大仏殿の近くで、この時期珍しい立派な角の雄鹿を見た
早朝に家を出て、ランニングかグラベルバイクで奈良市内の若草山に登るのが、ここ2・3年の休日のお楽しみ。
1月2日に続けて3日の朝も若草山にランニングで登ろうと家を出たが、前日の疲れと思われる脚のだるさと寒さに負けてしまった。早起きして自宅を出たものの、春日大社の近くまできたところで若草山に行くのは断念した。
スマホで鹿さんたちの写真を撮りながら、体が冷えないようにゆっくりと走って東大寺大仏殿の近くまで来たところで、この時期には珍しい立派な角の牡鹿に出会った。
国の天然記念物にも指定されている奈良公園の鹿。雄鹿は毎年秋口から鹿愛護会の手によって角が切り落とされる。一部は「鹿の角切り」として一般公開のイベントとなっているが、大半は愛護会の職員が一頭ずつ捕獲して角を切っていて、秋が深まる頃には角の生えた鹿はほぼいなくなる。
なぜ角を切るかというと、雄鹿は角の完成する秋に発情期を迎え気性がとても荒くなるため、人を傷つけたり、雄鹿同士が争った際に死傷したりすることのないようにするためだ。
もともと江戸時代に始まり、約350年続けられている伝統行事でもあるのだ。
話は戻るが、冬のこの時期に角の生えた鹿は見たことがないから、最初は「なんの動物?」って思ったくらいだ。
バッチリ目があった。その堂々とした立ち姿はなんともカッコ良かった。その姿をより大きくクリアに撮りたいと思い、近づこうとゆっくり踏みだした時……
突然向きを変えてものすごい勢いで走り去り、50メートルほどいったところで止まって振り返ってこちらをじっと見ている。スマホを構えて近づいていくと、また駆け出して、そのままどこかに行ってしまった。
見た目と違うその臆病でチキンな行動に「なんやねん」とガッカリした。
家に帰って写真を見せながら妻にその話をすると
「臆病で警戒心が強くてすぐにビビって逃げるから、
なかなか捕まらないし角も切られてないんやで」
なるほど!
威風堂々とした姿は、臆病だからこそ保てていたんだ。
妻の言葉に納得。
自然の中で生き延びるためには、勇敢さや大胆さよりも臆病で慎重であることの方が重要なのだろう。
ちなみに鹿の角は放っておいても、自然に抜け落ちてまた生えてくる。そんなふうに毎年生えかわるそうだ。だから今回見た鹿の角もそのうち自然に抜け落ちて、他の雄鹿と変わらない姿になるのだ。