菊の節句に「秋おせち」作り
日本の四季を彩る代表的な節句を五節句といいます。
一月七日(七草の節句)三月三日(桃の節句)五月五日(端午の節句)七月七日(笹竹の節句)九月九日(菊の節句)
かつてはその時々の食材を使い、おせちを作っていました。
九月九日は菊の節句。菊を愛でたり菊の花びらを浮かべたお酒を飲んだりして邪気を払います。後の雛を飾ったり、栗ご飯を作って食べたり。
今回は九月九日に秋のおせちを作ってみました。
品書き
[行事食] 栗ごはん
菊茶
[縁起物] 焼き茄子
筑前煮
鮭のかす汁
[旬のもの] 浅利の酒蒸し
蓮根と梨のサラダ
しらすおろし
私にとって聞きなじみのない菊の節句は、菊を愛でたり菊の花びらを浮かべたお酒を飲んだりして邪気を払うらしい。今回のおせちでは行事食である栗ごはんと、茄子は絶対に外せない。まずはお米をたっぷり浸水し、栗を入れて炊く。
秋茄子はトントンとまな板に叩きつけてから縦に切れ目を入れる。そうするとペロンと皮が剥ける。食べやすい大きさに切って、ポン酢と鰹節をかけて食べると美味い。「九日に茄子を食べると中風(脳卒中からくる半身不随)にならない。」とも言われいる。江戸時代には「旬のものを食べると寿命がのびる」と言われていたらしく、美味いものを食べて病を払っていたんだろうか。昔の人がどれほど節句をありがたがっていたか計り知れない。
今回粕汁に使うのは先日長野の酒造で買った酒粕。具材を全て鍋に入れ、たっぷりの出汁で煮る。沸騰した出汁をすくい、ボウルで酒粕と味噌に加えて練る。酒粕は味噌と違って溶けにくいので、事前にしっかりとかしておく。一旦火を止めて、練った酒粕と味噌をいれると、一気に粕汁の匂いが広がった。「借りものをしないで、かす(粕)ことができるように」という縁起の良い粕汁に、「災いを避け(鮭)る」焼き鮭を入れて完成。
次は根菜、あらゆる根菜と鶏肉、水で戻した干し椎茸を鍋で煮る。真空になる鍋はぎゅうぎゅうに具材を入れても蓋をすると味が全体に茹で汁がまわる。筑前煮はさまざまな具材を一つの鍋で煮ることから「家族が結ばれるように」という縁起ものだ。ぎゅうぎゅうになった鍋を見て「こんなに押し込まれたら家族仲が悪くなるのでは」と心配しても、完成すると互いの味が良く染みて、私に一家団欒を感じさせてくれる。大量に煮込んだ煮物はなぜか一層美味い。
煮込んでいる間に他の料理を作る。旬のしらすを大根おろしと和えて、梅と紫蘇を叩いたものを添える。同じく旬の梨と蓮根を使ってサラダを作る。さっと茹でた蓮根と生の梨はシャキシャキした食感が楽しい。煎り酒とごま油、カボスの絞り汁と和え、カボスの皮を削る。あさりの酒蒸しには岐阜県のお酒を使った。いいお酒で作る料理はなぜこんなにも美味しいのか。もったいないと思いつつも、おせち作りには良いお酒を使いたい。お酒が苦手な人のために少しアルコールを飛ばしてネギをかけて完成。
最後に菊の節句に欠かせない菊。今回は菊花茶で菊の匂いと味を体内に取り込む。これで一年は無病息災だ。
年間五回。私がおせちを食べた回数だ。おせちが五回も食卓に上がった一年だった。食べ物には旬があり、当たり前だが旬の食べ物は美味しい。旬の食材はスーパーのチラシで知れた。節句には植物がつきもので、生花があると家が華やぐ。街中は旬の食材や植物にあふれていて、私は今までどれほどたくさんの季節の移ろいを見逃していたのだろうか。
おせちを食べる日は運気の波が最高潮になる(奇数が重なる)日だ。そしてその日を境に運気が下がり始める。これから下がる運気を上げるため、災いを除けるために旬のものを食べ、身に着け、飾る。
これが我が国日本において、大切にされてきた風習。美しく移ろう季節を最大限に楽しむことができる最高の遊びを、この記事を見た人もぜひやってみてほしい。今までの日常が鮮やかに見えるのは、きっとおせちのおかげだ
過去のおせち作りはこちら。
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