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Authenticity~らしさについて~
Authenticityという言葉は、まさに本物であること、それそのものであることを意味している。人で言うならばその人らしさということになるのだろう。
この大きな世界で自分自身の居場所をつくり、他者が自身を認識し、自身が自身を認識できるために、誰もがどこかで特別な存在としての「らしさ」(Authenticity)をもとめている。
けれども「らしさ」は求めれば求めるほど、指の隙間からすり抜けていく。
意地になって「らしさ」を出そうとするほど、その「らしさ」はむしろ他者の「らしさ」と同質化していく。そうして「らしさ」に求めていた特異性はどんどんと消失していく。
またある時点で「らしさ」に固執することで、それから先の自身の可能性を塞いでいく可能性だってある。本来「らしさ」というのは決まったものでなく、時間と共に揺らぎ、変化していくものであるから。
そうやって「らしさ」を追いかけては逃げられ追いかけては逃げられを何度か繰り返して、人にはあきらめる時がくる。
何であってもよくて、何でなくてもいい。そんなようなところでふと立ち現れてくる「ふつう」こそが、実はほんとうの意味での「らしさ」なんじゃないかと気づく。
だから、この世界に必要なのは、スパイキーで凝った何かではなくて、ふつうであることなんだろう。もっと言うとふつうであることのよさを受け入れることなんだろう。