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神に呼ばれる 長野諏訪地方にて
昨年の9月に長野県の諏訪地方に訪れた。
小さいころに何度かスキーをしに訪れてからもう10年近く行っていなかった。JRの青春18きっぷを初めて使用しての旅だった。
1泊2日の旅で諏訪に鎮座する諏訪大社4社すべてを回ることにした。
1日で車なしで回るのは厳しいので1日目に下諏訪の春宮、秋宮を回り
2日目に上諏訪の本宮、前宮を回った。
1日目、下諏訪には朝の9時ごろについた。秋宮まで歩き、参拝する。
まだ朝早かったので、人も少なく荘厳とした雰囲気があった。
近くに塩羊羹が有名なお店があるのだが、その時間には小分けされたものは
売っていなかったため、次の機会にリベンジしたい。春宮に行くのに旧中山道を通るつもりが、その一本入ったところを歩いていた。しかしこれがよかった。通った道のほうが高い所を通っており、諏訪湖を一望することが出来た。
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人気がほぼない道を歩いていると、慈雲寺というお寺を見つけた。もともとこの旅を計画する際に見つけていたお寺だったが、実際に見た瞬間美しさに圧倒された。参道の石畳が苔や木々に囲まれている。私は自然に囲まれた寺社仏閣に目がないのだ。これは行くしかない、そう思った。誘われるように境内に入ると、これまた美しい庭園があった。観光寺ではないようだ。こんな素敵なお寺に今まで気づかなかったとは…。新たな発見がある旅は面白い。
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慈雲寺を後にして、春宮に行くまでにまた新たな発見があった。武田信玄ゆかりの矢除石だ。これは全く知らなかった。階段を下りる途中に気になって見てみると、ぽつんと大きな岩があるだけ。なんでもこの石には矢除けの霊力があるのだとか。これは普通は素通りするなぁと思いつつ、今回の旅はついているなとも思った。
春宮に到着したころには10時を過ぎていて、そこそこ人が増えてきた。参拝し、どうしようか考えていると地図に「万治の石像」と書いてある。昔、どこかで石仏を見たという記憶があってそれをずっと探していたのだが、まさか春宮にあったなんて。江戸時代に造られた謎多き石像。行くまでの道がこんなだったっけと思いながら、久々に見る石像は記憶のままだった。いつ見てもユーモアがあるお顔で、なぜかかわいらしく感じる。400年間諏訪を守ってきたのだろうか。また必ず会いに行きたい。
諏訪と言えば、鰻だ。調べていた鰻屋さんに行くと、まだ30分以上開店までにあるのにすでに並んでいる方がいた。これは期待できる。だが鰻はその期待を超えてきた。今まで関東風の鰻しか食べたことがなかったが、この関西風の鰻が私好みだった。本当に美味しかった、諏訪に住みたい。(花粉症のためその夢はかなわないけれど…)
その後は諏訪から離れ、中央西線で奈良井宿に向かったのだがその話はここでは割愛したい。奈良井宿も素晴らしい所だった。すでにこの旅に満足していた。
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2日目、松本で宿泊したため諏訪に戻る。午前中は松本城などを巡った。松本ももっと深く掘ればいろいろな楽しみがありそうだ。旧開智学校もぜひとも見学したい。
上諏訪には12時前に着いたので、駅の近くにあるお蕎麦屋さんで昼食をとった。お目当てはそばではなく、もつ煮こみだ。ここのもつ煮込みは馬のもつを使っているらしい。…馬?もつ煮込みは大好きだが、馬のもつ煮なんて聞いたことがない。だがこれが美味しい!馬肉自体、この旅で初めて食べたがこんなに美味しいものなのか。馬とお蕎麦屋に感謝しながら店を出た。
この日もかなりのいい天気で日差しが強かった。お店から10分ほど歩くと、高島城に到着した。小さなお城で公園のようになっている。今は諏訪湖が遠く見えるが、以前はお城の目の前が諏訪湖だったらしい。お城内部は諏訪の歴史博物館のようになっており、この時期は「北条時行・諏訪頼重と諏訪」というパネル展が行われていた。展望デッキもあり、諏訪の街並みを見ることが出来る。
さて、諏訪大社上社は駅からかなり離れたところにあり歩くのは大変なためタクシーを使用した。本宮で参拝し、前宮まで歩く。その途中に神長官守矢資料館という小さな資料館がある。本当に小さな資料館で大人が100円だ。資料室の前には鹿や猪たちの首が飾られている。諏訪大社は狩猟の神様でもあり、鹿食免というお札を授かることが出来る。
鹿食免とは、肉食を禁忌としていた時代でも「このお札を持っている者は鹿や猪などの動物の肉を食べても良い」とされていたお札で、現在も諏訪大社で授かることができます。
今回は「南北朝時代の守矢文書 北条時行とその時代」という企画展が行われていた。
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資料館を出ると敷地内にお社が建てられていることに気がついた。なんとなく呼ばれるようにお社に近づく。随分と古いお社だ。ここだけなぜか石段の上にある。なんの神様かはわからないけれど、お参りしておこう。(そしてなぜかここだけ写真を撮っていない…)
お参りして、先ほど資料館で見た明智光秀の家紋「桔梗」が入った祠を見に行く。この祠は最近発見されたものらしい。草むらの中にあったため見つけるのに苦労した…。北条時行といい明智光秀といい武田信玄まで。歴史的にも大事にされてきた土地なんだなぁ。
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なにかわからないお社に後ろ髪を引かれつつ、前宮へ向かった。前宮は鳥居から坂を少し上る。すると右側の小川が流れた本殿に到着した。この本殿の後ろは守屋山と呼ばれる山であり、諏訪大社のご神体だとも言われている。山に続く道を少し行こうかと思ったが、時間がないのでやめた。でも諏訪に行ってからこの山に登らないといけない気がずっとしている。
隣に流れる小川は日に当たって輝いていた。まだ暑いにもかかわらず、水は驚くほど冷たい。手を浸して涼んだ後、茅野駅まで歩いて今回の旅は終わった。
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家に帰って、旅の話を家族に聞かせた。
「そういえば、なんかわからないけどお社があって。お参りしたんだ。」
と話しつつ、結局なんの神様だったのか気になって調べてみる。するとそれは諏訪地方を中心に信仰されるミシャグチ(御左口)神の総社であった。驚いた。まさかミシャグジ様のお社を無意識に訪れていたのか。
父が笑って「それは神様に呼ばれたんだね」と言った。
神様に呼ばれる。そんなことが本当にあるのか。偶然ではなく必然だったというのか。真偽のほどは誰にも分らないけれど、「神様に呼ばれる」ということを信じてみたいと思った。
今回の旅は、様々な発見があった。実際に歩いてみないとわからないという旅の醍醐味。誰にも気づかれずひっそりと身をひそめる歴史的な遺物たち。神に導かれるということ。もしかしたら諏訪は私のことを待っていたのかもしれないなんて愉悦を感じる。
今年もまた諏訪に訪れようと思っている。今度は行けなかった守屋山や途中で見つけた神社にも行きたい。この旅に行ってから諏訪がもっと好きになった。歴史ある土地、諏訪。今度はどんな一面を見せてくれるのだろうか。
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