育児戦闘記録〜全拒否離乳食〜
食べることは生きること。
わたしは食べることが大好きだ。人はいつ死ぬかわからないし、人生の食事の回数は大体決まってるわけだから、一食一食を大切に、おいしいものが食べたい。
一方で、夫は食に関して執着のない男だった。
多少の好き嫌いはあるものの、よっぽどでない限り大体のものはおいしく食べられるので、コンビニでもファミレスでも自炊でも、なんでもござれ。食事を担当する身としては、新婚当初こそ物寂しさがあったが、子育てに追われている現在、夫の食への興味関心のなさは正直めちゃくちゃ助かっている。
(ちゃんとしたものを食べさせなきゃ!のプレッシャーがないので)
そんな私たち夫婦の間に生まれてくる子は、私に似た食いしん坊か、はたまた特にこだわりのないタイプか。
産まれたばかりの頃、どっち似だろうね、なんて話していたのだ。ガタイはいいから、俺似じゃないかもね、なによ太ってるって言いたいの!ちょっとやめてよー!アハハハ…アハハハ…
「これ口開ける気ないな」
口を真一文字に結んで…というフレーズは小説の一節なんかでたまに見るが、本当に口って真一文字になるんだぁ…って感じだった。ギュッと固く結んだ口、ここから先は通さねえよ、というような、強く固い意志が宿った目をしていた。
育児書やネットの情報で見た、「スプーンを口元に持っていき、下唇の上にのせましょう。お口が開いたら、まっすぐスプーンをいれて―――」
開かね〜〜〜〜〜〜〜〜開く気がしね〜〜〜〜〜〜〜
離乳食に村を焼かれたか、肉親を殺されてなければこんなに拒否することはないと思う。
とにかく娘は断固として口を開けなかった。あまりの拒絶っぷりに、もはや親でもちょっと引いていた。夫と共に「まあでも、NOと言える女で良かったよね」という謎のフォローを入れたくらいだった。まあでも、じゃねーよ。
覚悟を決めろ
その後、一ヶ月。二口程度は食べるようになったものの、それ以上進むことはなかった。
離乳食の初手は、十倍粥をすりこぎやブレンダーなどですり潰してポタージュ状にしたものを与え、その後月齢や口腔機能の発達に合わせて七倍、五倍と炊き方や粒の状態を調節していく。しかし娘は一向に十倍粥から進まなかった。
一度七倍粥にしてブレンダーは使わず、多少粒が残った状態のものを与えたが、見たこともないような苦悶の表情を浮かべたあと、全部口から出していた。
どうやら離乳食というものは、お粥だけ食べさせておけばいいというわけでもないらしい。人参、玉ねぎ、ほうれん草などの野菜類から、状況をみて鱈やしらすなどの白身魚なども与えていかなければならない。
もちろん娘はそれらすべてを拒否していた。米粒のかけらですら嫌なのに、白身魚?食うわけねーだろ
さらにここで、食事の練習だけが離乳食の目的ではないことを知る。
アレルギーチェックだ。卵や小麦粉、乳製品などにアレルギーがないか、初めは少量から与えて徐々に量を増やしていく。
卵は卵黄だけを耳かき1さじから、最終的に全卵一つ食べられるようにならなければならない。
無理すぎるだろ。
現時点でお粥一口(小さじ1)を口に運ぶ、ってかねじ込むのに苦労してる段階。小さじ1をねじこんで、夫と「いや今日機嫌よかったわ」「おつかれ〜」ってハイタッチしてる段階。
全卵1個っていつの話?2年後?シャボンディ諸島で?
やるしかなかった。もはや食事介助というよりねじこみ芸。お食事椅子から隙あらば脱出をはかる娘をどうにかこうにか座らせ、口元にスプーンを滑り込ませ、ねじこむ。
どうにかこうにかクリアした。というより、全部口から出したり皿ごとひっくり返されたりする為、最後は「多分、クリア」で終わらせた。離乳食拒否勢の赤ちゃんにアレルギーチェックすること自体、ハードモードすぎて私の育児レベルが追いついてない。ジムバッジの数足りてない。言うこと聞くわけない。
生後7ヶ月を迎える頃、このへんで本来は2回食に進んでいく。食事の回数が増えるのだ。
食べないのに回数が増えるって面白すぎるな。食べなかった残飯は普通に生ゴミになっているというのに。積極的にフードロスに貢献するな
傾向と対策
私はここで初めて、栄養相談なるものに出向いた。昨今、企業や自治体が展開する離乳食に関する栄養相談では、離乳食の悩みをはじめ、食育について栄養士に話を聞ける場になっている。企業がやっている場合は費用がかかることもあるが、自治体などでは無料で開講してるところが多いだろう。
いくつか受けた栄養相談で得た情報の中で、私が実際に実践したこと、そしてその結果についても記していく。
「お腹を空かせる(授乳間隔を空ける)」
結果:失敗
完全母乳で育ってる赤ちゃん、精神安定剤のように乳を吸いたがる傾向がある。うちの場合、もはやおしゃぶりがわりだったので無理だった。「おっぱいナイナイよ」と告げると「ふざけるな、不当な扱いだ」と抗議され、号泣の末に大暴れされるので私の心が持たなかった
「楽しく食べさせる」
結果:失敗
食事は楽しいことなんだよ!と認識させるため、笑顔で、できるだけハイテンションで食べさせる。
わたしは歌を歌いながら猛烈なテンションで挑んだが、娘は「え…何…」という表情でこちらを見つめ、その後愛想笑いを浮かべていた。明らかに困惑していた。0歳に気を遣わせて終わった。私の心も死んだ
「大人が食べているところを見せる」
結果:成功
我が家は座卓で食事をしていたので、離乳食の時間に大人の食事も合わせた。我々が食べ始めると興味津々に駆けつけるようになり、多少口が開くようになった。さらには大人が食べているものを食べたがる傾向があったため、食パンを小さくちぎって与えたり、ごはん数粒を与えてみたりした。うちの場合は大人の「手」から食べたいようで、手からしか食べないこともあった。
ただこれ、大人は自分の食事をしながら離乳食も食べさせるので、めちゃくちゃマルチタスク。コンビニのバイト並みにやること多い。マジで忙しいので、パートナーと時間差で食事をとって工夫するのもオススメ
大人が食べている様子を見せつけるのが一番効果的だったような気がする。効果的といっても、ようやく口が開くようになった、と言うべきだろう。しかも短時間。椅子には座らず、立ち食いで。
後から栄養士に聞いた話だと、「足の裏が地面について安定した姿勢だと食べやすいから、座るより立って食べたがる子もいる」らしい。
これは余談だが、たまに全く興味を示さない時なんかもあって、美食家の仕草で食べ物(だいたい大したもの食べてない、だいたい納豆ごはん)を口に運び、おいし〜!!!!」などデカい声でオーバーリアクションをしてみせ、無表情の赤子に無意味な食事マウントをとる親になるので注意
理想の食事
食事の時間は席について、手を合わせていただきますをし、集中してごはんを食べて、デザートは一番最後に、食べ終わったらごちそうさまをして、終了。これを繰り返すことで習慣化し、メリハリをつける。ウンウン、大事。私もそうやって教えよう。お橋の使い方とか、食事の振る舞いがキレイな人って素敵だから。
ン〜〜〜〜、立ち食いかつ「適度に集中力奪ったほうが食べる」ので、後半はシナぷしゅの動画を見なせながら食べさせています。
マナー講師の皆様、食育に携わる関係者の皆様、私をビンタしてください。
食事、自由形。
「いちごを先に寄越せ」と合図されれば先に食べさせるし、いただきますで食べ始めたの通算4回くらい。かろうじてごちそうさまはやってる気がする。気がする。
断じて丁寧な食事アンチではない。私もできることならゆっくり席につかせて一緒に食事を楽しみたい。しかし、0歳児相手にそれを完璧にやろうとすると、私の場合は心が折れた。
だからこそ、まずは食事の最終目標を「楽しく適度に食べ終える」にした。無理やり食べさせるでもなく、一口も食べないでもなく、とにかくお互い楽しく、かつある程度食べてもらう。その中でもういらない!とされたらそこで終了。
ある程度、が難しいのだが、そのへんはご機嫌だったり腹の空き具合にもよるので、私の場合は口元にスプーンを持っていって、5回くらいそっぽ向かれたらそこで終了にしている。
食事に興味が出だした現在(1歳0ヶ月)は、初めは椅子に座っていただきますからスタートし、飽きて脱出を試み始めたら、立ち食いにしている。なんなら動画チートも使っている。マナー講師の皆様、食育に携わる関係者の皆様、やっぱり私をビンタしてください。
ただ一つ思うのは、マナーや習慣を教えるのはタイミングがある気もする。
もちろん小さいうちからの習慣も大事だが、大号泣大暴れの中で実践するのもなかなか難しい。
食事に興味が出だしてからは、それまで全く出来なかった「椅子に座って食べる」ができるようになったので、タイミングってあるんだなあと実感している。
突然気づいたっぽい
10ヶ月を過ぎたある日。娘は突然食べ始めた。
それまで多く食べても5口だったのが、ベビーダノンを1個まるまる食べた。これはいけるやもと思い、その日の夕食はいつもより多めに用意した。ぺろり完食。嬉しゅうて嬉しゅうて母は舞い上がり、夜通し踊り明かし、翌日の朝ごはんもたくさん用意したが、その日は全く食べなかった。めちゃくちゃ振り回されている。
しかしまた翌日はよく食べた。完全に振り回されている。そして娘は一口食べるごとに拍手を求めてきた。なんなら自分で拍手をし、賛同を求めているようだった。離乳食始まって以来、一口食べるごとに褒めちぎりまくった結果、だいぶ面倒くさい女になっていた。
1歳を過ぎた現在も、食欲は続いている。本来1歳が食べる基準量の半分〜3分の2程度だが、そこはあくまで基準と捉え、体重が減ることもなく、断乳したわけでもなく、本人も元気そうなのでOKとしている。
突然やってきた「食べる」期。
同時につかみ食べも始まった。あれだけ教えても全く興味なかったというのに、本当に赤ちゃんという生き物は気まぐれである。
全ては本人のタイミングだったのだろうな。
いつかは食べるってわかってたけどね!と思いつつも、ちいさいおちょぼ口を一生懸命あけて、口をもぐもぐ動かす娘を見ていると、やっぱりちょっと泣けてしまうのだ。
まとめ
なんで食べないの、こんなに頑張って作ったのに、食べなかったらこれからどうなるの、ずっとおっばいだけで生きていく気?
完全なるお母さんヒステリック構文だった。
それくらい私にとって離乳食の悩みは深く、重たかった。なんでだろう。食べないって、生きるか死ぬかだったら死ぬ方に近いからなのかな。やっとの思いで産んだ我が子を死なせるわけにいかないと、潜在的に母に焦燥感を与えるのだろうか。
食事を用意するのは私の仕事だけど、食べるかどうかは娘が決めること。
最終的にそう割り切って考えていた。あまりにも食べなさすぎて、自分も娘も責めたくなってしまう。負のスパイラルに陥る前に、自衛として割り切った。
思えば自分と娘が別個体であることを深く認識したのも、この離乳食拒否が最初だった気がする。
もちろん、今でも割り切れなくなることもあるし、食べたくないと大暴れする娘より豪快に大暴れして格の違いを見せつけたくなることもあるけど、今日も元気そうなので、良しとしようと思う。
私自身、母に離乳食拒否のことを相談したとき、「あんたも白飯しか食べなかったよ」と言われた。当時のことはもちろん全く覚えていないが、少し申し訳なくなった。
そういえばよく「ごはんだけじゃなくて、おかずも食べなさい」って言われたな。思えば食事に関しては、やたらと口うるさかったな。娘の離乳食を経て、全ては愛情だったことに気がつくのだ。
これをいつか読み返すとき、娘と一緒にマックのポテトを食べていたらいいな。
泣きながら壁に全力投球されたじゃがいもポタージュの話とか、初めて1個まるまる食べられたベビーダノンの味はもも&緑黄色野菜味だったとか、教えてあげよう。
そして、この世界はびっくりするほどおいしいもので溢れているから、楽しみにしていてほしい。
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