『5月』前半
さくらが散った。
今は2020年5月。
3月末に発令された緊急事態宣言は今もなお続いている。
届いたアベノマスクは大きすぎた。
代わりに母がマスクを縫い始める。
朝の通勤電車。
出勤を要請されたサラリーマンたち。
息を殺した乗客を乗せて、一駅、一駅と進んでいく。
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そしてあっという間にGWがやってきた。
何が良くて、何が悪いかの判断は国民に委ねられている。
『不要不急の外出を控えてください』
政府がそう謳っている中、沖縄に行く人。
『3密を控えてください』
政府がそう謳っている中、クラブに行く人。
はみ出した人はメディアに取り上げられ、叩かれる。
視聴者は『自分は行かなくてよかった』と安堵する。
テレビに映る医療現場。
自分の行動一つでどれだけの犠牲を払うか突きつけられる。
自分がしようとしていることは社会にとっていい行動か。
それとも悪い行動か。
人との距離は保ちながら、心は社会と密接になっていく。
『自分は社会のために生きているんだっけ。』
ふと心に感じたことは、次に思い出そうとしても忘れている。
私たちはそれくらい混沌とした渦の中で生きていた。
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