自分の声を聴かずに誰かの声を聴けますか?
自分自身への理解の深さを越えて、他者を理解することなど出来ません。手法やテクニックを身に付ければそれが可能になるというのは、とても危険な勘違いです。
自分自身をどれだけ知っていますか?
コーチングやカウンセリング、傾聴、様々なセラピー、人の心にアプローチする場は色々あります。様々な優れた手法が開発され、多くの人が学んだり資格を取得出来るようになり、その種のサービスを提供する人がすごく増えました。
でも、先に結論を書くと、いくら手法を学んでも人の心の声を受け止めることは出来ません。
厳密にいうと、心の状態は言い当てられます。例えば色を使って心の状態を把握する手法があるとして(特定の手法を暗に示しているのではなく、架空の例です)、それが優れたものならば、心の状態自体は分かります。
でも、そうした心の状態にあるということが、その人にとってどういう感じのすることで、それをどう扱っていけばいいのかということは、手法を学んだだけでは分かりません。ここが、今回僕が示したいポイントです。
手法の一人歩きは心を粗末に扱うことにつながる
その手法が、たとえばインチキだとしたら、別にいいのです。もちろん、詐欺だとか霊感商法みたいな悪質なやつは論外ですが、真面目にやっていても全然心の状態がつかめないようなもの、ただの思い込みレベルのものであれば、毒にも薬にもなりませんから。
でも、優れた手法(この世にはそうしたものが色々と存在します)の場合、心の内側をのぞけます。僕も「モニターになって」と言われて◯◯セラピーみたいなやつのクライアントになったことがありますが、見事に僕の心の状態、それもかなり深いところにあるものを探り当てていました。
僕はプロですから、超高解像度で自分の心身をモニターしています。それを長年続けています。ですから、その手法の切れ味の鋭さを認めます。でも、「資格をとった」というセラピストは、僕にこう言いました。
「たぶん、ものすごく辛いものを抱えていると思うんです」
自分の心の声を聞けないうちは人の心を扱うな
うん、そうなんだよ。深く潜って、心の辺境を歩いてサバイバルしてきたからね──そう思いながら次の言葉を待ちました。
でも、その先はとても残念な展開になりました。「辛いもの」がどんなことに関係しているかという情報が出て来るだけで(それもなかなかの精度でした)、そこでおしまいなのです。なぜなら、どういう状態なのかは言い当てることは出来ても、それを扱う力がないのです。
僕は、その場でとても後悔しました。手法を学んだだけの人間に、自分の心をお試しで覗かせるなんて、してはいけないことだったのです。
僕はあちこちにこうして自分自身の心のうちを率直に書いていますから、「秘密がバレた」みたいなことはありません。ただ、自分自身の心の声をろくに聞いていないような相手に対して、「モニター? いいよ」と気軽にOKを出した自分に、腹を立て、後悔し、反省しました。
気軽に資格を出すビジネスの危険性
世の中には色々なものがあります。ですから、私の学んだ手法はそういう上辺だけのものではないとか、そういう思いを持つ人も多いでしょうし、実際にそうした(今回「自分の声を聴く」と呼んだような)修練を積んだ上で、資格を出している組織もあるでしょう。
でも、そうじゃないところも、たくさんありますよね…?
そうした資格ビジネスは、お勉強の内容には「人の心を大切に扱いましょう」というような話が含まれていたとしても、どんどん有資格者を増やしていくというビジネスモデルそのものが、人の心を軽んじています。表向きにはおしゃれに洗練されていたり真面目そうでも、構造的には詐欺や霊感商法と非常によく似ています。
まずは自分自身の本当の声を聴くことから
自分に力量があるのかないのか、それは自分自身で分かります。
自信がない、誰かの真似をしている感覚がある、ごまかす言動を取っている、その世界で自分より上位の誰かに利用されている感じがする──もしそうした自覚があれば、まだ修練が足りない証拠です。
資格というのは、第一段階においてはそれを認定する組織が与えますが、その時点ではまだ人様の心に向き合うのは時期尚早です(ここで何の疑問もなくやってしまう人は、人の心を扱う職業に向いていません)。第二段階において、今度は自分が自分に資格を与えます。
「大丈夫。ここまでの領域なら自分はやれる。でも、ここから先にはまだ触れない。そこを見極めながらやれる」
そんな風に思えたら、もう自分がやれると分かりますよね。こわごわと進むくらいがちょうどいいんです。人の心を扱うというのはそれくらい重い責任を負うことだからです。
自己理解の幅が他者理解の幅を決定づけるというのは、原則のひとつですよね。当たり前といえば当たり前なのですが、忘れずにいたいです。
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