経済アングル大学債は危険なワナ〜すべてがNになる〜
2023年11月29日【経済】
自公政権が今国会で狙う国立大学法人法改悪案には、大学の債券発行を容易にする規制緩和策が入っています。国の予算削減に苦しむ大学関係者、特に学長クラスから強い歓迎の声が上がります。
大学債は2020年にも緩和され、直後に東大が200億円を調達し話題となりました。環境や社会に配慮したESG投資として、年限40年、利率0・8%でも購入希望が殺到しました。
当時ゼロに張り付いていた長期金利はその後じわじわ上昇。大学のブランド力も影響したのか、22年12月に300億円を調達した東京工業大学の利率は1・8%、今年2月に100億円を調達した東北大は1・879%でした。東大並みの利率なら2億円台ですんだ東工大の年間利払い費は5億4千万円に上ります。
7月には日銀が上限金利を引き上げ、来春のマイナス金利解除の観測も流れます。大学債の利率が3~4%の時代がきても決して不思議ではありません。
国立大学はいま運営費交付金減、物価高騰、定年延長による人件費増、付属病院の赤字と未曽有の危機です。それを乗り切るために大学債を発行すれば今度は高額の利払いが待ち構えます。
国立大学の収入確保策として大学債の規制緩和を決めた20年の文科省の有識者会議では、同時に授業料値上げの自由化が議論されました。議論を先導した政府の総合科学技術・イノベーション会議の上山隆大常勤議員は、国立大学改革の意義を「私立大学的な組織へとかじを切るということにほかならない」と言明しました。
うまうまと大学債に乗せられるのか。国立大学の誇りが問われています。
(佐久間亮)
(2023・11・29)
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