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職場だけど「サードプレイス」そんな居場所が必要だ

“Do”だけでジャッジされる孤独

以前投稿した「従業員が”B面”でつながる社内コミュニティ」は社内外からの反響があった。企業の「B面」コミュニティについて、今回はもう少し背景などを踏まえながら綴っていきたい。

現在、先進国では「孤独」が大きな社会問題となっている。日本では約40%が日常の中で孤独感を覚えているというアンケート結果もある。(2024年4月から「孤独・孤立対策推進法」が施行され、それに先立つ形で公表された「令和5年度 孤独・孤立の実態調査」の回答者の割合)

コロナ禍を経て、人と人のコミュニケーションは一気にデジタルへの移行が進み、関係性はじわじわと希薄化しているように感じる。孤独感は、完全リモートで働く従業員だと最も高くなるというデータもある。スコープを仕事に絞れば、日本企業の従業員エンゲージメントは世界125か国の中でも最低というレポートが公表されている。個人的にはエンゲージメントが世界最低というのはほんと?って思うが、各国が改善を見せるなかで日本のスコアは悪化の一途をたどっているらしい。数値が下がっていることは間違いないだろう。

このような社会の孤独感や企業における従業員エンゲージメント低下の根本的な原因を、ぼくは現在の社会では人間が“Do”だけでジャッジされる場面が増えたからだと考えている。“Do”とはつまり、「行動と結果」。例えば、SNSではいつでもだれとでもつながれるはずなのに、投稿に対する「いいね」は一過性の喜びに過ぎず、本質的な心のつながりはそこからは生まれない。むしろ他人のキラキラした投稿をみることで、孤独感を感じることもあるだろう。

企業に目を向けると、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行する企業が増え、家族的な関係がめっきり減り、業務上のコミュニケーションだけがチャットツール内で行き交い、相互理解も進まないまま個人のKPIを追う日々を過ごしている人もいるかもしれない。現在はオフィス回帰が進んでいるというけれど、それでもお互いに顔を合わせる機会は以前と比べれば格段に減っているはずだ。

冒頭で紹介した記事内でも書いたが、昭和と現代のいずれかで良し悪しがあるわけではない。しかし、かつての日本や日本企業にあった組織文化は徐々に失われつつあり、それが競合優位性やエンゲージメントの低下を招き、離職率の増加にもつながっていると思っている。

コミュニティとは“Be”でいられるサードプレイス

ぼくたちオシロ社は、オンラインコミュニティをアーティストやクリエイター向けに展開してきた。「お金」と「エール」の両方をファンから受け取れる場所を目指し、それらが継続するために、ファンであるメンバー同士が「仲良くなる」。そうすると、やがてそこは居場所になる。居場所になれば、先のお金とエールは継続する。

アーティストやクリエイターは、自身の作品での評価が絶対だ。まさに“Do”の世界で生きている。これはぼく自身がアーティストとして30歳まで活動してきた経験から、実感知としてわかることだが、創作はとても孤独な営みで、つくった作品が評価されなければ埋もれてしまうし、当然収入もない。そういった孤独と収入の不安定さによって、これまで多くの才能が芽を出すことなく道をあきらめてきたことだろう。

日本は多様かつ多彩な芸術と文化を持っているし、日本のIP(知的財産)は世界中から求められている。しかし、現在の人口減少やそれを原因とした国際競争力の低下から見ても、日本はもっと芸術や文化を育成し、世界に憧れられる国になっていく必要がある。

「日本を芸術文化大国にする」。オシロ社が掲げるミッションは、ぼく自身が授かった天命でもある。そのための手段として、ぼくたちはクリエイターが創作の孤独や収入の不安を解消し、ファンと“Be”の関係、つまり存在そのものを認め合い、心理的安全性のあるなかでコミュニケーションをとれる場をつくってきた。

つまり、コミュニティは「誰しもが“Be”でいられる場」。家族と過ごす場であるファーストプレイス、職場や創作の場、学校のような長い時間過ごすセカンドプレイスから離れた、サードプレイスともいえる。

このように、OSIROはアーティストやクリエイターに“Be”の場を提供するため、機能だけじゃなく「人と人が仲良くなる」仕組みをつくり込んできた。ありがたいことに、そんな“Be”の場づくりをご評価いただいて、OSIROの利用ユーザーは、メディアやブランドまで広がっていき、最近ではコミュニケーションに悩む企業や大学からもお問い合わせをいただくようになった。特に、社内コミュニケーションにOSIROの活用を検討する企業は大企業が多い傾向にある。

なぜ大企業がOSIROに関心を示すのか。その理由は企業における“Be”のコミュニケーションが、エンゲージメントや社員幸福度に重要な関係性があるものの、その活性化に課題を持っていることが多いからだ。

セカンドプレイスでも“Be”でいられる場

ぼくたちは企業における業務上と、従業員間で話される趣味や興味関心についてを、レコードになぞらえて「A面」「B面」と呼んでいる。コミュニケーションツールが発達した現在では、各社ともにA面のコミュニケーションはより高速かつ効率的に行われているはずだ。しかし、それだけでは従業員エンゲージメントは高まらない。そして、チャットツール内に「雑談チャンネル」のようなものがあっても、投稿者が限定されがちで、メンバー間での温度差が生まれていることもよく聞く話だ。

そして、ジョブ型雇用が進んだ現在では、社内でのコミュニケーションも基本的に“Do”が前提になる。そうしたなかで会社への帰属意識を高めたり、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に本質的な共感を得るのは非常に難しいことだ。

ただし、企業は営利組織であり、“Do”なしには企業としての存在意義がなくなってしまうし、雇用も維持できなくなってしまう。A面での迅速なコミュニケーションや意思決定のスピードを早めていくこと、組織としてのオペレーションを確立していくこともまた、現代の企業では必要なものだ。

しかし、企業とは人と人とが集まる場所であり、人間は“Do”だけでは疲弊してしまう。結果が出しづらくなってしまった場合、自身のアイデンティティも大きく損なわれてしまう。やがて会社への帰属意識も薄れていってしまう。その結果が、人材の流出に歯止めがかからない状況をつくってしまうといえる。

だからこそ、会社でも“Be”でいられる場所、B面のコミュニケーションが求められている。B面コミュニケーションとはつまり、「お互いが仲良くなっていくためのコミュニケーション」ともいえる。それは例えば、先ほどいった趣味の話であったり、偏愛しているモノ・コトの話、そして自分が大切にしている価値観を語り合える場だ。

一見すると、事業に対してまったく関係のない「雑談」になぜお金をかけなければいけないのか?と思うかもしれない。しかし、このようなコミュニケーションの場をつくることが企業の文化醸成に役立つだけでなく、肩書や部署、支店などの垣根を超えた横・斜めの関係構築のしやすさを生む。実はこういった企業のB面に最も注目しているのはZ世代の就活生だ。

日経クロストレンドの記事によれば、現在の就活生が注目するのは、企業の給与や福利厚生ではなく、企業のカルチャーや経営者・社員の価値観などが語られるB面に関する情報だという。

実際、オシロ社は自社でも「OSIRO」を活用したB面コミュニケーションを長年実践してきているが、小さい会社ながら部署の垣根はなく、ぼくたちオシロ社が掲げるコアバリューの1つである対話を重んじる「DIALOGUE BASE」を体現するのに役立っている。そしてそういった縦横で強固なつながりから生まれるインパクトは徐々に大きくなっていると実感している。

OSIROで実現する「セカンド” Be”プレイス」とは?

企業の中に“Be”でいられる場所を設けることは、企業というセカンドプレイスの中に、「サードプレイス的」な場をつくることとも言える。つまり、日頃から肩書や年齢にかかわらず互いを尊重しながら「自分らしさ」を出せる場を先につくれてはじめて、A面で建設的な話ができ、生産性高く仕事ができる。そういった意味では、「セカンド” Be”プレイス」とも名付けることもできるだろう。

しかし、豊かなB面コミュニケーションを育んでいくためには、まず「心理的安全性が確保されていること」そして「人と人とが仲良くなる仕組みがあること」が必要だ。企業であれば、当然ハラスメントやガバナンス違反などに対して適切に管理や警告を与える仕組みが求められる。

そのような機能のすべてが、OSIROにはある。なぜなら、ぼくたちは創業以来ずっと、繊細な感性と心を持つアーティストやクリエイター、そしてファンたちに安心安全を担保しながらコミュニケーションができ、人と人が仲良くなる仕組みをつくることに集中してきたからだ。お互いをエンパワーメントできるコミュニティの立ち上げを数百と経験させてもらい、そしてユーザーからのフィードバックとプラットフォーマーとしての分析から改善を繰り返してきたプロダクトでもある。

セカンド” Be”プレイス」の構築を望む企業には、共通点がある。離職率を下げたいこともそうだけど、その本質には「社員の一人ひとりがのびのびいきいき楽しく働いてほしい、そして全員が幸せになってほしい」という切実な願いを持っていることだ。ぼくも経営者として、その想いに全面的に共感する。だからこそ、お引き合いをいただく企業にベストな「セカンド” Be”プレイス」を提供していきたいと思っている。

今回はぼくらが提供するB面コミュニケーションについて触れたが、次回は応援と推し、そして偏愛の関係性について綴ってみたい。

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