を感覚的に理解する。この一連のプロセスが、リスニングの基礎となる力を爆発的に育みます。

みなさん「読んで英語力アップ」と言われると「難しい文章を正確に翻訳する力」のことをイメージしがちですが、むしろ逆です。易しい文章を大量に読むことで、繰り返し、上の1から4までに挙げた力を身につけていくことができるんです。

それがそのままリスニングにおける意味理解に直結していく。今日はそんなお話でした。

多読は決して難しいものではありません。初めはやさしい絵本や児童書から始め、徐々に長い文章に挑戦していくことで、楽しみながら英語力を高めることができます。

洋書多読を通じて、「目で楽しむリスニング」の世界を体験してみませんか?

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Ken Sugihara
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