失った能力が回復する!?脳の可塑性について
(2020.10.12 投稿)
今回は脳の可塑性についてのお話です。
脳卒中の患者がリハビリや日常生活を経て能力を回復できるのは、脳に可塑性があるからです。
脳の可塑性とは
つまり、一度壊死した細胞が元に戻ることはないが、脳への刺激により損傷していない部位が壊死した細胞が担っていた機能を代替し、失っていた能力が回復するということです。
我が家では、左脳前頭葉分に脳出血による壊死がある、四歳になる娘を育てています。
娘の場合は母親の胎内で脳出血が発生したため、そもそもはじめから能力自体を獲得していないのですが、壊死している部分が本来担うべき能力を他の部分に代替えして担ってもらうべく、日々療育に励んでいます。
リハビリに取り組む上で大切なこと
そんななか、脳の可塑性について詳しく知りたいと思って手にしたのがこの本です。
この本は、現役の外科医でもあった著者が三度もの脳卒中にみまわれ、そのたびにリハビリによって能力を回復していく過程が書かれており、我が家にとっても非常に参考になりましたし、勇気を与えられました。
自分自身の症状や能力を取り戻していく過程を、医師の視点で書いているところが非常に参考となる本です。
この本の著者は、東京女子医科大学在学中に最初の脳出血を起こしますが、後遺症なく卒業、整形外科医として同大付属病院に勤務。26歳で郷里高松に戻り香川医科大学(現・香川大学医学部)に勤務。その後、実家の山田整形外科病院の院長となって間もない33歳のとき、2度目の脳出血により脳梗塞を併発、高次脳機能障害に至ります。それでもリハビリ医を目指し、愛媛県伊予病院に勤務しますが、37歳で三度目の脳出血、半側空間無視など新たな後遺症が加わりましたが、姉が運営する介護老人保健施設の施設長として社会復帰を果たしています。
三度もの脳出血に見舞われながらも、そのたびにリハビリを経て社会復帰していく姿は本当にすごいと思います。
この本の中で、著者はこのように言っています。
つまり可塑性を発揮し、能力を回復していくには、脳をどんどん使っていくことが大切ということです。
著者の左半身は、脳卒中の影響で感覚が無い状態であったのですが、左の手足の先にジンジンする感じ、長時間の正座のあとで麻痺していた感覚が戻ってくるときの、あの感じが強くなってきているとのことです。
これは脳出血によっていったん死んだ組織の中に、グリア細胞という神経の信号をつなぎあわせる細胞が増えてきて、再び情報が電気信号として脳内を走りだしたということを示しており、著者の脳は確かに目覚めている、ということを実感として感じるのだと言っています。
一方でこのようなことも言っています。
脳のリハビリのためには、能力を回復したいというしっかりとした意識を持ち、ただし焦らずに時間をかけて取り組んでいくことが大切なようです。
すぐにできないからといって匙を投げずに、根気よく続けていかなければなりません。
まとめ
この本の中で著者も言っていますが、脳卒中による障害は、発症した日からどんどん悪くなっていくものではなく、その日を底として、日々少しずつ良くなっていくものです。
最終的にどこまで能力が回復できるかは予測ができませんし、元と全く同じ状態に戻るとも限りませんが、脳には可塑性があり、仮に壊れた脳であっても常に変化し、常に学習していて、可能性が広がっているんだということを思いながら、娘の療育に取り組んでいきたいと思います。