マイナカード受診コンピューター不具合 3割負担誤表示〜すべてがNになる〜

2023年8月20日【政治総合】


「保険証廃止はあり得ない」

 医療機関でマイナンバーカードを使って受診の受け付けをした場合、患者が所得にかかわる情報の提供に同意しないと、本当は1~2割負担なのに3割負担などと誤った負担割合が表示されるコンピューターシステムが一部機種にあり、医療現場が混乱しています。千葉県船橋市の船橋二和病院付属ふたわ診療所では―。(内藤真己子)

 同診療所は今年4月からカードリーダーを設置し、マイナンバーカードでの受け付けを始めました。すぐに問題が発生しました。

 「先月まで1割負担だった高齢者が次々に3割負担とコンピューター端末に表示され、驚きました。紙の保険証の負担割合を確認するため待合室に患者さんを探しに行ったり、大変でした」。こう証言するのは医事課主任の近藤純さん(46)です。

情報提供の同意

 患者がカードリーダーを操作する様子を確認し、コンピューターシステム業者とやり取りするなかで、不具合の理由が分かりました。

 カードリーダーにマイナンバーカードを置くと、患者は本人確認の方法をはじめ、複数の項目で選択を求められます。「高額療養費制度」を利用するかどうかも問われます。所得に応じ1カ月の自己負担限度額を定めたものです。「利用する」へ進むと「限度額情報を提供しますか?」と問われます。ここで、「提供しない」を選択すると、誤った負担割合が表示されるといいます。

 同診療所を受診する1日500~600人の患者のうち、マイナンバーカードで受け付けするのは10人程度。それでも「個人情報を見られたくないという心理が働き『提供しない』を選択する人が多いのだと思います」と近藤さん。

 原因が分かってからはマイナンバーカードで受け付けする人に職員がつきっきりになり、限度額情報を「提供する」にタッチするようにお願いしています。

 「大変な手間。一件の受け付けに2分はかかります。自己負担限度額を超える人は一部なのに『限度額情報の提供』に同意しないと正しい負担割合が出ないのはおかしい」。近藤さんは指摘します。

誤り気づけない

 厚生労働省は、診療報酬の請求に使うレセプトコンピューター(レセコン)等の一部でこうした不具合が発生しているとして、業者に改修予定などの情報提供を求めています。

 同診療所が18日、レセコン業者に問い合わせたところ、9月に改修する予定と回答しました。マイナンバーカードでの受け付け開始から半年近く後です。

 近藤さんは訴えます。「マイナンバーカードによる保険資格の確認は、さまざまな段階で問題が起きる可能性があると分かってきました。保険証が廃止されれば、誤りに気づくことすらできません。保険証廃止はあり得ない。存続させるべきです」

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