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私は気難しい旅人なのだろうか

原付でゆく北海道旅16日目。旭川の無料キャンプ場・春日青少年の家で目を覚ます。別の宿泊客が慣れた手つきで洗濯物を干していた。

プロキャンパーだ

旅先の情報はあえて調べない派

キャンプ場を出て、まずは美瑛に向かう。美瑛に何があるのかよくわかっていないが「美瑛は綺麗」とよく聞くので行ってみる。

これを言うとまた気難しい旅人みたいになってしまうが、私は旅先の情報をSNSで調べないようにしている。単に面倒なのもあるが、例えばInstagramで美瑛を調べると、彩度バキバキのめちゃくちゃ綺麗な写真が出てきてなぜだか萎えてしまうのだ。

さらに、その写真の上に「女子旅おすすめ◯選❣️」といった文字が乗っているといよいよダメ。やっぱり私は気難しいのかもしれない。

また期待値が上がってしまうのもある。せっかくだから初見の感動を味わいたいので、最低限の情報だけ入手してそのあたりをブラブラするのが好きだ。

何も調べずに行った美瑛は、見晴らしが良くてとても気持ちいい場所だった。遠くで木々がさわさわと擦れる音が聞こえる。なるほど、ここが美瑛か。

セブンスターの木
雲がアニメみたい

旭川市街からアクセスが良いこともあり、外国人の観光客が多い。きっとSNSで情報を仕入れてきたんだろう。海外旅行に至っては、情報がSNS頼りになってしまうのは仕方がない。


人気観光スポットに来たけど・・・

せっかくなので近くの人気観光スポット「青い池」へとカブを走らせる。前回来たときは冬だったので、ただ雪面に枯れ木が生えているだけのシュールな景色だった。

おぉ。綺麗。普通に綺麗。でもなぜだか素直に感動できない。理由はおそらく、観光客が多すぎるから。この写真を撮るのにも一苦労するほど人が多かった。

ここに来ているみんなは、これで満足なんだろうか。感動できているんだろうか。忘れられない景色になっただろうか。写真が撮れればそれでOKなのか。

釈然としない気持ちを抱えながら青い池を後にした。「人が多いと嫌」なんて、やっぱり自分は気難しい旅人なのかもしれない。

ちょっとまって、気難しいって言葉がゲシュタルト崩壊してきた。気難しいってなんだっけ。

気難しい《形》:何かと自分独自の考え・やり方にこだわって、扱いにくい性質だ。神経質だ。

グーグル日本語辞書

私やん。そうか、私は気難しい側の人間なんだ……。そっと検索結果を閉じて旅路につく。

標高1,000mのキャンプ場が寒すぎる

今日も今日とてテント泊。なんとなく決めたキャンプ場に向かう道中で気付いた。

標高結構高いところまで行こうとしてない?

あらためて調べるとキャンプ場の標高は1,000m。標高は100m高くなる毎に気温が0.6℃下がるので、キャンプ場は下界よりも6℃低いということ……。

9月中旬の北海道は結構寒くて、下界でも朝晩は10℃を下回ったりする。でもいまから別のキャンプ場に向かう時間はない。そんなことを考えているうちに標高1,000mのキャンプ場に着いた。

えーと、誰もいない(^_^;)
そうだよね、この時期にこんなに寒いところでキャンプしないよね(^_^;)

ほどなくして、隣のテントに人が戻ってきた。私が「こんにちは」と声を掛けると「寒いですね」と返ってきた。挨拶すっ飛ばして寒さを共有したくなるほど、ここは寒い。

ううう……寒すぎるのか標高のせいなのかめちゃくちゃ頭痛くなってきた。鎮痛剤を持っておらず、テントの中でのたうち回る。

赤く染まる山々

夕陽が山を照らし、ゆっくりとあたりが暗くなってゆく。夜が来るんだ。頭は痛いし寒いしこれからもっと寒くなるしで不安になった私はとりあえず近くにあったホテルの売店に行き、カップラーメンを買った。

飲食スペースですすっていると、同年代の女の子に「相席してもいいですか?」と声をかけられる。話を聞くと彼女も一人旅のライダーで、仕事の休みを利用して東京から来たそう。彼女は16歳からバイクに乗っていて、お酒が好きでビールとウイスキーと日本酒を持ち歩いていて、当たり前のように煙草を吸っていて、オッサンそのものだった。

お互いがしてきた旅の話になって、私の気難しい旅のこだわりを話したら、彼女は「それめっちゃいいねぇ」と笑ってくれた。あぁそうか、べつに気難しくてもいいんだ。いつの間にか頭痛は消えていた。




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